「これいいな」というモノを手に入れた時、
「他のものも同じようなテイストで揃えよう」
「シリーズを全部揃えよう」
と思ったことがある人は、少なくないはず。
そのような心理作用は「ディドロ効果」と呼ばれ、人間誰もが少なからずそのような傾向を持っているとされます。
そのメカニズムを上手く活用することで、何となく行っていたマーケティング施策に「科学的な根拠」を与えることができます。
この記事では、ディドロ効果を上手く使いこなして、マーケティングのパフォーマンスを上げるためのポイントについて紹介していきます。
ディドロ効果とは?
ディドロ効果(Diderot effect)とは、理想的な価値を持つ物を手に入れた際、それに関連するものを同じ系統や特徴で揃えたい、統一したいと思う心理作用を指します。
その名称は、18世紀のフランスの思想家、ドゥニ・ディドロ (Denis Diderot)のエッセイの逸話に由来します。
実は、マーケティングをはじめとするビジネスシーンにおいて、このディドロ効果を活用した施策は数多く存在しています。
コミックやパートワークなどの書籍にはじまり、インテリア、アパレル、家電など、幅広い業界で用いられています。
ディドロ効果のメカニズム
例えば、無印良品でソファを買った際に、室内の雰囲気を統一するために、カーテンやデスク、イスなどを全て無印良品で揃え、安心感や達成感を感じる消費者が存在するようなものです。
逆に、何か一部が欠けていたり、違っていると不快感や違和感を感じるケースもあります。
それらの自己欲求を満たしたいという心理がディドロ効果のメカニズム。
また、すでに費やしたお金や時間を惜しむ気持ちが影響し、最後まで完璧に揃えよう、成し遂げしようとする「サンクコスト効果」も関連しているとされます。
ディドロ効果の実例
それでは、アパレル・ファッション業界、インテリア業界、これら2つの分野におけるディドロ効果を活用した施策の実例を見ていきましょう。
アパレル・ファッション業界
アパレル・ファッション業界においてブランド問わず、どの店舗にも設置してある「マネキン」。
これは、ディドロ効果を活用した施策の最も典型的な例です。
マネキンは、おすすめ商品や季節物の宣伝機能もありますが、同じ系統のデザインで上下や付属品を統一することで、ただ単に商品を陳列するよりも買ってもらいやすくするという狙いがあります。
また、消費者が最初に購入した商品を布石にして、それ適したコーディネーションを勧める接客術もディドロ効果を狙った施策の常套手段と言えるでしょう。
インテリア業界
大手インテリアショップのIKEAやニトリでは、実際の販売商品を用いてキッチンやリビングなどを丸ごと演出するショールームタイプの展示方法を実施しています。
これもディドロ効果を狙ったもので、顧客が理想とする部屋のイメージや統一感を事前に具現化することで消費者の購買意欲や、まとめ買い意欲を刺激します。
ディドロ効果導入の際に考える3つのポイント
実際にマーケティングなどのビジネスシーンでディドロ効果を導入する際のポイントやコツについて見ていきましょう。
①シリーズ販売か、セットアップ販売か
ディドロ効果を狙った販売方法には、パートワークやコミックのように複数回に分けて販売するケースと、一度に全て購入してもらうセットアップ販売の主に2通りあります。
セットアップ販売の例として、各家電量販店が実施している新生活を始める社会人、学生向けの家電セット売りが挙げられます。
販売する商品や価格によって向き、不向きがあり、またセットアップ販売の場合には需要やニーズの動向などタイミングも重要であることから、それらを見極めた上で適切な販売方法を選択しましょう。
②ブランド力、ポリシーを確立する
ディドロ効果は、ある程度のブランド力、社会的認知度、そして確固としたポリシーがある前提で機能します。
Apple製品に熱狂的なファンが多いのも、世界的な認知度、信頼感があり、洗練されたデザインで統一されていること、そして常に先進的なものが高品質かつリーズナブルな価格で提供されているが故です。
販促の際には商品やサービスの質はもちろんのこと、いかにしてブランド力やポリシーを確立し、顧客注目を集められるかが重要な焦点となります。
③初回購入の敷居を低くする
消費者の「揃えたい」という欲求を実現するためには、最初の一歩を踏み込んでもらわない限り何も始まりません。
パートワークのように初回購入時の値段をリーズナブルに設定し、敷居を低くすることもディドロ効果活用におけるポイントの一つです。
場合によって「初回無料」にすることで、商品やサービスに関する概要の理解や興味を持ってもらいやすくなることもあります。
まとめ
ディドロ効果をマーケティングに活用することで、リピート客や定期的な収益の維持など企業側にはたくさんのメリットが生じます。
しかし、消費者にとっては「一貫性」の追求やこだわりがストレスや浪費につながり、反感を買うこともあります。
実践頻度や方法にはくれぐれも注意しながら、効果が最大化できるように工夫しましょう。