世の中、お金を他人から借りているという状態に不安を覚える人は多いもの。
「手元にお金があるのなら、なるべく早く返済して自由になりたい」
あなたも、もしかしてそのようにお考えかもしれません。
まとまったお金が入ってきたときに、検討されることのある、繰上返済(くりあげへんさい)。
多くのメリットがある一方で、注意しなければならないこともあります。
ここでは、不動産投資を始める際に知っておきたい不動産投資ローンの繰上返済制度について、その概要や利用のメリット、注意点について解説します。
不動産投資ローンの繰上返済とは?
不動産投資としてマンションなどの物件を購入する際、大抵の場合はアパートローンとも呼ばれたりする不動産投資向けのローンを組んで、その資金を調達することになります。
借りたお金は通常金融機関と合意したスケジュール通りに返済されるべきものですが、前倒して返済を完了させたいという人も中にはいます。
繰上返済とは、そのようなローン返済手段の一つで、毎月支払う返済額に上乗せして返済したり、まとまった金額を一括で返済にあてたりします。
繰上返済には、返済期間を短縮する「期間短縮型」と、返済期間はそのままで月々の支払額の負担を軽減する「返済額軽減型」の2種類があります。
繰上返済を利用するメリット
借りたお金をスケジュール通りに返済するよりも、繰上返済を利用した方が賃貸経営においてメリットのある場合があります。
では、メリットとはどのようなものでしょうか。
①ローンの支払い総額が減る
お金を借りている状態だと、当然ですが、利息が発生します。
そのため、お金を借りて投資すると、利息が乗る分、物件本来の金額よりも中長期的には多くの額を支払うことになります。
返済期間を長く設定すれば、利息の負担も増えるためより多くの額を支払うことになりますが、期間短縮型を利用しその期間を短くすれば、ローンの支払い総額を減らすことができます。
②キャッシュフローの改善を見込める
賃貸経営においては、家賃収入から利息を含めたローンの支払い、その他管理費用を引いた差額がオーナーのキャッシュフローになります。
「返済額軽減型」を利用し、月々のローンの支払額を減らせれば、キャッシュフローが改善し、ゆとりを持って賃貸経営できるようになります。
③金利変動のリスクを低減できる
ローンを組む際、その金利は変動金利か固定金利のいずれかを選択することになります。
【参考】住宅ローン、変動金利と固定金利のどちらを選ぶべきか悩んでいます
固定金利であれば特段問題ないのですが、変動金利は経済状況によって金利が変動するため、仮に金融不安に陥り、金利が高騰するような事態になると、その負担が大きくなってしまうことがあります。
3年先ならまだしも、20年、30年先の世の中が、どうなっているかを予測するのは困難。
しかし、繰上返済を利用し、返済期間を短縮したり、早期に完済したりすれば、金利変動によるリスクも軽減できるのです。
注意点
繰上返済は、上記のようなことを聞くと良いこと尽くめのようですが、制度の利用にあたって、いくつか気をつけておくべき注意点があります。
①金融機関や申込ルートによって繰上返済の最少額が異なる
繰上返済制度は、どんな状況でも、いくらからでも利用できるわけではなく、最少額が予め決まっていることがあります。
その額は金融機関によって異なり、また同じ金融機関でも直接窓口で申し込みをする場合と、インターネットから申し込みする場合とでも異なるケースがあります。
理由は単純で、これは金融機関側の手間とコストの問題です。
例えば、極端な話、1円だけ繰り上げ返済されても、事務工数がかかってしまうので金融機関側にとっては迷惑なのです。
よって、自動で計算し、手続きが完了する、手間のかからないネット系の銀行だったりすると、最少額は少ない傾向にあります。
しかし、窓口で対面で対応してもらうようなケースだと、100万円など、それなりにまとまった金額からしか受け付けてもらえません。
利用を検討されている方は事前に確認しておいた方が良いでしょう。
②手数料がかかる
繰上返済の利用には、基本的に手数料がかかります。
このような手数料がかかる理由は最少額のところで記載した内容と同じで、手間とコストの問題です。
多額のお金を貸すために、金融機関は、内部で多くの人間を動かし、それなりに手間をかけて手続きを進めていきます。
そして、それを金利を通じてコツコツと回収していきます。
しかし、金融機関が手間暇かけてせっかくお金を貸したのに、一括で繰り上げ返済されて、金利が入らなくなってしまったらどうでしょう。
金融機関としては、商売あがったり、ということになってしまいます。
そういった理由で、繰上返済には手数料がかかるようになっているのです。
手数料の金額は、1万円〜など予め決まっているケースと、金額に応じて算出されるケースのいずれかです。
頻繁にスケジュールを変更していると、手数料だけで多くの費用が発生することもあるため注意しましょう。
③利息分の経費計上額が減る
月々の支払いにおける利息は、経費として計上できるため所得は減りますが、利息の負担が大きければ、それだけ税金も節約できます。
しかし、繰上返済はもともと利息の負担を小さくするための制度でもあるため、それを利用すれば当然利息分の経費計上額も減ることになります。
収入アップか、節税か、優先すべきことは人それぞれなので、それらを見極めた上で利用を検討しましょう。
【参考】損金算入とは?経営者に不可欠な節税のための知識を基本から
まとめ
ある程度手元資金に余裕があるのであれば、心理的な負担を減らすために、繰上返済制度を利用して通常よりも早めに完済してしまうというのは一つの手ではあります。
しかし、投資をするのであれば、「借りられるお金は借りておく方が得」という見方をする人が多いのも現実。
メリットとデメリットを見極めて慎重に繰上返済に臨むようにしましょう。