最近しばしば耳にするようになった「ポリコレ」という言葉。
おもちゃのような、お菓子のような、はたまた化学物質のような、不思議な響きの言葉ではあります。
しかし、これを知らずにいると、何気ない行動が大炎上につながってしまうリスクだってあるんです。
21世紀、SNS全盛のこのご時世において、「ポリコレ」は無視して通れない大事な概念。
ここでは「ポリコレ」の意味や、ビジネスシーンにおける重要性について紹介していきます。
【参考】ダイバーシティ&インクルージョンとは?先進的な企業の常識
これからの新常識、「ポリコレ」とは?
ポリティカルコレクトネス、通称ポリコレとは、政治的、社会的公平性、妥当性と訳されます。
一般的には障がい者など社会的弱者をはじめ、LGBT、有色人種などマイノリティ対する従来の差別的な認識を改める社会運動や活動を指します。
他民族、多人種国家のアメリカではすでに浸透している概念で、日本においても近年広まりを見せています。
ポリコレによって改められた表現
例えば、「性的平等性」の観点から、ポリコレの概念に則り、職業や役職の呼び名が改められた事例はすでに日本にも存在します。
以下に例を挙げると、
- 保母 → 保育士
- 看護婦 → 看護師
- カメラマン → フォトグラファー
- ビジネスマン → ビジネスパーソン
- スチュワーデス → 客室乗務員
などです。
ビジネスシーンにおける広まり
ポリコレは本来、社会に共存する個人が意識するべき問題という認識がありました。
しかし、ビジネスシーンにおいても決して無視できない概念であり、ポリコレを意識した企業運営が、新しい常識として世界中で広まりつつあります。
たとえ無意識であったとしても、商品やサービスの販売や宣伝方法、また人事においてポリコレの意識が欠けているとみなされると、社会的制裁を受けるケースもめずらしくありません。
日本で話題になったポリコレ問題の実例
それでは、実際に日本で社会問題になった実例について3つ見ていきましょう。
①ファミリーマートの女性用下着問題
コンビニチェーン大手のファミリーマートでは、各店舗で販売していたプライベートブランドの女性用下着の一部を自主回収しました。
その理由として、商品名の表記に「はだいろ」という表現が含まれており、それが不適切だという指摘を一部の加盟店や社員から受けたためです。
日本人的な感覚としては難しいですが、本来人種や個人によって肌の色は異なることから、特定の色を肌色と表現するのは差別的であるという苦情が寄せられたため、自主回収に至りました。
※問題になったファミリーマートの商品画像。商品中央部に白い文字で「はだいろ」の表記が。
②花王の化粧品における「美白」表現廃止
同じく人種差別、偏見の観点から起きた問題として大手化粧品メーカー、花王の事例があります。
花王は2021年3月、化粧品、化粧水、その他スキンケア商品の表記において今後「美白」という表現を全面廃止すると公表しました。
これも肌色に関する議論で、白くなること=美しいという概念が差別的であり、肌の色による優劣を連想させる可能性があるためです。
アメリカで起きたBLMの活動を受け、外資メーカーはすでに「ホワイトニング」など表記を取りやめており、花王もそれに便乗し廃止に至りました。
※昔使われていた「美白」表現の画像。現在はこのような表現は取りやめられています。
③ナイキジャパンのCM内容
大手スポーツブランド、ナイキジャパンが2020年11月上旬に公表したCMの内容もメディアやSNSを通し大きな物議を醸しました。
CMの中では、海外をルーツに持つ子どもたちが、いじめや偏見を受けながらスポーツを通して逞しく成長していく姿が描かれています。
賞賛の声がある一方で、
「私の周りには差別はなかった」
「日本を貶めているようなひどい内容」
と言ったクレームが寄せられ、炎上する事態になりました。
どのような立場をとるにせよ、難しい問題だったりするものです。
【参考】サーキュラーエコノミーとは?普及しつつある概念の基礎知識
企業がポリコレに対応していくためには?
ポリコレはこれからの企業運営において決して無視できない考え方であることから、各社対応を進めていく必要があります。
それでは、具体的な施策について業務ごとに見ていきましょう。
人事
人事における主な施策としては、職種の呼称はもちろんのこと、履歴書の性別欄をなくす、ユニフォームの規制を緩めるなどが挙げられます。
性別欄に関して、従来の男・女だけの表記ではトランスジェンダーなど性的マイノリティへの配慮が不十分であるため、性別欄をなくす、もしくは性別の記入を任意にします。
ユニフォームに関して、ある程度の範囲内で選択制にするなどの施策が非常に効果的です。
マーケティング・広報
ファミリーマート、花王、ナイキジャパンの問題からもわかるように、マーケティングや広報はSNSやメディアを活用する機会が多いことから、ポリコレに対して細心の注意を払う必要があります。
肌の色や髪質など、特定の人種や民族を示すようなキャッチフレーズや表現は極力避け、また適切な言葉選びをするために知識を深めることも重要です。
社内全体
特定の業務に限らずポリコレ問題を考える上では、ポリコレに関して過剰に反応する消費者、ユーザーも潜んでいるという認識を持っておかなければなりません。
安易な発言をしてしまうということについてはもちろん、炎上やクレームに対する恐怖感を持ちすぎてしまうと表現の自由が制限され、言葉狩りなどの問題に発展する可能性があるからです。
言葉は慎重に選ぶよう、社内に向けて働きかけをしていく必要があります。
【参考】ホラクラシー型組織とは?多様化社会で期待される組織の特徴
まとめ
SNSやネットが発展している現代社会。
このような時代において、企業がポリコレに配慮した運営や販促ができないと、場合によってはすぐに炎上し、ブランドに傷がついてしまう危険性があります。
ポリコレを意識しすぎると社員が窮屈さを感じてしまう、萎縮してしまうこともあるでしょう。
しかしこれらは、少しずつ意識を変えていくことで、徐々に慣れていき、窮屈さはなくなっていくものだとも考えられます。
少しずつ理解を深めていき、より良い社会にできるよう一人一人が行動していくことが重要といえるでしょう。