残業時間が多すぎる。
残業代が払われない。
会社から不当な扱いを受けている。
経営者と従業員は、共に働く関係でありながら、利害が相反するという側面もあります。
経営者の力が強すぎて、暴走してしまうと、会社が「ブラック企業」になってしまうことも。
そのようなことにならないように、経営者に対して牽制をかけるのが、組合の役割です。
この記事では、労働組合の概要と、加入するメリット、注意点について解説します。
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労働組合とは
労働組合とは、企業に勤める従業員、労働者が主体となって結成する団体で、主に労働条件、環境の改善、働く上で起こり得るあらゆる問題への対応、防止を理念として掲げ活動する団体です。
加入するかどうかは、原則として任意。
また、原則として、管理職に該当しないことが、組合加入の要件となります(管理職が組合に加入できるかどうかについては議論があります)。
よって、組織内で昇進して管理職になると、組合からも卒業となります。
労働組合は、労働者を守るための労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)と労働組合法によって、その存在や活動が保障されています。
近年、パワハラやセクハラ、賃金未払いなどの社会問題が拡大していることから、労働組合の存在意義が改めて問われています。
労働組合の種類や主な役割
個人が加入できる労働組合は、①企業別組合、②合同労働組合の主に2種類です。
①企業別組合
企業別組合とは、同じ企業における従業員同士が集まって活動する組織です。多くの場合、正規社員のみが参加できます。
②合同労働組合
通称ユニオンとも呼ばれる合同労働組合は、業種、業態問わず複数の企業の労働者が集まって結成されます。非正規であっても参加できる労働組合は、このタイプが一般的です。
社会的な役割は双方とも同じで、雇用主よりも弱い立場にある労働者が団結して企業と対等な立場であらゆることを交渉、要求することです。
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労働組合に加入するメリット
それでは、労働組合に加入する重要性やメリットについて見ていきましょう。
①賃金アップや福利厚生の整備を要求できる
まず、一つ目のメリットとして、賃金アップや福利厚生を整えるよう企業側に要求しやすくなることが挙げられます。
個人として企業に要求することも可能ですが、デリケートな問題である場合、なかなか要求するのが難しいこともあります。
しかし、労働組合に加入し、企業と対等な立場で交渉出来れば、給与や報酬アップの交渉、育休、産休制度の導入など要求がしやすくなり、労働環境の改善につなげられます。
毎年、春になるとメディアで「春闘」が取り上げられるかと思いますが、これは、毎年春に労働組合が経営陣と労働条件について協議し、決定することを、イベントのように取り扱っているものです。
②個人では対処しきれない様々な問題への対応ができる
パワハラやセクハラを始め、サービス残業の実施、残業代未払いなどが近年社会問題化していますが、被害者が声をあげようとしても具体的な解決策がわからないため結局我慢しているケースは少なくありません。
しかし、労働組合を通し弁護士などの専門家、労働基準監督署など専門機関の協力を仰げば、精神的な負担や手間を最小限に留め、早期解決が見込めるでしょう。
企業の監視機関としての役割を労働組合が担うことで、社内におけるあらゆる問題の抑止力になり、その結果、企業の「ブラック化」も未然に防げます。
③会社の内部情報にアクセスできる
また、労働組合に加入することで、個人ではなかなか知り得ない企業の内部情報にアクセスすることも可能です。
例えば、企業の詳細な経営方針や経営陣、役員らの考え、その他取り決めなど、上層部向けの内部情報に関する開示請求を労働組合を通して出すことができます。
その結果、企業に対する信用や信頼、理解が深まり、快適な労働環境の選択にもつながることもあるでしょう。
もちろん、その逆もあり得ますが。
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加入前に知っておきたい注意点3つ
個人では難しい要求や提言、申し立てができるようになることが労働組合に加入するメリットですが、一方で加入するにあたりいくつか知っておくべき注意点があります。
①労働組合の会費や手間がかかる
国内には多くの労働組合が存在しますが、加入し組合としての活動をしていくために、月毎に会費を払わなければなりません。
基本的には月額数百円~数千円程度ですが、年単位で考えるとある程度の経済的負担になることも念頭に置いておきましょう。
また、労働組合内で役員や代表者になると会議や委員会等への参加が求められるため、プライベートな時間が減ってしまうリスクもあります。
②政治団体化しているケースもある
特に全国的な認知度がある労働組合において、実質的に政治団体化しているケースも一部ですがあります。
それを知らずに加入してしまい、不本意な政治活動に駆り出される、組合費が政治活動資金に使われるなどの問題も実際に起きています。
そのような事態を避けるためには、組合の具体的な活動や運営状況に関してあらかじめしっかりとリサーチをした上で加入を検討しましょう。
③非正規社員は加入できない場合もある
特に企業別組合において言えることですが、一部の労働組合はパートやアルバイト、派遣社員など非正規社員が加入できないケースもあります。
年々改善傾向にある問題ですが、まだ全ての組合において非正規社員に対する十分な環境が整っているわけではないため、加入できるかということも含め加入条件等についてあらかじめ情報収集をしておきましょう。
まとめ
労働組合に加入することで職場環境の改善や経済的地位向上を図れるだけではなく、近年問題になっているパワハラ、モラハラ、セクハラと言った個人だけでは対処しきれない問題への対応がしやすくなります。
加入はあくまで任意であり、そもそも職場環境に満足しているのであれば時間やお金の無駄になってしまうため、「加入しない」も一つの選択肢です。