「役職定年制のせいで、給与が下がった」
という話を、見聞きしたことがある人は少なくないかもしれません。
「でも、それってどういうこと?」
「役職定年制ってそもそも何なの?」
そう思う人も少なくないかもしれません。
今回は、役職定年制と、それとしばしば並べられる役職任期制について、それぞれの特徴を踏まえた上で、双方のメリット、デメリットについて解説します。
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役職定年制とは?役職任期制と何が違う?
会社には、主任、係長、課長、部長など、様々な役職があります。
そして、その役職の在任期間を決める方法は、大きく2つあります。
- 役職定年制
- 役職任期制
の2つ。
その内、役職定年制とは、一定の年齢に達するまで、社員に特定の役職を任せ、任期満了と同時にその役職から外すことです。
一方、役職任期制では、年齢は関係ありません。
あらかじめ一定期間の任期を設けて社員に役職を任せ、任期終了後は、在任時の働きぶりや評価、成績によって再任、公職、昇進、異動を決定することです。
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役職定年制と役職任期制のメリット
それでは、役職定年制と役職任期制、両者のメリットについて見ていきましょう。
まずは役職定年制について。
人事計画を立てやすい
役職定年制の一番の魅力は、あらかじめ各役職の退任時期が明確であること。
そのため、人事計画を立てやすくなることです。
退任する時期が分かっているだけに、ポストが空く前に、次に登用すべき社員の人選や体制づくりに十分な時間をかけられます。
そのため、退任に伴う混乱が生じにくいというメリットがあると言えるでしょう。
ポストを狙う社員の競争意識が高まる
また、役職定年制では、一定の時期になればポストが必ず空くことが分かっています。
そのため、空く予定のポストを狙う社員達がパフォーマンスを競うようになります。
上が詰まっていていつまで経っても席が空かないと、下のモチベーションは上がりません。
組織が硬直化し、将来有望な若手から抜けていくことになりかねません。
それでは、役職任期制のメリットについても見ていきましょう。
成果主義の実現
役職任期制の最大のメリットは成果主義を実現させやすくなることです。
社員は、あるポストに登用されたとしても、成果を出し続けなければ、そこに留まり続けられません。
もちろん、成果を出さずしては、より上のポストに就くことも困難になります。
そのため、以前よりも、より成果や結果に拘るようになります。
成果主義的な制度と併せて導入することで、より効果を発揮するでしょう。
人件費の適正化
成果主義を実現できれば、これまで無駄に費やしていた人件費の削減にもつながります。
勤続年数や年齢ではなく、仕事や成果で賃金が決まるようにすることで、人件費を適正化でき、同時に社員の仕事に対するモチベーションをアップさせることもできるでしょう。
組織の肥大化を防げる
役職任期制は、その性質上、処遇のためだけに新たなポストを設置する必要はありません。
そのため、ポストの増加による組織の肥大化も防止できます。
大企業でよく見かける「部下のいない部長」や「担当部長」という、謎のポスト。
処遇だけのためにポストを作り出していると、何をやっているのか分からない人や組織がどんどん増えていきます。
役職任期制にしてポストの数を抑えれば、組織がシンプルになり、業務のスピードも速まります。
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役職定年制と役職任期制のデメリット
それでは、役職定年制のデメリットについて見ていきましょう。
就任後のモチベーション低下
一般的に、役職定年制の場合、一度そのポストに就いてしまえば、よほどの不祥事や問題を起こさない限り外されることはありません。
しかし、考え方によっては、早い段階でキャリアに「あがり」が来てしまうとも言えます。
人間、天井が見えてしまうと、貪欲に成果を求めなくなってしまうもの。
就任が決まった段階で、急にやる気が失せてしまう、ということが起こり得るのです。
退任後の扱いが難しくなる
任期満了と同時にそのまま定年退職という流れは、企業にとって都合が良いかもしれません。
しかし、定年に達しない社員が役職定年になる場合、そう都合よくはいきません。
役職定年制の場合、任期満了した社員に適切な処遇を行わないと、不満に繋がります。
役職定年した人が、その後どうなるのか。
会社に、どう扱われるのか。
それは、当の本人だけでなく、若手だってよく見ているのです。
体面を維持させたままポストから下ろすというのは、そう簡単ではありません。
それでは、役職任期制のデメリットについて見ていきましょう。
精神的負担の増大
当然ですが、ポストを任されることは、同時に大きな責任を伴うことになります。
ましてや、任期制の場合、その働きぶりによって今後の処遇が決定するため尚更です。
それをうまく原動力に変えられれば良いですが、誰もがそうできるとも限りません。
プレッシャーやストレスなど精神的負担が増大すると、逆にパフォーマンスが落ちてしまうこともあります。
優秀な社員が埋もれてしまう可能性も
社員によっては、すぐに結果は出せなくとも、時間をかければ一定の成果を収められるケースもあります。
しかし、任期制では、決められた一定の期間内に成果を出すことが求められます。
そのため、場合によっては優秀な社員がその仕組みによって埋もれてしまいかねません。
頻繁な交代によって社内に混乱が生じることも
また、任期制の場合、評価によってポストの在任期間が異なるということも起こり得ます。
そのため、頻繁に人の入れ替わりが発生することも珍しくありません。
部署の風通しを良くするという点では魅力的ですが、あまりにもその頻度が高いと社内の混乱に繋がることも。
あまりクルクル人が入れ替わらないように注意しなければなりません。
【参考】社内転職制度とは?メリット、デメリットと運用のポイント
まとめ
現在、国内の企業のほとんどは役職定年制を採用しているとされます。
しかし、個人のスキルや能力で評価する成果主義の普及に伴い、これからは役職任期制を採用する企業が増えてくるかもしれません。
双方のメリットやデメリットを十分に考慮した上で、導入を検討するようにしましょう。