社内転職制度とは?メリット、デメリットと運用のポイント

社内転職制度、について聞いたことがある人は少なくないかもしれません。

筆者がかつて勤めていた会社でも、社内公募に近い仕組みがありました。

このご時世、

「型にはまった働き方から脱却させ、活躍の場を広げたい!」

と考える社員や、会社が増えるようになってきています。

終身雇用が実質的に崩れた今、スキルの幅を広げることは最早時代の要請かもしれません。

そんな中、社内転職制度は、従業員にとってはもちろん、会社にとっても、メリットとなる可能性を秘めています。

ここでは、社内転職制度の概要やメリット、デメリット、運用のポイント等について解説します。

【参考】メンター制度とは?定番になった仕組みのメリットと注意点は

 

社内転職制度

 

社内転職制度とは?

社内転職制度とは、社員が社内で部署や職種を変えたり、同じ企業の別の拠点や支社に異動したりできるようにする仕組みを指します。

会社側からの指示や辞令で為される人事異動とは異なり、社員の意思が尊重されるのが特徴。

  • 今の環境に満足していない
  • 更なる成長を目指したい

そのような社員が自分に合った環境で働けるようになることから、エンゲージメントのアップや離職の防止が見込めます。

【参考】通年採用とは?新卒一括採用との違いやメリット、デメリット

 

社内転職制度のメリット、デメリット

社内転職制度は社員のための制度というイメージがあります。

しかし、実はそれを導入する企業側にとっても多くのメリットが期待できます。

 

カルチャーが崩れにくい

部署や職種、一緒に働く同僚や上司が変わったとしても、基本的には同じ企業内での異動。

そのため、職場環境や雰囲気がガラリと変わることはほとんどありません。

異動に伴う精神的負担が軽減されるだけでなく、すぐにカルチャーフィット出来るという点が社内転職制度の最大の魅力です。

これは、個人だけではなく、企業にとってもメリット。

社外からの転職の際に生じるカルチャーフィットのリスクを、高確率で避けられます。

 

キャリアチェンジがそのまま会社の成長につながる

一般的な転職やジョブチェンジは、社員本人にとってはプラスになる可能性があります。

しかし、企業にとっては人材が流出するということで、ネガティブな影響に語られがち。

(※もちろん、リストラの場合は別です)

一方、社内転職の場合、社員のキャリア形成や成長がそのまま会社の成長に繋がります。

よって、社員、企業双方にメリットがある制度と言えます。

 

社内交流やコミュニケーションが活発化する

部署や職種が変われば、当然新しいチーム、新しい環境で働くことになります。

今まで同じ社内にいながら、一度も関わったことのない人とも働く機会が生まれます。

その結果、社内交流、コミュニケーションが活発化し、人脈が広がることが期待されます。

社員同士のつながりが強化されれば、部署間の連携は強化される傾向にあります。

これは、企業にとっても大きなメリットと言えるでしょう。

 

人材流出のリスクを減らせる

このご時世、多くの社員が、

  • 何か新しいことにチャレンジしたい
  • 環境を変えて働きたい

と希望しており、常に様々な可能性を模索しています。

一方で、人間関係に悩み、「今の環境から逃げ出したい!」と思っている人も多数。

多くの場合、それを実現しようとすると、他の企業に転職せざるを得ません。

しかし、社内転職制度を導入すれば、雇用を継続したまま従業員の希望を叶えられます。

そのため、優秀な人材が流出したり、人手不足に悩まされたするリスクは大幅に減ります。

新規の人材を採用する必要性も減るため、採用コストや手間も削減できるでしょう。

 

それでは、ここからは、デメリットについて見ていきましょう。

 

適性を考慮しづらくなることがある

人事は、適性を考慮しながら人材配置を行います。

しかし、「手を挙げる人」と「人事が任せたい人」が同じになるとは限りません。

例えば、人事が「あの人に広報を任せたいんだけどな」と思っても、当人が手を挙げず、他の人達が大勢手を挙げている、という状況になると、人事の采配は難しくなります。

勿論、辞令によって、「手を挙げていないけど向いてそうな人」を充てることは可能です。

しかし、皆の希望とは異なる采配が不満の種になることを躊躇し、適性を考慮した判断がしづらくなることがあります。

 

落選した社員が不満を抱える、モチベーションが下がる

当然ですが、部署によって、上司によって、人気/不人気の偏りはどうしても生じます。

そして、人を異動させるにも、組織のバランスを考慮しながら進めなければなりません。

よって、特定の部署に人気が集中したら、選考しなければならなくなることもあります。

となると、制度はあれど、希望を叶えられない社員が出てきてしまいます。

希望通りに異動ができなかった社員は、落とされたというショックを抱え、会社側に対する不信感に繋がってしまうこともあります。

「採用された」「落とされた」が発生すると、社内の人間関係の刺になることも。

場合によっては、失意のまま他社に行ってしまうこともあるでしょう。

 

「やりたいこと」と「向いていること」が一致するとは限らない

社内転職制度は、原則として社員の意思が尊重されるもの。

しかし、「やりたいこと」と「向いていること」が常に一致するとは限りません。

ある部署で優れた活躍を見せていた社員でも、他の部署で同じように活躍できるかどうかは、やってみなければ分からないのです。

「希望通りに異動させてみたけど、全然ダメ」ということも、起こり得ます。

そうなると、元の部署、異動先の部署、両方のパフォーマンスが落ちてしまいます。

そして、「向いてないけど、やりたいことが出来て満足している社員」を、そこから引き剥がすのも、なかなか難しいかもしれません。

【参考】社内失業とは?発生原因や効果的な対策・予防策について解説

 

運用のポイント

社内転職制度をより有意義に運用していくため、以下の2つのポイントをしっかりと押さえておきましょう。

 

人事の采配を主流から外さない

社内転職制度は、あくまで「そういう道もあるよ」という程度に留めることが重要です。

上で述べたように、人や業務には、

  • やりたい/やりたくない
  • 人気/不人気
  • 向き/不向き

がどうしても生じてしまいます。

過剰に皆の意向を反映させようとすると、組織に歪が生じてしまいます。

そのため、あくまで社内転職制度は「例外的な」ものに留め、人事の采配が主流になるようにしておくことが肝要です。

 

希望通りにならなかった社員をしっかりケアする

上で述べた通り、「制度があるのに、希望が叶えられなかった」というのは、当事者の心境に少なからぬネガティブな影響を与えます。

希望通りにならなかった社員のネガティブなを少しでも緩和するために、密にコミュニケーションを取り、しっかりとケアすることが重要です。

【参考】エンプロイージャーニーマップとは?作成手順や注意点を解説

 

まとめ

社内転職制度とは、勤め先を変えずに社員のキャリア形成やスキルアップを見込める非常に画期的なシステムの一つ。

しかし、「逃げ」に使われることもあり、皆が前向きな動機で利用するわけではありません。

また、希望通りに行かなかった際に社員の際不満を買うこともあります。

メリット、デメリットをしっかりと踏まえながら、導入を検討していきましょう。

【参考】早期離職の防止、どうすればいい?考えられる原因と対策3つ

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