2022年(令和4年)から、会社の税務や人事・労務、その他、会社運営や従業員の働き方に大きく関わる多くの法律や制度が新しくなります。
そういった意味で、2022年は、一つの節目の年と言えるかもしれません。
場合によっては、事前に社内周知や各種手続きが必要となるケースもあります。
事業主としては、抜け漏れがないよう、しっかり押さえておきたいところ。
この記事では、2022年の法改正や制度についてまとめて解説しています。
【参考】2025年問題とは?もうすぐ来る大波に対し企業が取るべき対策
税務に関する法改正、制度変更
それではまず、税務に関する法改正、制度変更から見ていきましょう。
電子帳簿保存法
電子帳簿保存法とは、税務申告に必要な決算書類や帳簿、領収書など紙ベースの書類を電子データに転換して保存する際のルールを定めた法律です。
1998年に施行されて以来、何度も法改正が行われてきました。
最近では、2021年1月にも法改正が実施されたばかりです。
企業における、
- ペーパーレス化の更なる加速
- デジタル化社会に向けたIT活用の推進
が狙いです。
今回の法改正による主な変更点は、次の通りです。
1、スキャナ、撮影保存後の原本保存義務の撤廃
これまで、紙ベースで受領した領収書、請求書、見積書、納品書など、資金や物の流れに関する書面をスキャナやスマホ撮影で読み取った場合、7年間、原本を残しておく義務がありました。
しかし、今回の法改正に伴い、その義務が撤廃されます。
これにより、オフィスの省スペース化が期待できます。
2、電子取引データ保存
メールで受け取った請求書やECサイト利用時の領収書、その他クレジットカードの明細など、電子取引データは、これまで書面に出力して保管することになっていました。
しかし、法改正に伴って、書面出力が不要となります。
ウェブ上、メールで受け取った電子取引データは、そのまま保存することができます。
3、PCを用いて作成する帳簿や書類の保存
仕訳帳や総勘定元帳などの国税関係帳簿、賃貸対照表や損益計算書などの決算関係書類、そして見積書、契約書、請求書などの取引関係書類で、PCを用いて作成する帳簿や書類も、そのまま電子データとして保存できるようになります。
【参考】下請法とは?フリーランスが最低限知っておくべき法律の基礎
人事・労務に関する法改正、制度変更
次に、人事・労務に関する法改正、制度変更についてみていきましょう。
パワハラ防止法
労働法施策総合推進法、通称パワハラ防止法。
文字通り、職場における
- パワーハラスメントの発生防止に努めること
- パワーハラスメントの発生時に適切な措置を取ること
を事業主に対して義務付ける法律です。
2020年6月から、大企業を対象に本格的に施行されました。
そして、いよいよ、2022年4月からは、中小企業にも適用されます。
違反した場合の罰則は特にありません。
しかし、悪質だと、企業名の公表や勧告など、行政処分が課される可能性もあります。
よって、何かあったら、事業主は適切な対策を講じなければなりません。
対策のポイントは、
- パワハラに対する企業方針を明確化し、従業員への周知、啓発を図ること
- 相談窓口や通報窓口を設置すること
- 関係者のプライバシー保護に努めること
の3つになります。
女性活躍推進法
女性活躍推進法は、仕事で活躍したいと希望する全ての女性が、自身の個性やスキルを存分に発揮し、それを実現できる社会を作っていくことを目的とした法律です。
元々は、常時301人以上の従業員を雇用する事業主に適用されていました。
そして2022年4月から、常時101人以上の従業員を雇用する事業主に適用範囲が拡大します。
対象となる事業主は、職場における女性活躍の現状把握を始め、具体的なプランを策定、周知し、関係機関に届け出る必要があります。
準備が出来次第、女性活躍のためのプランを実施し、効果の測定も行います。
育児・介護休業法
これまで、主に女性が取得していた育休や産休。
2022年4月の育児・介護休業法の改正で、男性でも気軽に取得できるようになりました。
- 育休の周知・確認義務(誰でも育休が取りやすい社内の雰囲気づくり)
- 出生時育休制度の創設(出生後8週以内に男性が最大4週の育休を2回に分けて取得可能)
- 大企業の育休取得率公表義務化
これら3つが押さえておくべきポイントとなります。
これらは、従業員規模関係なく、全ての事業主に適用されます。
【参考】有給休暇義務化でどうなる?違反時の罰則と取得率向上の施策
社会保険に関する法改正、制度変更
最後に、社会保険に関する法改正、制度変更についてみていきましょう。
社会保険の適用拡大
令和2年に成立した改正年金法。
これより、2022年10月から、パート社員など短時間労働者の社会保険の適用範囲が段階的に拡大されることになります。
元々、従業員を社会保険に加入させる義務が発生するのは、
- 1年以上の勤務が見込まれるパート社員などを雇用している
- 常時500人以上の従業員を雇用している
といった大企業となっていました。
しかし、法改正に伴い、2022年10月からは、
- 1年以上→2ヶ月以上
- 常時500人以上→100人以上
更に、2024年10月からは、
- 100人以上→50人以上
に条件が変更される予定です。
新たに従業員を社会保険に加入させる義務が発生する企業は、まずは加入対象者を把握した上で、社内周知や対象者との面談、そして手続きを早急に済ませなければなりません。
【参考】社会保険が2022年から変わる?主な変更点と必要な準備を解説
法改正や制度変更はチャンス
法改正や制度変更は、「対応にコストがかかるだけ」と思われがち。
しかし、他社と差をつけたり、場合によってはコストを削減できることもあります。
迅速に変化に対応できる企業だけが生き残る社会。
うまく適応して、同業他社に差をつけるチャンスにしましょう。