限定正社員制度とは?活用するメリットと課題

正社員は安定が確保される、と多くの人が認識しています。

一方で、「自由が奪われる」というイメージもあるようです。

転勤、異動、残業、意に沿わない飲み会、イベントへの参加の強制、等々。

しかし、「限定正社員制度」が始まったことで、その認識は変わりつつあります。

ここでは、限定正社員制度の概要を踏まえた上で、企業、社員双方にとってのメリット、デメリットについて解説していきます。

【参考】社内転職制度とは?メリット、デメリットと運用のポイント

 

限定正社員

 

限定正社員とは

限定正社員とは、主に地域(勤務地など)、職務、勤務時間など、勤務条件をあらかじめ定めた上で、正社員として働いてもらうための制度です。

端的に言うと、一般的な正社員と非正規雇用との働き方の間を取ったような制度。

実は、

  • ライフワークバランスの充実
  • 優秀な人材の確保、定着

を目的として、以前から国によって推進されていた取り組みの一つでもあります。

しかし、働き方が多様化してきた今、改めて注目を集めています。

【参考】出向とは?左遷とは限らない!メリット・デメリットは

 

限定正社員の企業側にとってのメリット

限定正社員制度は、社員のための制度というイメージが強いかもしれません。

しかし、実はそれを導入する企業側にも多くのメリットがあります。

 

1. 人材を確保しやすくなる

優秀な人材、会社が求めている人材がいても、候補者が希望する働き方ができない場合、どちらかが妥協する必要がありました。

会社側が諦めるか、もしくは、候補者に我慢してもらうか。

しかし、限定正社員を活用すれば、

  • 「正社員として働きたいけど子育てもしたい」
  • 「副業したい」

と言った様々なニーズに対して柔軟に対応できます。

そのため、人材を確保する上での選択肢が増えると言えます。

 

2. 有期雇用社員を無期雇用社員にするための受け皿になる

今の時代、有期雇用の形態で働いている社員も少なくありません。

そして、企業には、同じ職場で5年以上働いている有期雇用社員本人が、無期雇用社員への転換を希望する場合、それに応じる義務があります。

これは、労働基準法で定められているものです。

しかし、転換を希望する社員は、勤務地や勤務時間など、働く条件の限定を希望してくるパターンが多いのが実情。

そこで、その受け皿として、この制度を活用することも可能なのです。

 

3. 社員のエンゲージメントのアップ

他にも、限定正社員制度は個人の都合や状況に合わせるための打ち手になります。

働きやすかったり、社員として扱われたりすることで、会社に対する忠誠心も上がります。

不満が出にくくなり、やる気を出して働いてくれるでしょう。

【参考】正社員になるべき?自由と安定、どちらを取るか

 

限定正社員の企業側にとってのデメリット

 

1. 人事面で人を動かせなくなる

一方、限定正社員にすると、人事面で容易に人を動かせなくなる可能性があります。

契約時に結んだ条件を、実際に働き始めた後に変更することは原則、認められません。

そのため、

  • 他の部署で人手不足が発生した
  • 転勤してほしい
  • 他の職務を担ってほしい

という状況になったとしても、融通がききにくいでしょう。

【参考】レイオフとは?社員にも利点が?目的や注意点を解説

 

限定正社員にとってのメリット

また、限定正社員として働く側にも、多くのメリットがあります。

 

1. 想定外の転勤や出向、残業過多の不安が少ない

通常の正社員の場合、会社の指示や辞令に応じて動かなければなりません。

  • 勤務地を変えさせられる
  • 出向させられる
  • 部署を異動させられる
  • 残業が多くなってしまう

といったことも起こり得るでしょう。

そして、その結果、家族に迷惑をかけたり、何度も転居を強いられたりすることも。

しかし、条件を限定して契約を結べば、そのような不安を抱えながら働く必要はなくなります。

 

1. 自分の好きな分野でとことんキャリアを積める

通常の正社員として働く場合、興味のあることや自分のやりたい仕事があっても、どの職種に着くかは、原則として会社側の判断で決められます。

しかし、「職種」を限定すれば、話は別。

自分の好きな分野に限定しておけば、とことん専門性を高められます。

やりたいことをやるためだけに、わざわざ転職する必要もありません。

 

2. 育児や副業などがしやすくなる

その他にも、

  • 育児や子育てしながら正社員として働きたい
  • 正社員だけど副業するための時間も欲しい

といったことも、可能になります。

限定正社員でも正社員であることには違いありません。

そのため「安定」を維持しながら、柔軟な働き方を実現できる可能性もあるでしょう。

【参考】特別休暇とは?法定休暇との違いやユニークな事例

 

限定正社員にとってのデメリット

 

1. 給料が安くなりがち

限定正社員の場合、普通の正社員よりも給料が安くなる傾向にあります。

勤務時間を限定する場合には、そもそもの勤務時間が少なくなるため当然かもしれません。

しかし、他の条件を設定する場合でも、普通の正社員との待遇のバランスを維持するために、給与額が抑えられるのが一般的です。

その点については、契約を結ぶ際に注意しましょう。

 

2. キャリア上の選択肢が狭まる

限定正社員として一度働き始めると、逆に、可能性の幅は狭まるかもしれません。

  • もっと勤務時間を増やしたい
  • 勤務地を変えたい、転勤したい
  • あの職種にチャレンジしてみたい

と思ってもその要望はなかなか認められません。

その点については留意しておく必要があるでしょう。

【参考】役職定年制とは?役職任期制との違いやメリット・デメリット

 

限定正社員制度をうまく活用しよう

限定正社員は、正社員と非正規雇用のいいとこどりをした制度とも言えます。

正社員として働きながら副業したい

子育てと両立したい

就職のために引っ越したくない

など、様々なニーズに対応できます。

一方、デメリットや注意事項も少なくないのが実際のところ。

メリットを最大限に活かせるように、上手く活用していきましょう。

【参考】メンター制度とは?定番になった仕組みのメリットと注意点は

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