「気づいたら、自分のためではなく、会社のためだけに働いている。」
このような状況に陥ることは珍しくなく、決して他人事ではありません。
不当にこき使われないためにも働く人なら、誰もが注意したいところです。
今回は、今なお日本社会の至る所に存在するやりがい搾取について、その原因や労働者として持っておくべき心構えを紹介します。
やりがい搾取とは?
やりがい搾取とは、「やりがいがある労働である」ということを盾にして、報酬を不当に低く抑えて労働者を働かせ、使用者や経営者が利益を搾取する経済構造のことです。
この言葉、最近よくメディア等で耳にするようになりました。
もともとは、東大大学院教授で社会学者の本田由紀氏が提唱した労働搾取構造を指します。
主に専門職などで、夢や目標に向かって愚直に働く若者が主な被害者。
尚、やりがい搾取は、以前より日本社会の闇として存在していたとされます。
主に、
- 飲食業・接客業
- 介護・福祉業
- 芸能、クリエイティブ
といった業界でよく起きるとされています。
やりがい搾取の過去の事例
十分な賃金を支払わず、従業員に過重労働をさせていた、某居酒屋チェーングループ。
有名な事例かもしれませんが、これはやりがい搾取の最も典型的な例と言えます。
- 『相手を幸せにした分だけ「ありがとう」が返ってくる。それを集めるために働くんですよ。」
- 「人間は食べ物がなくても、『感動』を食べるだけで生きていける。」
このような精神論を従業員に課して過労死するほど働かせていたとされます。
一時期、かなり世間を騒がせました。
なぜやりがい搾取されてしまうのか
やりがい搾取が起きてしまうのは、明らかに会社側の責任と言えます。
しかし、労働者側にも少なからずその原因があると言えるでしょう。
たとえば、
- 会社から「嫌ならやめればいい」と脅され、そのまま不安を抱えながらその職場で働き続けてしまう
- 「仕事自体は好きだから、少しくらいの無理は大丈夫」と目を瞑ってしまう
といったケースです。
また、仕事の悩みを気軽に相談できる人や評価してくれる人が周囲にいないということもよくあるようです。
そして、勝手に「世の中そんなもんだろう」と思い込んでしまっているために搾取されてしまうのです。
やりがい搾取されないための心構え
それでは、労働者として悪質な企業にやりがい搾取されないために持っておくべき心構えをいくつか紹介します。
1. 労働者としての権利、利益をしっかり主張する
やりがい搾取されないためには、何よりも労働者としての権利、利益を守ろうとする心構えが必要です。
たとえば、
- 有休などの「休む権利」
- 業務時間外は上司の指示を受けない「つながらない権利」
- 残業代をしっかりもらう権利
その他にも、待遇は妥当なものか、自分自身でしっかり見極めましょう。
それらの権利や利益が大きく侵害されていると気づいたら、周りの目を気にすることなくしっかり主張すること、異議を唱えることが大切です。
2. もしもの時の対処策を持っておく
労働者としての権利、利益を主張するために法知識や対処策を持っておくことも大切です。
- 何が、どこまで許されるのか
- どんな状況下で権利や利益が侵害されてしまうのか
これは、ある程度労働関連の法律を知っておかないと疑問すら持てません。
また、どこの、誰に相談するべきかも、知識として持っておきたいものです。
3. しっかり休む
やりがい搾取されてしまう人の特徴として、過重労働によって心身がひどく疲労し、正常な判断ができなくなっていることが挙げられます。
そのような状況に陥ってしまってはもう手遅れかもしれません。
- 「なんか疲れているな」
- 「少しヤバいかも」
と思ったら、無理矢理にでもしっかり休みを取ることも、やりがい搾取されないための防止策として非常に重要です。
4. 冷静になって入ろうとしている会社を見極める
やりがい搾取されたくないのであれば、そもそも悪質な会社に入らないのが一番です。
- 「尊敬する人がそこで働いているから」
- 「ずっと憧れの会社だったから」
そのような理由だけで、就職先、転職先を選ぶと後悔することがあります。
そこで実際に働いている人、もしくは働いていた人の声を口コミサイトなどでリサーチしてみるのは有用です。
会社の意外な姿が見えてくるかもしれません。
その上で入社すべきか、冷静に検討しましょう。
5. 独りにならない
非常にシンプルなことですが、客観的に状況を見てくれる誰かと一緒にいることは有用です。
- 独りで悩み続けないようにする
- 何もかも自分で判断したりしないようにする
といったことがとても大切なのです。
親しい友人や同僚で構いません。
自分の今の状況について客観的な判断ができるようにしましょう。
自分が置かれている労働環境の健全性が分かったり、自信を持てたりします。
やりがい搾取に遭っていないか確認しよう
夢を実現したいから、昔から憧れの仕事だったから、という動機で働くことは決して悪いことではありません。
しかし、それ故に実際におかれている状況や労働環境が見えなくなってしまうと、搾取されて終わり、ということになってしまいます。
自分のこれからのキャリアのため、利益のため、健康のため、必要な時には自ら声を上げたり、職場を変えたりする覚悟も必要です。