一般的にコネ採用と呼ばれる「縁故採用」。
世間一般でのイメージは決して良くないように思われます。
しかし、なくならないどころか、そのための枠を持っている企業がいるという噂も。
「温情で採っている」というだけでなく、企業にもメリットがあるのでしょうか。
今回は、縁故採用がよくある業界や、企業にとってのメリット、デメリットについて詳しく紹介します。
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縁故採用とは?
縁故採用とは、社員の個人的な伝手を利用し、血縁者や友人、知人などを紹介してもらって人材を採用することを指します。
いわゆる「コネ入社」、「コネ採用」と呼ばれるものです。
社員の知人や友人だけでなく、取引先や得意先の伝手を使うこともあります。
- 重要な取引先との関係強化
- コネクション作りや
- 他で雇ってもらえない親族の受け入れ
が主な目的となり、メインの採用方法とは別枠で人材を雇います。
多くの場合、正面から応募しても採用に至らない人が採用されます。
そういう意味で、能力を評価されての入社となる「リファラル採用」とは区別されます。
縁故採用の一般的なイメージとの違い
縁故採用は、
- 社長や役員などの親族が無条件で雇われる
- 重要なポジションと高い給与が与えられる
というイメージを持たれがちですが、必ずしもそうとは限りません。
実際は、縁故採用で雇われた者が社長の後継者として幹部ポストを占めたり、最初から重要なポジションを任されたりするケースは比較的レアだと言えます。
とは言っても、選考、給与の面で他の社員よりも優遇されるのは事実。
入社後は特段業務に支障がないところで、安定した給与をもらいながら働くというケースが多いでしょう。
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縁故採用がよくある業界
それでは、縁故採用がよく行われている主な業界について見ていきましょう。
大金が動くBtoB型のクライアントビジネス業界
まず挙げられるのが大きなお金が一気に動くBtoBのクライアントビジネス業界です。
例えば、
- 広告代理店(特に大手)
- テレビ関係
- 不動産
- 建設会社
- IT
- コンサルティング
といった業界では、縁故採用をよく耳にします。
- 有力なクライアントとの関係を維持するために社長の親族を入社させる
- 取材の元ネタやコネクションを作るために、各業界で影響力のある政治家や著名人の子息を入社させる
といったことが目的となります。
規制によって守られた業界
また、法律や規制によって守られた、
- 電力会社
- ガス会社
- エネルギー関連会社
- 通信インフラ会社
といった規制が多く、国とつながりますのある業界でも縁故採用がよく行われています。
総務省や、経済産業省、環境省の幹部や、関連する政治家の子息が多いのだとか。
出世した官僚の子息や、同じく各業界に影響力がある政治家の子息を入社させることによって、
- 国や省庁からの規制が緩くなる
- ちょっとしたことは見逃してもらえたりする
- 優遇措置を受けやすくなったりする
といったメリットがあるためです。
利権化しやすい業界
その他にも、地方の公務員や中小企業、教育機関など利権化しやすい業界でもよくあるとされます。
- 親が地元で有名な学校の校長で教育委員会との強いコネクションがある
- 親が影響力のある地元の議員である
といった場合、その子息や親族は親の顔利きによって採用されやすくなるのです。
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縁故採用のメリット、デメリット
それではまず、縁故採用を実施するメリットについて見ていきましょう。
取引先との関係強化ができる
大きなメリットとしては、取引先との関係強化ができるということです。
有力者の子息や親族を入社させれば、取引先、得意先との個人的な繋がりができます。
その関係を長期間保つことで、結果的に安定した利益に結び付いていきます。
公権力から受けるネガティブな影響、規制等を緩和できる
特に電力、ガス会社、通信インフラ会社は国や省庁など、公権力によって提供するサービスが制限されています。
しかし、裏を返せば、需要が安定しており、業界への新規参入もほぼないため、安定した業界でもあります。
そのような業界で、力のある役人や政治家の親族を自社に受け入れたり、優遇したりすれば、厳しい扱いを受けにくくなります。
公権力から受けるネガティブな影響を緩和できるのです。
それでは、デメリットについても見ていきましょう。
採用した人材の能力が低いと社内での扱いに困る
社長の親族などをコネ入社させることで、確かに取引などでは有利になります。
しかし、その人材が職務遂行において必ずしも優秀とは限りません。
仕事ができなかったり、要領が悪かったりしても、厳しい扱いにはしにくいのが実情。
パワハラで当の本人がやめてしまったとか、そういうことが起こると逆に問題になります。
そして、縁故採用で入社した本人が、それを笠に着ているようだと更に面倒。
任せられる仕事がなく、社内での扱いに困るというケースはよくあります。
正規ルートで入社した社員のモチベーションが低下する
もちろん、縁故入社でも仕事ができれば特に問題ありません。
しかし、全く仕事ができないにもかかわらず、贔屓したり優遇したりすると、正規ルートから入社した社員のモチベーションを低下させてしまう恐れもあります。
「あいつは全然仕事できないのに、親のコネで入社してるだから高給貰っているらしい。」
「俺たちはこんなに必死に働いているのに。」
そういう声が出て、不満や反発を買うことにもなりかねません。
そうなると、社内の雰囲気を悪化させてしまうこともあるでしょう。
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まとめ
縁故採用は、悪いことばかりではなく、企業にとってプラスに働くこともあります。
縁故採用するのであればメリット、デメリットを踏まえた上で、
- 本人の能力やスキルをどう活かすか
- 社内のデメリットにどう対処するか
といったことにも配慮しながら、慎重に進めていきましょう。