「シェアリング」という言葉が拡がりを見せる中で、「ワークシェアリング」という言葉もまた、注目を集めるようになっています。
「また面倒な横文字が増えた、、、」と思うなかれ。
これは、概念として分かり易いだけでなく、企業にも、従業員にも大きなメリットがある施策なのです。
ここでは、ワークシェアリングの概要や、導入する企業が増えている背景、メリットや実施の手順、注意点などについて解説していきます。
【参考】ノー残業デー上手くいってる?形骸化させないためのコツ5選
ワークシェアリングとは?
ワークシェアリングとは、これまで1人が行っていた業務を複数人でシェアすることで、属人性を減らしたり、各人の負担を減らしたりするための施策です。
近年、ワークシェアリングを導入する企業が増えてきている背景には、失業率の高さに加え、長時間労働、長時間勤務によって心身を壊してしまう働き手の増加が大きく影響しているとされます。
【参考】みなし残業=ブラック?導入している企業に応募の際の注意点
ワークシェアリングのメリット
それではまず、企業側のメリットについて見ていきましょう。
①無駄なコストを削減できる
企業側にとって最大のメリットは、コストを削減できることです。
例えば、これまで1人の従業員が残業や休日出勤をしてまで取り組んでいた業務を複数人でシェアすれば、効率化することができます。
時間を持て余している人が忙しい人を手伝うことができ、残業する人が減れば、人件費や光熱費などコストカットにもつながるでしょう。
②業績悪化時の雇用維持
赤字が続いている、業績が伸び悩んでいる、不景気が続いているなど、状況によって企業は厳しい状況に置かれることがあります。
そのような時、企業は、一部の事業を閉鎖したり、部署を解散させたり、撤退したり、といったことが起こりえます。
そうなると、どうしても余剰人員が生じてしまうもの。
そうなった時に、企業が苦肉の策として行う対応としては、従業員の解雇が起こり得るのです。
しかし、ワークシェアリングを導入している企業であれば、業務を細分化し、適切に配分することで、解雇を回避できるケースもあります。
③業務のブラックボックス化、停滞を防げる
複数人で仕事をシェアすることで、業務内容がオープンになります。
そのため、不正の温床になることやブラックボックス化を防ぐことにもつながります。
また、
「〇〇さんに聞かないとわからない」
「〇〇さんがいないと回らない」
という事態にも陥りにくくなることから、急な退職や人事異動があった際も、停滞することなく業務を続けられます。
これについて言うと、例えば、銀行等の金融系企業では、社員に1週間以上の休暇を強制的に取らせる、ということをしているところも少なくありません。
これは、強制的に業務内容の共有を他の従業員に対して行わせることで、不正が行われるのを防ぐという狙いもあります。
それでは、従業員側のメリットについても見ていきましょう。
①長期休暇を取りやすくなる
従業員にとっての最大のメリットは長期休暇、有給休暇を取りやすくなることです。
「自分がいないと誰もこの業務ができない」
「会社に迷惑をかけてしまう」
といった理由で休暇を取ることに抵抗を感じる人も少なくありません。
しかし、ワークシェアリングが進み、多くの人が業務を担える体制ができていれば、その心配も緩和されるでしょう。
②プライベートな時間が増える
ワークシェアリングが進んで残業時間が減れば、その分趣味や家族と費やす時間などプライベートな時間が増えます。
副業を始める、スキルを身につけるなど空いた時間を有意義に使えるでしょう。
③心理的、体力的な負担が軽減する
ワークシェアリングを導入している企業では、「自分しかできない」仕事が減ることになります。
そうなると、「仕事が終わって早く帰る人」がいる一方で、「残業で遅くまで残る人」がいる、という状況になる可能性が少なくなります。
そうすると、従業員同士が助け合うことで、皆が定時で、または、早く退社することができるようになります。
心理的、体力的な負担が軽減され余裕が生まれます。
社内の不公平感も減るでしょう。
【参考】メンタルヘルス対策は十分?心の健康を守るためにすべきこと
ワークシェアリング導入のプロセス
それでは、実際に導入するための具体的な手順やプロセスについて見ていきましょう。
ステップ1:職場における現状の把握とプロセスの洗い出し
まずは職場において、現状の把握や無駄の洗い出しを行います。
誰がどんな業務を担当しているのか、具体的な人数、予算、部署ごとの割り当てなど、業務内容や人材について確認します。
不要な業務や会議はないかなど、無駄の洗い出しをしていきます。
ステップ2:シェアリングが可能な業務、部署を明確にする
現状把握、無駄の洗い出しができたら実際にワークシェアリングで対応できる具体的な業務や部署を明確にします。
業務や部署によってはそもそもシェアリングに向いていないケースもあります。
そのため、見極めは非常に重要です。
ステップ3:マニュアルの作成、情報共有
ある程度全体的な展望が見えてきたら、実施するためのマニュアル作成やルール決めを行い、社内で情報共有します。
その際には担当者が独断で行動するのではなく、実際にシェアリングを行う従業員の意見を聞きながら、皆が納得する形で進めていきます。
ステップ4:分析、評価
ワークシェアリングの実施後、定期的に労働環境や業務の効率、成果について分析、評価を行います。
進捗状況を確認しつつ、しっかりと狙った効果が見込めているのか、無駄は残っていないかなど分析、評価、そして改善を重ねていきます。
【参考】残業削減は時代の要請!今すぐ始められる取り組み4つを紹介
注意点
ワークシェアリングは企業側、従業員側双方にとって非常に魅力的な施策ですが、注意点もあります。
例えば、
- 責任の所在が曖昧になり「他の人がなんとかしてくれるだろう」というマインドで仕事が雑になる
- 結局、特定の人に仕事が集中し不公平感や格差が拡大する
などが挙げられます。
【参考】ABWとは?働き方改革の中で脚光を浴びている仕組みを紹介
まとめ
ワークシェアリングは、メリットも多いですが、注意点を意識しなければ進めなければ、結局骨抜きになってしまうリスクがあります。
業務を円滑にし、従業員の幸福度を高めるためにも、上手く導入していきましょう。