世界的に差別や偏見を撤廃する動きが強まる中、IT用語にもその流れが来ていることをご存じでしょうか?
グローバル化が進んできているこのご時世、知らないままでいるとこれまで当たり前に使ってきた用語が知らぬ間に人を傷つけてしまい、ネット上で炎上してしまうこともあります。
これから英語・外国語に対応したツールを作りたい方や海外の方と仕事をしたい方は、このようなトレンドについて知っておくべきです。
知らないうちに間違った言葉を使ってしまうと、せっかく積み上げた信用をたちまち失うことにも繋がりかねません。
この記事では、 IT用語で進む差別・偏見撤廃の動きについて解説します。
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IBMらが結成した「Inclusive Naming」とは?
IT用語内での差別・偏見撤廃の動きを主導しているのが「Inclusive Naming」です。
中立的な用語使用の推進を目的とした組織で、IBMやciscoなど海外の有名IT企業が参加しています。
差別や偏見を助長するような用語について、その理由と新しい言葉の候補を提示しています。
ワードリストとして誰でも閲覧できるようになっており、世界のIT関連企業へ言葉使いを適切なものに変えるよう促しています。
また、「こんな言葉はダメ」という単なる啓発活動だけではなく、
「不用意な言葉を使ってしまって信頼を落としたくない」
「どんな言葉がアウトなんだ?」
と疑問に思う企業のサポートもしています。
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用語置き換えの例
それでは具体的にどのような言葉が該当して、どのように書き換えた方がいいと言われているのか?について解説します。
master(マスター)とslave(スレイブ)
masterは主人、slaveは奴隷を指す単語です。この2つの言葉を「ふさわしくない」としたことに対して、異を唱える人はいないと思います。
元々はデバイスやプロセスが特定のエンティティ(別のシステムやデバイスなど)に依存、制御されている状態を現していました。
制御されている側をslave、している側をmasterと表現していたわけです。
差別的で好ましくないとして、masterのみを単体で使うことやslaveをfollower(フォロワー)やChild(子)にすることを推進しています。
Twitter社も2020年に、この置き換えを行ったことを公表しました。既に多くの海外企業がこの変更を行っていると考えられます。
Whitelist(ホワイトリスト)とBlacklist(ブラックリスト)
多くの場合、良い人のリストとダメな人のリストを示します。
日本でもカタカナ表記でよく用いられる表現ですが、白が優位・善良で黒が下、悪という印象を与えます。
この表現は人種的な偏見を助長するとして、それぞれBlacklistはBlocklist(ブロックしたリスト)、Whitelistはallowlist(許可したリスト)への変更を推進しています。
特に白と黒をセットで使い、一方が優位であるような表現は良くないと考えられておりWhitehacker(ホワイトハッカー)、Blackhacker(ブラックハッカー)も同様です。
一方、BlackboxやBlackoutは善悪の価値観を伴うことはなく、白と比較しているわけではないので対象外とされています。
man hour(マンアワー),man day(マンデイ)
日本ではあまり見かけませんが、海外では工数や時間などを示す言葉です。
この用語は、すべての労働者を表すのに男性という意味を持つmanを用いています。
IT業界に限らず女性の活躍が進む現代において、この表現には偏見があり、排他的とのことで置き換えが進んでいます。
労働者を表す単語を、person(パーソン)に置き換えた”person hour”、”person day”を使うことや、“full-time equivalent (FTE) day”や “full-time equivalent (FTE) hour”の使用を推進しています。
代表的な用語を取り上げましたが、公開されたワードリストの中には、他にも置き換えを推進している単語があります。気になった方は是非チェックしてみてください。
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言葉から変えていこうという試み
IT用語における差別・偏見撤廃の動きについて解説しました。
もちろん、言葉を変えたからと言って差別・偏見がなくなるわけではないでしょう。
しかしながら、影響力のあるIT業界トップクラスの企業がこのような動きを始めたのには大きな意味があります。
そして、日本人はこのような差別や偏見に対して割と鈍感だと言われることもあります。
海外のこのような動向をチェックしていないと、海外の取引先・ユーザーと思わぬトラブルになることもあるかもしれません。
もしかしたら、今後日本語でも同じことが起こるかもしれません。要チェックです。