思わぬ形で普及したテレワーク。
「好きな場所で仕事が出来る用になった!」と喜んでいる人達ばかりではありません。
従来よりも社員一人一人のパフォーマスが可視化されるようになり、戦々恐々としている人も少なくないのです。
そして、それによって、実質的な「社内失業」状態の実態も見えてきました。
今回は、社内失業の意味を踏まえた上で、なぜそのような問題が起きてしまうのか、主な原因や対策を紹介します。
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社内失業とは
社内失業とは、正社員として雇用されているのにもかかわらず、仕事をしていない、仕事が無い状態を指します。
また、そのような人を社内失業者、社内ニート、窓際族と呼ぶこともあります。
エン・ジャパン株式会社が実施したある調査によると、予備軍も含めると、各企業において社内失業者は全体の2割以上を占めるとのこと。
従業員が1000人以上の大企業では41%にも達しているという結果が出ました。
実は、社内失業は以前から社会問題の一つとして公然と話題にされるテーマでした。
しかし、近年のテレワークの普及により、雇用されているのに仕事をしない人が改めて浮き彫りになったことで、注目されることとなっています。
社内失業者がいることに企業が気づけなかったり、黙認していたりすると、
- 真面目に働いている社員からの反発が出る
- 他の社員のモチベーションが下がる
など、様々な弊害を生み出してしまいます。
ゆえに、極力早期に解決することが求められると言えるでしょう。
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社内失業が起きる主な原因
そもそも、なぜ雇用されているのに社内失業状態になってしまうのでしょうか。
ここでは、その主な原因について考えていきましょう。
当人に能力がなさ過ぎ、成長意欲もない(本人の問題)
まず、当人の仕事のスキルが低過ぎて、仕事が回ってこない、といったことがあります。
かといって、仕事を覚えよう、スキルアップしよう、という成長意欲もない。
これは明らかに社内失業者の本人の問題です。
最初は上司や同僚がアドバイスや指導をしていたとしても、本人に全くやる気が見られない場合には途中から見限られてしまうこともあります。
結果として、少しずつ、社内失業者になっていってしまいます。
教育が不十分、配置が不適切(会社の問題)
たとえ本人にやる気があっても、本人の力ではどうしようもないこともあります。
- 教育が行き届いていない
- スキルや能力に合った適切な仕事が割り当てられていない
- その状況に気づかない
といった具合に、会社側にその原因がある場合もあります。
特に多くの従業員を抱える大企業の場合、社員一人一人の能力について、書面上の情報しか把握できていないことも少なくありません。
その結果、企業が社内失業者を生み出してしまっている、といったこともあるのです。。
ビジネス環境の変化、必要スキルの多様化(社会の問題)
また、労働者を取り巻くビジネス環境の変化も社内失業者が増えている一因と言えます。
テレワークや業務のデジタル化が進み、求められるスキルも日々進化しています。
特に年配の社員など、ITに疎い社員はその変化について行けないかもしれません。
結果として業務を上手く回せなくなり、社内で厄介者扱いされてしまうこともあるでしょう。
簡単に解雇できない(法の問題)
たとえ、社内失業に陥った社員がいたとしても、会社に大きな損害をもたらしたり、不祥事を起こしたりしない限り、現行の労働法を踏まえると簡単には解雇できません。
辞めせようと圧力をかけてしまうと、パワハラだ、モラハラだと逆に訴えられるリスクも。
そうなると、問題がより複雑化してしまうため、注意が必要となります。
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社内失業を防ぐための対策
それでは、社内失業者にしない・減らすための対策について、いくつか見ていきましょう。
適切にトレーニングを施す
「成長意欲がない」とされる人の中には、「どうすればスキルアップできるのか分からない」という人もいます。
上司や先輩から学ぼうにも、相性もありますし、その上司や先輩に教えるスキルがあるかというと、それはまた別問題。
そのような場合は、企業が適切にトレーニングの場を与えなければなりません。
しかし、トレーニングを与えると言っても、対象の社員に自ら学ぶ姿勢がなければダメです。
学ぶ方法と、自ら学ぶことの重要性を伝えて、成長するチャンスを与えてみることです。
雇用関係を解消し、社員をフリーランス化をする
「飛び道具」的な対策です。
具体的には、
- 会社と社員という雇用関係は一旦解消
- 新たに業務委託(フリーランス)として契約を結ぶ
そして、それによって、成果主義で仕事や報酬を振り分けるという制度です。
最も効果的な対策の一つとして、社員のフリーランス化が挙げられます。
実は、最近、電通やタニタなど一部の大手企業で導入された制度。
電通の場合、競合他社以外なら他の企業との業務委託契約を結ぶことも許されています。
実質的に、「自由に副業してください」に近いようなイメージですね。
また、雇用契約ではないので、他社との業務委託契約が主流になれば、徐々にフェードアウトしていくこともあるかもしれません。
退職金を割増にする
また、退職金を通常よりも割増で設定し、自発的な退職を促すことも有り得るでしょう。
この場合、退職金を受け取って辞めるか、留まるか、その選択肢が社員に与えられます。
そのため、一方的な退職勧告やリストラよりも事が運びやすくなるのは事実。
しかし、これは特定の社員を狙い撃ちにすることができないというのが難点です。
「辞めて欲しくない社員に辞められた」という話も良くありますので、慎重に進めなければなりません。
退職勧奨する
そして、最終的な手段は、退職勧奨。
退職勧奨とは、企業が社員に対して会社を辞めてほしいという意向を直接伝え、退職を勧めることです。
退職勧告しても、双方の合意がない限り労働契約の終了にはなりません。
しかし、かといって、問題を放置するわけにもいきません。
本人の意思を確認しながら、弁護士と相談しながら、慎重に進めていくことが重要です。
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まとめ
社内失業の原因は、やる気の無さ、成長意欲の無さ等、社員個人にあるケースが大半。
しかし、
- 適切な役割や仕事を与えていない
- 十分なトレーニングを行っていない
- 人事業務に不十分な点がある
など、少なからず企業にも責任はあります。
社内失業者を出さないための策も必要ですが、既にその問題が発生している場合には、なるべく早めに対策を講じていきましょう。