今の時代、昔よりも働き方の多様性が尊重されるようになりました。
それによって、
「会社を辞める」
「働く会社を変える」
そのような選択もだいぶしやすくなっています。
しかし、安易な転職は禁物。
その選択によって、働く人自身が大きな不利益を被ることもあるのです。
「今日で会社辞めます」のリスク
「仕事に行きたくない」
「なんかだるい」
働いている人なら、誰もが感じたことがあるはずの、この感情。
しかし、そのまま、勢いだけで会社を辞めてしまうのは危険。
非常に大きなリスクを伴うことになります。
もちろん、辞めたいと思った時に辞められるのは、労働者の立派な権利の一つです。
また、最近では退職代行サービスの普及によって、以前よりも会社を辞めるハードルも低くなりました。
しかし、
- 上司からのパワハラに耐えられない
- 緊急の健康上の理由がある
など、余程の事態でない限り、衝動的な自己都合退職はするべきではありません。
衝動的な自己都合退職をすべきでない5つの理由
それでは、衝動的な自己都合退職による具体的なリスクについて、見ていきましょう。
1、会社から損害賠償を請求される可能性がある
最も注意すべきリスクはこれです。
なんと、会社から損害賠償を請求される可能性がある、ということです。
急に会社を辞めた社員に損害賠償が命じられた実際の事例もあります。
それが、「ケイズインターナショナル事件」と呼ばれる判例。
ケイズインターナショナル事件
当時、総合インテリア会社、ケイズインターナショナル株式会社に勤めていたAさん。
入社直後に病気を理由に欠勤し、その後まもなく退職しました。
「Aさんの急な退職により、取引先との契約1,000万円分の損失が発生した」
このような主張をして、会社側は損害賠償を請求しました。
そして、Aさんは、70万円の支払いを命じられたのです。
もちろん、突然会社を辞めたからといって、必ず損害賠償を請求されるわけではありません。
また、請求されてもそれに応じるべきかは法的判断を仰ぐことになります。
そのため、恐れすぎる必要はありませんが、リスクはゼロではありません。
トラブルを回避するためにも、極力、急な退職は避けましょう。
2、本来、もらえるはずのボーナスがもらえなくなる
急に会社を辞めると、本来もらえるはずのボーナスを、一切もらえなくなるという事態に陥ることもあります。
というのも、会社によっては、ボーナスの支給に関して、「支給日に在籍している従業員に支給する」と就業規則で決めているところもあるためです。
むしろ、「それが主流」とすら言えるかもしれません。
それを知らずに、ボーナス直前で急に辞めてしまうと、損をしてしまいます。
査定期間中にどんなに真面目に働いて、成果を出しても、ボーナスはもらえないでしょう。
辞めるにしても、ボーナスをもらった後で辞めるなど、計画性を持ちたいものです。
3、失業手当がもらえなくなることも
「失業手当をもらえるから大丈夫」という理由で、急に会社を辞めようとする人も少なくありません。
しかし、失業手当は、必ず、誰もがもらえるというわけではないのです。
- 退職日前の2年間において最低でも12ヶ月間、雇用保険に加入していること
- 現在、再就職する意思と能力があること
少なくとも、これら2つの要件をクリアする必要があります。
要件をクリアできないまま、再就職先も、計画もなく会社を突然辞めてしまうと、失業手当はもらえません。
突然収入がゼロになり、そのまま路頭に迷うことになるかもしれません。
4、悪い評判が立ってしまう
同じ退職でも、しっかり事前通知や引き継ぎをした上で会社を辞めるのと、突然辞めるのとでは、会社側に与える印象は大きく異なります。
当然、後者の方が多くの人に迷惑をかけることになり、その文、印象も悪くなります。
ただ、印象が悪くなるだけなら、特に問題はないかもしれません。
しかし、世間は狭いので要注意。
- 突然退職したという情報が、同じ業界内で共有されてしまう
- 転職希望先の採用面接においても、前の会社の退職経緯について聞かれたりする
といったことはよくあります。
そして、意外と、噂は出回るものなのです。
「あいつを雇うのはやめておいた方がいい」
という話が出回ってしまうと、再就職のハードルも高くなるでしょう。
5、キャリアに影響する
- 「辛くなったら辞める」
- 「辞めたくなったら辞める」
このような癖が一度でもついてしまうと、同じようなことを繰り返しがちになります。
そうすると、短期転職を繰り返した履歴書になってしまい、再就職のハードルがどんどん上がっていきます。
そして、書類や面接で落ちまくると、最終的には働くこと自体嫌になり、無職のままになるということも十分想定できます。
自己都合退職でも慎重に
働き方の多様性が尊重される時代。
居たくもない会社にいつまでも居続けたり、やりたくない仕事をやり続けたりする必要はありません。
辞めたいと思って辞めるのも、働くあなたの自由です。
もちろん、早く会社を辞めることがプラスになることもあります。
しかし、退職には、それ相当のリスクと責任が必ず伴います。
辞めるにしても、不要な不利益を被らないよう、可能な限り計画的に進めましょう。