終身雇用制度が崩れ、転職が当たり前の世の中になりましたが、そのような中、「出戻り」を歓迎する会社が増えています。
そのような会社がしばしば導入している制度が、「アルムナイ制度」。
しばしば「出戻り」とセットで語られるアルムナイ制度ですが、それ以外にもメリットがあります。
この記事では、アルムナイ制度とはそもそもどんな制度なのかを踏まえ、導入するメリットやポイントを紹介していきます。
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アルムナイ制度とは?
アルムナイ制度とは、企業を一度退職した元社員を再び雇用する制度です。
カムバック制度、出戻り制度とも呼ばれることもあります。(※定年退職した人の再雇用ではありません)
アルムナイ(alumni)とは、もともと学校の卒業生や同窓生という意味で、会社を退職することを「卒業」と捉え、退職後も友好的な関係が継続できている退職者というニュアンスで使われています。
終身雇用制度が過去のものとなっていく中で、働き方改革や転職の活発化により人材の流動化が激しくなっている近年、企業にとって有益な人材を効率的に雇用する手段としても注目を集めています。
P&Gやヤフー株式会社、武田薬品工業株式会社など大手企業をはじめ、多くの企業がすでに制度の導入を始めています。
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アルムナイ制度を導入するメリット3つ
それでは、導入する具体的なメリットや目的について見ていきましょう。
①取引先の獲得につながる
人材確保の手段、ということを上で挙げましたが、アルムナイ制度を導入することで、新規取引先の獲得や開拓にもつながります。
仕事の品質に対する理解があるというのは、大きなアドバンテージ。
アルムナイが他社に就職し、予算を動かせる程度の要職についていたり、起業して社長になっていたりした場合、出身会社に仕事を発注してくれたり、取引先になってくれる可能性が高いと言えます。
取引をする上で自社との関連があり信頼がおける相手なら、発注をかける際にもスムーズな取引が期待できるでしょう。
②優秀な人材の確保ができる
アルムナイ制度で復帰する人の大半は、在籍期間中に活躍し高評価を得ていた人材であるため(評価が低かった人を呼び戻すとは考えにくいため)、企業にとってプラス可能性が非常に高いと言えます。
そして、一度会社を離れ、他社や他業界で得た知見やノウハウは、復帰先の企業においても役に立ち、会社をより良くするための提言やアドバイスにも繋がるでしょう。
社内における業務フローを熟知しているため即戦力として登用しやすい、また、旧知の人が多ければ会社に馴染みやすいというメリットもあります。
③採用にかかるコストや手間を削減できる
アルムナイ制度で人材を雇用する場合、新卒、中途採用よりも採用にかかるコストや手間を大幅に削減できます。
アルムナイを採用する際には転職サイトやエージェントを介さず直接的にアプローチするため、求人広告の掲載費用やその他手間が不要になるからです。
また、あらかじめ人材の情報が明らかであることから、「ハズレ」を引くリスクもほとんどなく、企業にとって有益な人材を効率的に獲得できます。
人材に対するニーズが明らかであれば、アルムナイ本人が復帰しなくても、リファラルなどで他の良い人材を紹介してくれることもあります。
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アルムナイ制度の導入にあたり押さえるべきポイント3つ
それでは、実際にアルムナイ制度を導入する際に押さえておくべきポイントや注意点を紹介します。
①あくまで「アルムナイを応援する」という姿勢でいく
アルムナイ制度を導入する際には、退職者との良好な関係維持に努めながら、あくまで「アルムナイを応援する」という姿勢で進めていく方が社内全体の理解も得やすく、トラブルも未然に防げます。
「会社は家族」という精神を持っている会社や、上層部に年配が多い会社を含め、終身雇用制度が浸透していた昔ながらの日本企業は退職者を「裏切り者」「外れ者」として扱う傾向もあるため、そもそもアルムナイ制度に前向きな姿勢を示さない人や企業も存在します。
しかし、「裏切り者」ではなく、一時期同じ船に乗って同じ夢を見た「仲間」であるという認識を持ち関係を築いていくことが導入にあたり最大のポイントと言えるでしょう。
その結果、今いる従業員の愛社精神や企業への貢献度を強めることになります。
そうすれば、お互いウィンウィンな関係になれるでしょう。
②露骨にメリットを求めない
制度を導入することで、企業にとって取引先の開拓や人材確保など大きなメリットが期待できますが、それらを露骨に求めてはいけません。
アルムナイ制度の導入も、やはりいくらかコストがかかるものであることから、かかったコストを何らかの形で回収したいという気持ちも分かります。
しかし「取引先や人材を紹介してくれ」「戻ってきてくれ」とアルムナイに対して強く要求すると企業の評価が下がるだけでなく、関係悪化にもつながりかねません。
お互いが気持ちよく関係を継続するためにも、あくまでアルムナイにギブするという姿勢をまずは貫きましょう。
③受け入れ態勢の整備、社内への周知
復帰後のトラブルを避けスムーズに業務へ移行してもらうためには、雇用形態や報酬など受け入れ態勢の整備が欠かせません。
企業側のメリットだけではなく、アルムナイの利益にも配慮しお互いが納得する形で雇用します。
また、今いる社員の不満や反感が出るのを防ぎ、お互いに馴染んでもらうためにはあらかじめ制度導入に関する詳しい説明や理解を得る必要があります。
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まとめ
働き方の多様化によってこれからますます人材の流動化が激しくなる中、アルムナイ制度を導入することで優秀な人材の確保、企業が必要としている人材とのマッチングがしやすくなります。
アルムナイ候補者から成功者、有名人が出るとアルムナイネットワークの価値が大きく上がるため、導入を検討するのであればなるべく早期の段階で準備を進めていきましょう。