会社は大きければ大きいほど良い。
従業員は多ければ多いほど良い。
そのような風潮が一昔前まではありました。
しかし、最近では、「いかにコスパ良く稼げるか」が重視されつつあります。
最近はフリーランスも増え、そんな中、「ひとり社長」が注目されるように。
「最強のビジネスモデルだ」という人まで出てきています。
今回は、そんな「ひとり社長」について、個人事業主との違いを踏まえた上でメリットとデメリットを解説していきます。
【参考】起業の準備一覧!14項目の最低限やるべきことをリストで整理
ひとり社長とは?
ひとり社長とは、一人で会社を設立し、従業員を一切雇わず、自分一人で会社を経営する者を意味します。
昔は、会社を設立するためには、3人以上の取締役と1人以上の監査役を置くことが義務付けられていました。
しかし、新会社法の施行により一人でもできるようになっています。
特に、システムエンジニアやコンサルタント、デザイナー、その他専門職やクリエイティブ系の人など、元々個人事業主やフリーランスの方が、法人を作って(法人成り)ひとり社長になるケースが多い傾向にあります。
個人事業主との違い
ひとり社長も、個人事業主も事業の代表的な存在であると言う点では似ています。
しかし、法的、社会的な扱いは全くの別物。
個人事業主は「あくまで個人」としてクライアント等から業務を請け負ったり、事業を展開したりします。
それに対し、ひとり社長は「法人格」をベースに活動することになります。
その他、細かな違いは次の通りになります。
■ひとり社長
- 利益:役員報酬
- 年金:厚生年金
- 名義:法人
- 税金:法人税(一定)
■個人事業主
- 利益:売上から経費を引いた差額
- 年金:国民年金
- 名義:個人
- 税金:所得税(累進課税)
【参考】法人化すべき?個人事業主がいい?起業家が考えるべきことは
ひとり社長のメリット
全く同じ業務、事業を展開する場合でも、個人事業主とひとり社長では異なります。
ひとり社長として活動する方がより多くのメリットを享受できることがあります。
フットワークが軽い
ひとり社長の一番のメリットは、とにかくフットワークが軽いこと。
たとえば、何か新しい事業にチャレンジしたり方針を変えたりする場合に、他の従業員や経営幹部がいると反発されることもあります。
いくら社長でも、何もかも自分の思い通りに進められるとは限りません。
しかしひとり社長の場合、全て独断でやりたいことを実行することができます。
固定費負担が少ない
自分一人で事業を運営する場合には、わざわざ大きなオフィスを構える必要もありません。
当然、人件費もかからないため、発生する固定費を必要最小限に留めることが可能です。
決して楽ではありませんが、一般的な会社と比べて経済的な面で余裕が生まれます。
そのため、途中で資金が枯渇したり、資金調達に苦労したりすることも少ないでしょう。
「ヒト」のマネジメントが必要ない
当然のことですが、ひとり社長として会社を運営する場合、従業員はいません。
あったとしても、バイトやフリーランスを使うことくらいでしょう。
採用活動や人材の教育、マネジメントのための手間やコストもほぼかかりません。
社会的信用がつく
オフィスが小規模で従業員がいなくても、法人であることには変わりはありません。
「株式会社」と名乗ると、大きな組織のような印象を持ってくれることもあります。
よって、個人事業主よりもひとり社長の方が社会的信用と言う点において有利と言えます。
社会的信用が付けば、銀行からの融資も受けやすくなります。
取引先やクライアントも見つかりやすくなり、事業も安定し易いでしょう。
【参考】合同会社の設立はお得?メリット3つとデメリット2つを解説!
ひとり社長のデメリット
ひとり社長は個人事業主と法人の良いとこ取りができる理想的なビジネスモデル。
しかし、一方で気をつけなければならないことや、デメリットもいくつかあります。
会社設立の手間と費用がかかる
個人事業主やフリーランスの場合には、基本的に開業届を提出するだけで正式に事業を始めることができます。
コストも、ほとんどかかりません。
しかし、ひとり社長の場合、一般的な会社と同じように、登記や定款認証のための手続きを踏む必要があります。
株式会社を設立する場合、20万円程の費用が発生します。
税務申告の手間がかかる
会社の設立だけでなく、税務申告の手間がかかるのもひとり社長のデメリット。
個人事業主の場合には基本的に毎年一回の確定申告で済みます。
しかし、法人の場合、個人事業主に比べて手続きが複雑になってしまいます。
赤字でも法人住民税が課される
法人住民税とは、法人が自治体に納めることになる税金の一種。
これは、会社設立時の資本金の額によって税率が異なります。
ひとり社長として会社を設立する場合、比較的小規模で資本金も少なめになっているケースが多いでしょう。
そのため、大きな会社と比べて課税率は小さいと思われます。
しかし、たとえ経営が赤字でも年度ごとに最低7万円は納付しなければなりません。
【参考】個人事業主なら提出すべき開業届の基礎知識と2つのメリット
ひとり社長にチャレンジしよう
社会的信用を獲得しつつ身軽で、新しいことにチャレンジできるのがひとり社長の魅力。
中にはいきなり会社を設立し、ひとり社長になるケースもあります。
しかし、個人事業主としてある程度稼げるようになってから法人成りした方が、より多くのメリットを受けやすく、経営も安定し易いでしょう。
従業員がもともと必要ない職種で、現在個人事業主として活動している方は、将来的にひとり社長になることを前向きに検討してみてはいかがでしょうか。