「みなし残業」という言葉に、ポジティブなイメージを持たない人は多いかもしれません。
みなし残業を実施している企業=ブラックと認識している人すらいるようです。
この制度は、生産性高く仕事が出来れば従業員にも大きなメリットになり得るのですが、注意しなければならないというのは否めません。
ここでは、みなし残業への理解を踏まえた上で、導入している企業に応募する際の注意点と、実態の見極め方について解説します。
みなし残業とは
みなし残業とは、就業規則にて予め決められた一定時間分の残業代が毎月必ず支払われる賃金体系を指します。固定残業代制とも呼ばれます。
通常、残業代は月毎の残業時間によって変動しますが、みなし残業を導入した場合、残業してもしなくても一定時間相当分の残業手当が一律で支給されることになります。
所定の残業時間を超過して働いた場合は労働基準法に則り別途手当が支払われます。
実は、「みなし残業」という言葉は通称であり、正式には「みなし労働時間制」という名称です。
事業所内労働と裁量労働
労働基準法第38条に則り、企業は労働者の勤務実態をしっかりと把握し、適切な賃金を支払う義務があります。
しかし、業種や業務内容によっては、それが困難な場合もあります。
そのような時に、みなし労働時間制が適用されます。
例えば、営業職の外回りなど、「事業所外労働」に該当する場合や、専門性が高く、クリエイティブな発想や企画の立案が求められる業務である「裁量労働」の場合、ただ単に労働時間によって賃金を決定するのは相応しくないことから、みなし労働時間制が適用されるのです。
みなし残業=ブラック労働?
みなし残業を導入している事業所はブラックだと世間で評されることがあります。
ネットを見ていると特にそうですが、非常にネガティブなものとして捉えられがちです。
しかし、問題視されるのは、所定の残業時間を超過した際、本来支払うべき手当を支払わなかったり不当に労働力を搾取したりする一部の企業や、みなし残業を適用すべき業務内容ではないのに、安く働かせるために見なし残業を導入しているようなケースです。
よって、単純に、みなし残業=ブラック、と決めつけるのではなく、実態をよく見極める必要があります。
【参考】実はブラック?転職サイトの求人の危険フレーズ3つと回避策
みなし残業を導入している企業に就職する際の注意点
とは言っても、その制度を悪用し不当に労働力を搾取しようとする企業があるのも事実です。
それでは、みなし残業を導入している企業に就職する際の注意点について見ていきましょう。
残業代の未払いが発生することも
冒頭でも述べた通り、制度を導入していたとしても所定の残業時間を超えて働く場合、その分の手当は支払われなければなりません。
たとえば、募集要項に「基本給〇〇万円(10時間分の残業代を含む)」と表記した場合、残業が10時間を超えた場合は、別途手当を支給します。
しかし、残業代込みの給料だからいくら残業しても給与は同じである、という誤った主張をして、しっかりと残業代を払わない企業が存在するのも事実です。
予想してたより給与が低い、と感じることも
また、働き手側もみなし残業についてあらかじめ十分な理解を深めておかないと、入社後に予想していたよりも給与が低い、と感じてしまうことがあります。
たとえば、以下のようなケースを想定して見ましょう。
- A社「月給25万円で諸手当は別途支給」
- B社「月給30万円(固定残業代を含む)」
両者を比較した際、一見B社の方が給与が高いように感じますが、残業時間や手当の内容によっては、A社の方が高くなります。
このように求人票の表記をあえて曖昧にして誤解させる企業もあるため、しっかりと見極める必要があるのです。
割増賃金適用の対象外になることも
通常、以下のような場合には、割増賃金が適用となります。
- 22時以降、翌日5時までの深夜勤務を実施した場合
- 1日の所定労働時間を超えた場合
- 休日出勤した場合
しかし、みなし残業が予め導入されている場合にはその適用外になることがあります。
企業からすれば人件費の削減になるためお得ですが、従業員の立場からすると損している感覚に陥るため、その点についても入社時に確認しておきましょう。
企業がみなし残業を適切に運用しているか見極めるポイント
みなし残業を適切かつ合法的に運用されているか見極めるためには、求人票や募集要項に、以下の3つが明確に記載されているか確認します。
- 固定残業代を除いた基本給の額
- みなし残業の相当時間数と金額、その計算方法
- 割増賃金の支払いの可否
これらの3つの記載が必ずされていることを確認した上で選ぶようにします。
まとめ
みなし残業を正しく運用している企業ももちろん存在しますが、その制度を悪用して労働力を不当に搾取しようとする悪質な例もあります。
そのため、どうしてもネガティブなイメージが先行しています。
しかし、収入が安定する、他の社員との不公平感の是正につながるなど、従業員にとってのメリットもあるのも確かです。
ブラック企業に引っかからないために、入社前に募集要項や求人票で記載されている内容をしっかりと確認した上で企業を選びましょう。