アルバイトやパート、派遣社員などの、有期雇用契約。
様々な働き方があれど、これらの雇用契約には、常に雇い止めに合う不安が付き纏います。
その不安を取り除くための制度があります。
ここでは、非正規社員で、正社員への転換を目指す方向けに、有期雇用の無期転換ルールについて、その概要やメリット、注意点について解説していきます。
有期雇用の無期転換ルールとは?
有期雇用の無期転換ルールとは、同一使用者の下で、有期労働契約の更新が繰り返しなされ、通算5年以上経過した際、労働者の希望で、契約期間が定められない無期雇用契約を結べる制度です。
2013年から始まりました。
厚生労働省も無期転換ルールについて説明したポータルサイトを設けています。
これは、主にアルバイトやパート、派遣社員が対象。
条件を満たせば、本人の希望次第で契約期間を無期にできるというものです。
目的とメリット
実は、有期雇用労働契約で働く人のおよそ3割が、長期間、同じ契約のまま働き続けているという実態があります。
要するに、常に雇い止めの不安を抱えながら働いているということなのです。
契約期間を無期に転換することで、その不安は解消されるでしょう。
更に、モチベーションアップや、労働スキルの向上も図れます。
労働者だけでなく、使用者にも雇用の安定化、人材の確保などのメリットがあります。
無期転換するための3つの条件
しかし、非正規社員、有期雇用契約者なら誰でも適用されるわけではありません。
以下の3つの条件を、必ずクリアする必要があるのです。
1、契約更新が1回以上実施されている
有期契約の場合、基本的には1〜2年がほとんど。
中には契約期間が比較的長期的なケースもあります。
いずれにせよ、契約更新が1回以上行われていることが、クリアすべき一つの条件です。
2、同一の使用者の下で契約更新している
同一の使用者の下で契約更新することも非常に重要なポイントです。
ここで言う「同一の使用者」とは、「同一の法人格」と言う意味です。
たとえ、契約更新ごとに職場や部署が変わったとしても、同一の法人の下で働いているのであれば、無期転換の対象となります。
一方、たとえ同じグループ会社であっても、使用者、つまり法人格が異なる場合は、この条件をクリアできません。
また、派遣社員の方で、派遣元会社において有期雇用で働いていた社員が、派遣先で直接有期雇用された場合も、使用者は異なるため対象外となります。
3、契約更新を経て5年以上働いている
以上、まずは、上記の2つの条件をクリアする必要があります。
その上で、全ての契約期間を合算した年数が5年超必要。
つまり、5年を超えたタイミングで、無期転換の申し込みができるのです。
有期雇用の無期転換ルールの注意点
将来的に無期転換を希望する方は、以下の点について注意しましょう。
1. 雇用主側から案内がない場合もある
無期転換はあくまでも労働者の任意によるもの。
そのため、使用者が積極的に勧めてくるケースは極めて稀だと言えるでしょう。
最初に結ぶ契約書に、無期転換について記載されているケースもあります。
しかし、実際は、記載されていないことの方が多いでしょう。
また、雇用主側からの案内されないこともあります。
そのため、無期転換制度について自ら知ることはもちろん、契約更新の回数や通算年数についても把握しておく必要があります。
そして、自発的に、適切なタイミングで申し込むことが重要です。
2. 待遇面は転換前と原則同じ
この制度は、あくまでも契約期間を有期から無期に転換するためのもの。
そのため、転換したからといって、待遇が変わるという保証はありません。
福利厚生が充実することはよくあることかもしれません。
しかし、
- 給料が上がる
- 各種手当がもらえる
といったことは稀でしょう。
事業者によって、当然その内容は異なってきます。
3. 無期転換=正社員化とは限らない
よく勘違いされますが、無期転換は正社員化ではありません。
就業規則や労働契約に記載されていない限り、無期転換後も転換前と同様の雇用区分、条件で働くことになります。
そのため、
- 有期契約を無期契約に転換すると残業をさせられる
- 残業が増えて辞めにくくなる
と言ったことも、よくある誤解と言えます。
4. 証拠が残るよう書面で申し込む
無期転換の申し込み方法に、特に決まりはありません。
電話や口頭で「無期転換したいです」と言うだけで、基本的には応じてもらえるはずです。
しかし、口頭だと、後から「言った、言わない」のトラブルに陥ることもあります。
なるべく証拠が残るよう、メールなどの書面で申し込みましょう。
5. 契約終了前に申し込む
無期転換を申し込むタイミングは、通算の契約期間が5年を超え、現在の雇用契約が終了する前が理想的。
もちろん、雇用契約が終了した後でも申し込みは可能です。
しかし、その場合、手続きが複雑になり時間がかかってしまうこともあります。
必ず契約終了前に申し込むようにしましょう。
有期雇用の無期転換ルールを活用しよう
無期契約に転換することに、過度に希望を持ち過ぎない方が良いかもしれません。
給料が上がったり、正社員になれたりするとも限らないのです。
一方、雇い止めをされる心配が減るなど、精神的負担が減り働きやすくなるのは確か。
責任が大きくなる、残業させられると誤解し、転換をためらう人もいます。
しかし、あくまでも契約期間が無期になるだけで、その他労働条件が改悪することは基本的にないはず。
安定的な雇用を希望する人は、チャンスが来たら積極的に申し込みましょう。