近年、その需要が急激に高まりつつあり、注目されている「サブスク型ビジネス」。
ビジネスモデルについて調べていると、頻繁に出て来るのが、解約率、という概念。
実はこの解約率、サブスク型ビジネスを考える上でも、肝と言える概念なのです。
解約率をどうコントロールするか次第で、サブスク型ビジネスの成否が決まることも。
ここでは、サブスク型ビジネスにおける「解約率」の概念の概要や主な事例を踏まえた上で、その重要性やそれを改善するための主な施策について解説していきます。
【参考】サブスクリプションとは?ビジネスモデルと儲けの仕組を解説
解約率の抑制こそサブスク型ビジネスの肝
サブスクリプション、通称サブスク型ビジネスとは、各種サービスや商品の利用期間に応じて料金を支払う事業方式の一つです。
これは昔からあるもので、最も代表的な物は、「家賃」や「新聞」かもしれません。
サブスクという言葉自体、雑誌の定期購読を意味する「Subscription」に由来しています。
しかし、情報技術の発達に伴いサブスク型ビジネスの波は多くの領域に広まってきています。
主な事業例
比較的最近のサブスク型ビジネスの代表的な事業例をいくつか挙げてみると、
- 音楽配信サービスの「Spotify」
- 動画配信サービスの「Netflix」
- 動画配信サービスの「hulu」
- デザイン制作ソフトの「Adobe Illustrator」「Adobe Photoshop」
などが有名です。
Adobeも昔は買い切り型だった
実は、昔は、IllustratorやPhotoshopは買い切り型のソフトとして売られていました。
箱にCDが入っていて、それをパソコンに付属のCDドライブに挿入してインストール、、
ということを、皆がしていた時代があったのです。
しかし、今やパソコンはいつでもどこでもネットに繋がっていることが当たり前の時代。
今の時代、ノートパソコンに至っては、CDドライブが付いている方が珍しいくらいです。
様々なビジネスがサブスクに
サブスク型ビジネス=デジタルコンテンツというイメージをお持ちの人もいるでしょう。
しかし、近年では自動車、ブランド品、コスメ、ファッションに至るまで、「モノ」のサブスクも注目を集めています。
【参考】「サブスク」って何がいいの?メリットとデメリットを解説
解約率がサブスク型ビジネスで重要視される理由
サグスク型ビジネスには、継続的かつ安定的な収益を期待できるという利点があります。
しかし、それを実現するためには、解約率の低下が必要。
そしてそのためには、様々な工夫や仕掛けが必要。
いかにしてサービスを使い続けてもらい、離脱、解約を防げるかが、肝になるのです。
ここからは、解約率が重要視される理由について詳しく掘り下げていきましょう。
1、新規顧客の獲得よりも既存顧客の維持の方が割安
解約率が重要視される理由の一つとしてまず挙げられるのが、新規顧客を獲得するよりも既存ユーザーを維持する方がコストが割安であるためです。
これは、「1:5の法則」と呼ばれることもあります。
新規顧客の獲得コストは、既存顧客の維持の5倍のコストがかかる、という法則です。
売り切りタイプの事業では、新規顧客の獲得が何よりも重要視されます。
しかし、サブスク型では、離脱や解約を防ぎ、維持することが収益化のために重要となるのです。
2、サービス品質の見直し、向上に繋げられるため
「解約率」は、サービスに対する顧客満足度を測るための一つの指標と言えます。
つまり、
- ユーザーが解約に至った経緯
- 具体的な理由
- タイミング
等を分析することにより、サービスの品質見直しや向上に繋げることができるのです。
そのためには、解約時のチュートリアルに、
- アンケート機能
- フィードバック機能
等を盛り込み、ユーザーの声を可視化できるような仕組みづくりが有効となります。
3、事業性を評価するLTVと密接な関係にあるため
サブスク型ビジネスでは、ユーザーの入会から退会まで、サービスの提供元にもたらす価値を測るための「LTV」という指標が重要となります。
解約率だけを見ても意味がなく、解約率を元に「LTV」を算出して初めて意味があるのです。
LTVを計算するためには解約率の数字が必要となります。
解約率が低ければ、それだけLTVが上がる計算になるわけです。
【参考】LTVとは?マーケティングの重要用語を計算式を交えて解説
解約率を改善するための主な施策
それでは、実際に解約率を改善しユーザーを維持するための具体的な施策について見ていきましょう。
1、不満な点を聞いて1つずつ解決していく
まず、一つ目の施策としては、サービスの利用時のユーザーの様々な不満や悩みを可視化し、それらを1つずつ取り除いていくことです。
これは、当たり前のように誰もが思いつく施策かもしれませんね。
退会時に、退会理由に選択式でチェックさせるのが一般的です。
考えられる理由を、仮説ベースで羅列します。
例えば、一般的な物で言うと、
- 値段が高い
- 必要なくなった
- 他社のサービスの方が良い
- 使いたい/見たいものがない
といった項目です。
記述式の項目を設置するのも、思わぬ声を拾える可能性があるため、価値があります。
「何が不満で顧客が離れているのか?」を分析し、それを取り除くためのサービス設計に活かしていきます。
2、「退会したら損する」という心理にさせる
また、「退会したら損する」という心理にさせることも一つの有効な施策です。
ユーザーが、利用期間において積み上げてきた、サービス内の資産が、「解約したら消失する」という仕組みを作ります。
これは、オンラインゲーム等でよく使われる施策かもしれません。
例えば、
- ゲーム内でのレベル
- 他のプレイヤーとの関係(繋がり)
- 獲得したアイテム
- ゲーム内で使われる貨幣
等、サービス内で、ユーザーに様々な「資産」を蓄積させます。
そして、解約すると「資産」が消えてしまう、というようにサービス設計します。
そうすることで、「解約してしまったら、せっかく積み上げたものが失われる」という気持ちにさせることができ、退会を思いとどまらせることができるようになります。
3、退会手続きを面倒にする、分かりにくくする
これも、賛否両論あるものの、比較的ポピュラーな方法です。
退会までのチュートリアルの項目をあえて複雑にし、その行為を面倒にする、わかりにくくするという施策も解約率の改善に効果的です。
- どこから解約すれば良いのか、入り口を分かりにくくする
- 解約フォームの入力項目を増やし、手続きを冗長にする
- 退会申請の窓口に電話をかけてもなかなかつながらないようにして退会を諦めさせる
と言った手法がよく採られます。
これは、かなり効果がある一方で、解約したい顧客をイラつかせてしまい、ネット上に悪口を書かれたりすることもあるので注意が必要です。
【参考】CV率とは?Webマーケの初心者向けに基礎から丁寧に解説
まとめ
売って終わりの時代から、売ってからが始まりの時代に変わってきた昨今。
サブスク型ビジネスの需要は今後更に増え、競争も激化すると予想されます。
そのため、提供元は、解約率を下げるべく、
- 良質なサービス、コンテンツを提供し続けること
- 他社と差別化を図ること
が更に求められるようになります。
上手く解約率をコントロールしながら、ビジネスを拡大させていきましょう。