働き方改革があちこちで叫ばれ、推進されている昨今。
そのような中、オフィスのフリーアドレス化は、社員の主体性や業務の効率化という観点から今注目を集めている働き方の一つです。
マヨネーズでお馴染みのキューピー株式会社や、日本航空、ヤフー株式会社などの大手企業でも、一部の部門で既に導入されています。
また、一部のIT系の会社やコンサルティング会社においては、フリーアドレスは2000年前後から広く導入されており、業界によっては今や「主流」とも呼べるような形態になっていたりもします。
実際にどんなメリットがあるのか、また導入することで起きる問題、それらを回避し魅力を最大限に引き出すためのポイントについて考えていきましょう。
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近年話題のフリーアドレスとは?
フリーアドレスとは、本来、社員それぞれにあるデスクやワークスペースの定位置という概念をなくし、オフィス内で自由に場所を決めて働く施策です。
「毎日、同じ席で働く」という考え方を取り除くことによって、多様なワークスタイルの構築につながります。
フリーアドレスを導入する企業は年々増えており、大手企業をはじめとするIT業界やマーケティング業界においても大きな注目を集めています。
フリーアドレスオフィスのメリット
定位置で毎日働くことに生産性が低いわけではありません。
しかし、フリーアドレスを導入することによるメリットや魅力は、多くの分野や業界みることができます。
①生産性の向上につながる
まず、社員のワークスペースを柔軟にすることで業務全体の生産性の向上につながります。
自分のデスクの位置が決まっている場合、部長の目の前で働きづらい、入り口付近の席で人の出入りが激しくて集中できないなど、社員が何かしらの不満やストレスを抱え続けてしまうことがあります。
一方、フリーアドレスの場合、自分の好きな場所や仕事がしやすい場所を自由に選択できることから、毎日違った環境で働くことができ、また、一つ一つの業務に対する集中度が上がることで自律性が高まり、結果的に生産性の向上につながるとされます。
②コミュニケーションが活性化する
特にスペースが限られているオフィスにおいて、社員がブースや敷居で囲まれていると、日頃接点がない社員との意思疎通がどうしても疎かになってしまいます。
フリーアドレスには敷居やブースという概念がもともと無いことから、社員同士がお互いの存在を認識しやすくなり、コミュニケーションの活性化につながるのです。
更に、役職や部署という見えない壁も同時に取り払えるため、普段の業務であまり関わらない社員との接触が増え、そこから新しい発見を見出すこともできるでしょう。
③無駄なこと、無駄なモノが減る
フリーアドレスオフィスで働く場合、社員はパソコンやファイル、資料などを常に携帯します。
また、自分の席がないため、終業時には、全員、机を整理しなければならなくなります。
そのため、余計なものでデスクが散らかったり、書類であふれたりすることがなくなります。
その結果、自然に無駄のない行動や整理整頓を心がけるようになり、業務の効率も良くなります。
そして、社員各々が無駄のない行動を意識するようになると、社内にある収納棚や引き出しなどの無駄なモノが可視化されます。
それらを無くすことで社内のスペースをより効率的に活用できるようになるでしょう。
④先進的な企業とのイメージを持ってもらえる
働き方改革の波に乗った、先進的な企業とのイメージを持ってもらえる可能性が高いと言えます。
特に、先進的な商材を取り扱う会社の場合、そのようなイメージを持ってもらえることは、営業上も大きくプラスに作用するはずです。
そして、採用の際にも、フリーアドレスであることをPRできると、若い人や、進んだ考え方、新しい技術を持ったプロフェッショナルが採用しやすくなるかもしれません。
フリーアドレスオフィスのデメリット
生産性の向上や無駄の削減などメリットがある一方で、フリーアドレスの導入に伴う問題やデメリットもあります。
①情報管理を厳格にする必要がある
部署によっては、他の社員にも見せられない情報を取り扱うこともあります。
人事系の情報はもちろん、会社によって、部署によって、様々な機密情報を取り扱うことでしょう。
皆がノートパソコンを持つことになるので、悪意なく誰かのパソコンを誰かが間違えて持って行ったり、ということも起こり得ます。
よって、セキュリティポリシーや、パスワードの必須化、情報の暗号化等、情報管理を厳格にする必要が出てきます。
②社員の勤務状況の把握が難しくなる
社員の行動が自由になることは、同時に管理することが難しくなることを意味します。
特に業務のディレクションを担当する役職の方にとって、今、どこで、誰が、何をしているのか、その時々で把握ができない場合、業務自体が停滞したり伝達ミスが生じる恐れがあります。
自律的に動けない、ついついサボってしまうような社員が多い会社の場合は、なかなか難しいかもしれません。
必要に応じて、社員の勤務状況を把握できるソフトやウェブサービスを利用するなど工夫しましょう。
③導入コストがかかる
もともと固定席タイプのオフィスがフリーアドレスを取り入れる場合、当然導入にあたってコストが発生します。
ブースや仕切りの撤去、デスクの再配置、配線設備などフリーアドレスの場合、それに見合ったレイアウトにするための特別な工事やリフォームをしなければなりません。
上で挙げた情報管理のためにも、一定の投資は必要となるでしょう。
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フリーアドレスを導入する際のポイント
フリーアドレスの魅力を最大限に発揮し、社員一人一人が働きやすい環境を築き上げるため、導入を検討する際にはやっておかなければならないことがあります。
フリーアドレスを導入する際のポイントについて見ていきましょう。
①意識改革を進める
自律的に動けない人が自律的に動けるよう働きかけたり、情報管理意識を高めたりする必要があります。
ついついサボる人が出たり、情報管理が甘くなって顧客に迷惑を掛けたり、トラブルが発生したり、ということがないよう、社内の意識改革を進めていく必要があります。
②ルールや仕組みをしっかり決める
導入にあたり、社員の同意を得ることも重要です。
固定位置の方が仕事しやすい、集中しやすいという人は社内に必ずいます。
そのことを事前に考慮した上で、社員の同意を取り、フリーアドレスオフィス利用のルール決めをしていきます。
デスクの利用時間の制限、来客時の対応、会議テーブルの設置、備品の管理場所などに関して、トラブルが起きないようにルール決めやガイドラインを作成しましょう。
また、「フリーアドレスにすればコミュニケーションが活性化する」については、単にフリーアドレスにするだけでは、必ずしも実現しない可能性があります。
特に従業員数の多い大きな会社であれば、社内ポータルを整備したり、イベントを積極的に開催したりして、コミュニケーションの円滑化を図るための仕組みを作っていくことも重要になってきます。
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まとめ
フリーアドレスは、主にコンサルティング事業やIT、また営業部門と言った流動性のある業種には向いていますが、顧客の個人情報や機密情報を扱う事業にとっては、なかなか難しい側面もあるかもしれません。
また、部署によっては可能だったり、ということもあるので、特定の部署や拠点に導入する、というのも良いかもしれません。
導入の意義や目的を明確にした上で、実際に採用するのかどうか、検討しましょう。