「オーナーチェンジ物件だよ、既に入居者がいるから安心だよ。」
不動産投資を検討中、業者のそのような口説き文句に心動かされそうになった人は、少なくないはず。
確かに、既に入居者がいるというのは不動産投資をする上で大きな魅力に映ります。
しかし、だからと言って、よく考えずに手を出してしまうと、痛い目に遭うのがこの世界の常。
安易に手を出す前に、オーナーチェンジ物件とは何か、この記事では基本的なところから整理していきます。
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オーナーチェンジ物件とは?
オーナーチェンジ物件とは、すでに入居者がいる状態で取引される、アパートやマンション等の不動産物件を指します。
この場合、原則として、前オーナーと入居者が結んでいた契約内容は、新規オーナーへそのまま引き継がれます。
中古、新築問わず、経営を引き継いだ不動産物件に1人でも入居者がいれば、それはオーナーチェンジ物件と呼ばれます。
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オーナーチェンジ物件の取引で知るべき9つのポイント
それでは、オーナーチェンジ物件について、メリット3つ、デメリット3つ、注意点3つ、合計9つのポイントについて見ていきましょう。
メリット
まずはメリットからです。
①手続きや手間が省ける
不動産投資初心者でも比較的気軽に始めやすい、手をつけやすいことが最大の魅力です。
というのも、立地調査や家賃の設定、契約内容の決定、入居者の募集など、通常の不動産経営を始める際に必要な諸手続きを大きく省けるためです。
また、前のオーナーから色々と情報を引き出すことが出来れば、事業開始に必要な時間と手間を大幅に削減できます。
②収益化がすぐ見込める
入居者のいない空室物件の不動産を購入して賃貸経営を始めるのは、なかなかハードルが高いものです。
実際に入居者を獲得できるまで収益は発生しませんが、入居者を見つけるのはそう簡単ではありません。
いつ入居者が決まるのか、やきもきしながら過ごすことになるでしょう。
しかし、オーナーチェンジ物件の場合、すでに入居者がいるため、事業開始後すぐに収益化が見込めます。
③事業計画が立てやすい
収益化の目処が立っているので、今後の事業の展望が見えやすく、また収支予想もある程度把握できます。
よって、事業計画が立てやすい、というは大きなメリットとして挙げられます。
また、前オーナーの経営実績を使えば、それが与信となって事業資金や運営資金の融資を金融機関から受けやすくなるということもあるでしょう。
やはり、「今は入居者がいないが、これから入る」というのと、「既に入っている」というのでは、説得力が違います。
デメリット
次にデメリットを見ていきます。
④家賃や契約内容を柔軟に変えられない
オーナーチェンジ物件の場合、原則として家賃価格をはじめとする契約内容を自由に変更できないことがあります。
基本的には、入居者とのトラブルを回避するという観点から、前オーナーと入居者の間で交わされた契約内容をそのまま引き継ぐことになるでしょう。
よって、どのような契約内容になっているのか、事前にしっかり契約書に目を通しておく必要があります。
⑤物件状態の把握が難しいこともある
経営を引き継ぐ際に、階段やエントランスなど共有スペースはともかく、各部屋の現状など物件状態の把握が難しいというデメリットもあります。
入居者がいない空室であれば内見できますが、すでに埋まっている部屋には当然入居者の所有物が置いてあるため、プライバシー、セキュリティの観点から、直接確認できないこともよくあります。
物件取得後に入居者が退室したので中を見てみたら、汚れや臭いが酷く、傷だらけで、修繕費として多額のお金が出て行ってしまった、という話も聞きます。
⑥入居者情報の把握が難しいこともある
物件状態だけではなく、入居者それぞれの情報を把握しづらいという難点もあります。
もちろん、新規に募集する場合にはオーナー自ら審査を行い入居者を選定できます。
しかし、すでに入居済みの住民に関する状況については、容易には把握できはないでしょう。
特に、売り手にとって不利な情報であれば。売り手は教えたがらないものです。
注意点
それでは、3つの注意点について見ていきましょう。
⑦今後の収支計画を冷静に見極める
契約書に記されている家賃が現在の相場と比較して適正でない場合、入居者側から交渉されることもあるでしょう。
特に、入居歴が長い場合、古くなった物件に、割高な賃料のまま入っているということがよくあるもの。
その人が出てしまうと、次は大幅に下がった賃料で入れなければならない、ということがよくあります。
そのため、前オーナーから経営を引き継ぐための手続きをする段階において、賃料相場や、これまでの管理、運営状況に関してあらかじめ明確に把握しておく必要があります。
これまでの管理、運営状況については、基本的には資料やデータを受領して確認することになりますが、修繕の有無、赤字や負債の有無など不明瞭な点がある場合には直接問い合わせる必要があります。
「ない」と言われた時ほど、慎重になりましょう。
⑧入居者に関する調査を入念にしておく
プライバシーやセキュリティの問題で難しい場合もありますが、できるだけ入念に入居者に関する調査を行いましょう。
今の住民の入居時期や居住年数を始め、トラブルを起こし近隣住民に迷惑をかけている入居者はいないか、家賃を滞納している入居者はいないかなど入念な情報収集をします。
これから事業を進めていく上で住民との問題やトラブルを未然に防ぎ、健全な経営を行っていくために重要になります。
ベランダにかかっている洗濯物やゴミ捨て場を見れば、入居者については大体分かる、という人もいます。
意外なところに、ヒントが隠れているかもしれません。
⑨前オーナー(売り手)についても調査しておく
前のオーナーが高値で物件の売却を行うために、稀にですが、引き継ぐ前に業者紐付きの入居者を入れているケースやサブリース契約をしていることがあります。
その状態で経営を引き継ぐと入居者がすぐに退去してしまう、サブリース業者からすぐに値下げ交渉をされてしまう等、不利益を被る可能性もあります。
そもそも収益化が担保されている状態でなぜ売却するのか、売り手側も色々と理由を並べ立てるでしょうが、前オーナーの信用に関する調査も含め、「なぜ売ろうとしているか」本音をしっかりと見極めることも重要です。
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まとめ
収益化が見込める体制や設備がすでに備わっていることから、投資未経験者でも比較的手を出しやすいのがオーナーチェンジ物件の最大の魅力と言えます。
しかし、不動産経営をしていく上でオーナーとしてある程度の制限が課される、また、罠も含めてリスクがあることも知っておく必要があります。
未然にトラブルを防ぐためにも、入念な調査を行った上で検討を進めましょう。