組織には、新しい人が出たり入ったりするもの。
どの組織にも、すぐに馴染んで定着する人もいれば、どうしても合わないと感じ、すぐに離れてしまう人もいます。
多くの場合、経営陣は新しく入った人に上手く組織に馴染んで定着して欲しいと思っています。
そして、それを実現するために、様々な企業が、様々な制度を導入しています。
そのような中で、外資系企業やコンサルティング会社、IT系の会社で定番になりつつあるのが、「メンター制度」。
組織に馴染むという目的はもちろん、様々な理由で、導入する企業が増えているのです。
ここでは、そのようなメンター制度について、概要とメリット、導入に当たっての注意点をご紹介します。
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メンター制度とは?
メンター制度とは、直属の上司や同じ部署の先輩ではなく、年齢や勤続年数が比較的近く、心理的距離が近いと思われる社員が、サポート役のような形で相談やアドバイス、全般的なフォローをする制度のことです。
メンター(Mentor)には、助言者、相談者という意味があります。
業務に直接的な利害関係のある相談、サポートを重視するエルダー制度とは異なり、人間関係からキャリア形成に至るまで、対象の個人的な問題や悩みに対し、効果的にアプローチできることが大きな特徴です。
注目される背景と目的
近年、働き方改革によってサラリーマンの転職が活発化し、人材の流動化が大きく進んでいます。
その一方で、新しく入った会社で社内トラブルに巻き込まれたり、ストレスを抱え込んで入社後直ぐに辞めてしまったりするようなケースも、決して珍しくありません。
そんな時代において、企業には、従業員の満足度を高め、人材の定着を促すことが重要な課題となっています。
しかしながら、従業員の満足度を高めるのは口で言うほど簡単ではなく、
「悩みを気軽に相談できる相手が職場にいない」
「直接的に問題提起すると業務において不利益を被りかねない」
と言った状況が頻繁に発生し、それが早期離職の原因にもなることもあります。
そんな状況に歯止めをかけるための一つの施策として、メンター制度が注目されているのです。
メンター制度のメリット
メンター制度導入によって、悩みを抱える若手社員にはもちろんのこと、メンターとして相談役を担う側の社員、そして社内全体にもメリットが生じます。
まず、メンター側に関して生じるメリットについて見ていきましょう。
①メンターとして相応しい社員になるための責任感が生まれる
まず、大きなメリットの一つとして、相談役たるメンターを担う社員側に責任感が生まれます。
部長や課長、係長など、本来、相談やサポート、指示をする役割の役職でない社員でも、メンターになればそれに相応しい社員になろうとする自覚や責任感を自然と持つようになります。
②自発的にキャリア形成やスキルアップのための意識改革ができる
責任感が生まれれば、メンターとして後輩社員のバックアップ業務を始め、従来の通常業務に対する姿勢も変わります。
そうなると、業務の質の向上や効率化も期待できます。
結果的にそれが自身のキャリア形成、スキルアップのための意識改革につながり、今よりも上の役職に就き本格的に指導する立場になった際にメンターとしての経験やスキルが役に立ちます。
次に、相談者側に関して生じるメリットを見ていきましょう。
③忖度なしで相談、悩みを打ち明けられる
実際に相談を依頼する若手社員は、忖度なしで気軽に悩みを打ち明けられるのが最大のメリットです。
通常業務に直接的な利害関係の無いメンターなら、まるで兄弟、姉妹のような感覚で業務に関するデリケートな悩みから、人間関係の不満やストレス、プライベートに関わることも相談でき、早期解決につなげられるでしょう。
「そんなに簡単に解決なんてしないよ」と思われる方もいるかもしれませんが、いいんです。
「ガス抜きが出来る」というだけで、心の持ちようは大きく違うものです。
④職場に早く馴染める、安心感が得られる
なんでも気軽に相談できる相手が身近にいれば、悩みを抱えて誰にも話せずに悶々とさせてしまうリスクが減ります。
また、身近に相談できる相手がいるだけで、入社後も職場に馴染みやすくなるでしょう。
具体的な不安や悩み事がなくても、気軽に相談できる人が直ぐ近くにいるだけで、安心感を持って業務に取り組めます。
新しい会社に昔からの友人が同僚としているような安心感。
そこまではいかずとも、安心感を与えることができるのは、大きいものです。
そして、社内全体に関して生じるメリットもあります。
⑤社内コミュニケーションの活性化
メンター制度を導入し、社員が気軽にいつでも相談→解決できるような環境が整えば、それだけで社内のコミュニケーションが活発化し、不安や悩み、ストレスを抱え続けて健康被害に陥る、離職するという状況を避けられます。
また、通常業務において普段関わらない社員をメンターとして社員に当てることで、部署、役職を超えた人間関係、メンタリングチェーンの構築もできます。
メンター制度導入時のポイントや注意点
それでは、制度導入時の注意点やポイントについて見ていきましょう。
①メンター側の業務負担が増えることへの配慮
制度を導入すれば、メンターを担う社員は通常業務に相談業務が加えられるため、当然業務量や負担は大きくなります。
その結果、従来の業務に支障が出たり、多忙化してしまっては本末転倒であるため、相談時間や実施頻度に関するガイドラインを予め制定し、配慮をしなければなりません。
一般的には、メンターと相談者が1ヶ月に1回、もしくは、2ヶ月に1度程度話す機会を設ける程度で十分でしょう。
モチベーションを維持しようと思ったら、相談業務の実施状況によってインセンティブを与えるのも一つの方法。
また、メンターが相談者とランチに行く費用を補助したり、するというのも一つの方法です。
②最適なマッチングができるようにする
効果的に社員の悩み解決につなげるためには、相談する側、受ける側の相性が非常に重要です。
ランダムに社員を充てがうのではなく、年齢や相性、性格等を考慮し、最適なマッチングができるよう企業側には努力が求められます。
相性の悪い相手がメンターになってしまうと、逆にストレスが増幅する要因になってしまいます。
メンターと相談者の個性を見極めながら、メンターをアサインしていく必要があります。
③メンターと相談者とで何を話しているかを詮索しない
相談者がメンターに何を話しているかを詮索してはいけません。
相談者がメンターに何を話しているかが上層部や経営陣に筒抜けになってしまうと、密告制度のようになってしまいます。
そうなると、メンターに安心して相談できなくなってしまうため、本末転倒になってしまいます。
相談者のみならず、メンターを担当する者にも、不信感が芽生えてしまうでしょう。
まとめ
メンター制度をうまく導入できれば、近年の社会問題の一つである新卒の早期離職の問題や、パワハラ、モラハラ等の社内問題の対処策として十分な効力を発揮できるかもしれません。
まずはお互いの信頼関係の構築、そしてメンター側に相談役としての適性や素質があることが前提とした上で、導入していきましょう。