どんな仕事、職業でも、「辛い」と感じたりストレスを抱えたりするもの。
そして、「感情労働」と呼ばれる特殊な仕事に従事している人は、誰よりもその影響を受けやすいとされています。
ここでは、感情労働の意味を踏まえた上で、そこで従事する人が直面しやすい問題と、雇用主に求められる取り組みについて解説します。
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感情労働とは?
労働には、大きく3つの種類があります。
- 土木、建築業など身体を使う「肉体労働」
- エンジニアなど頭を使う「頭脳労働」
- サービス業に多い「感情労働」
の3つです。
今回のテーマである「感情労働」とは、相手を満足させたり、喜ばせたりするために、自分の感情をコントロールしたり、時には笑顔を作るなどして演技したりすることが求められる仕事です。
肉体労働、頭脳労働は昔から使われてきた言葉です。
一方で、感情労働は比較的新しい概念と言えるでしょう。
これは、アメリカの社会学者、H・R・ホックシールド氏によって提唱されたものです。
感情労働が多い業界としては、
- 接客を伴うサービス業
- 医療
- 教育
- 芸能
などが含まれます。
具体的な職種としては、
- ショップ店員
- 客室乗務員
- ホテルスタッフ
- 医者
- 教師
- 保育士
- 受付
- カスタマーサービス
- タレント
- 俳優
などが挙げられるでしょう。
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感情労働で従事する人に起きやすい問題
それでは、感情労働に従事する人が直面しやすい問題についていくつか見ていきましょう。
ストレスが溜まりやすい、回復しにくい
感情労働をしている人は、他の業界で働く人よりもストレスに晒される機会が多いもの。
そして、そのストレスが蓄積しやすいとされています。
特ショップ店員などの接客サービス場合は、客からクレームを言われたり、理不尽な扱いを受けたりするがあります。
しかし、嫌な気持ちになったりしても、それを表に出すことは認められません。
感情を抑えながら仕事をしなければならないため、よって、どんどんストレスが蓄積されていきます。
回復が間に合わないのです。
仕事に対する満足感、充実感がだんだん無くなっていく
サービス業の従事者は、顧客、消費者のために、仕事に対して誠実に取り組んでいるもの。
しかしながら、理不尽な扱いを受け続けると、ストレスが溜まるだけではありません。
仕事に対する満足感や充実感も徐々に薄れていってしまうのです。
たとえ、それが自分の好きな仕事であっても、それは変わらないとされます。
好きだった仕事のはずが、嫌になって離職してしまうことも珍しくありません。
ある日、突然、燃え尽きてしまう
感情労働は、他の業界に比べて、ある日突然働けなくなってしまう「バーンアウト」。
いわゆる、「燃え尽き症候群」に陥りやすいとされています。
一度バーンアウトになってしまうと、多くの場合、休職や離職を余儀なくされます。
元の状態に戻るためには専門的な治療を受けなければなりません。
復職までに多くの時間を費やすことになるでしょう。
企業に求められる感情労働従事者へのケアとは?
感情労働に従事している者が、上に挙げたような事態に陥ることを未然に防ぐには、雇用主が責任を持って適切なケアをしなければなりません。
そのための主な取り組みについて、具体例を見ていきましょう。
1. 専門家によるメンタルケアやストレスチェックの実施
一番効果的な対策は、産業医やカウンセラーなど、専門家の力を借りること。
- ストレスを抱え込まないための研修
- 定期的なストレスチェックの実施
など、早い段階から対策しておけば、バーンアウトの発生などを未然に防ぐことができます。
2. コミュニケーションの機会を増やし、不満や愚痴を聞く
また、感情労働をしている人とのコミュニケーションの機会を増やすことも、必要なケアの一つです。
何気ない話題で構いません。
少しでも話し相手になってあげたり、不満や愚痴を聞いてあげたりしましょう。
そうすることで、精神的に楽になり、ストレスでダウンしてしまう事態を防げます。
3. ストレスを発散できる場や、レクリエーションなど息抜きの機会を設ける
その他にも、
- 十分な休憩時間を与える
- レクリエーションなど息抜きできる機会を積極的に設ける
- リフレッシュできる長期休暇を与える
といった、基本的な対策も大切です。
例えば、
- 充実した有給休暇制度を導入する
- 心と身体を同時にリフレッシュするための福利厚生を整備する
- 一定期間仕事と距離を置けるような仕組みを作る
といった施策には、一定の効果が見込めるでしょう。
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感情労働従事者を上手にケアしよう
感情労働している人の多くは、自ら進んでその職を選んでいるケースが多いもの。
そして、仕事に対して大きなやりがいを感じていたり、真摯に、真面目に打ち込んでいたりする傾向にあるのも特徴。
そのため、知らぬ間にストレスが蓄積され、表面化した時には手遅れにである程精神を病んでいることも少なくありません。
そうなる前に、マネジメントする側が、早い段階から適切なケアを講じ、働きやすい環境を整備することを努めましょう。