働き方に関する話題に事欠かない昨今。
多くの会社が、様々な目的で新しい働き方の導入にチャレンジしています。
働き方は、社風や従業員の質によってフィットしたりしなかったりの振れ幅が大きく、試行錯誤を続けている会社も多いようです。
そのような中、今話題を集めている働き方として、ABWに注目が集まっています。
聞きなれないと思う方も多いかもしれませんが、この記事では、ABWについて、そのメリットや導入の心構えを紹介します。
【参考】長時間労働の定義や法的な規定は?放置するとリスクや弊害も
ABWとは?
ABWとは、Activity Based Workingの略で、業務内容に合った「働く場所」「働く時間」を従業員の裁量で決められる仕組みを意味します。
1990年頃、オランダのコンサルティング会社であるVeldhoen+Companyが提唱し、始まった働き方の一つで、「働く場所、時間、相手の選ぶ権利さえあれば人は最高のパフォーマンスをする」という理念のもと導入されました。
グローバル企業をはじめとして、日本国内でも少しずつですが、拡がりを見せています。
フリーアドレスやフレックスタイムとの違い
ABWはフリーアドレスやフレックスタイム等の要素を一部含みますが、それぞれ実施の目的が異なります。
フリーアドレスはあくまで社内における席の自由化、つまり、無駄なワーキングスペースの削減を。
フレックスタイムは従業員の勤務時間を柔軟にするための施策で、基本的には従業員、企業双方の合意のもと成り立つ仕組みです。
一方、ABWでは働き方や行動そのものの選択肢を従業員に与える施策であるため、必ずしもオフィスで勤務するとは限りません。
【参考】残業削減は時代の要請!今すぐ始められる取り組み4つを紹介
ABW導入のメリット、デメリット
ABWは従業員を優遇するための仕組みに見えることから、従業員側に大きなメリットがあり、対する企業側にはどちらかというとデメリットの方が大きいと思われるかもしれません。
しかし、必ずしもそうとは限りません。
具体的に見ていきましょう。
ABW導入のメリット
業務の効率化、従業員満足度の向上
ABW導入の最大のメリットは、業務の効率化、従業員満足度の向上が期待できることです。
1人で黙々と仕事をするのも良し、大勢で協力しながら取り組むの良しで、各々自分に適したストレスフリーな環境で働けます。
多様な働き方の実現、ライフワークバランスの充実
ABWの場合、オフィス内に限らず、自宅から、お気に入りのカフェからのリモートワークにも対応しているため、多様な働き方の実現にもつながります。
また、趣味を楽しむ時間や家族と過ごすプライベートの時間も確保しやすくなり、家事、子育てとの両立も可能です。
優秀な人材を惹きつける
魅力的な就労環境は、優秀な人材を集める誘因材料になります。
特にリモートワークやフレックス制度を導入していると、人材の集まり易さが顕著に違うということを実感している企業も多いでしょう。
ABWもまた、柔軟な就労環境を求める優秀な人材を惹きつけます。
ABW導入のデメリット
勤怠管理が難しくなる
従業員の働き方が複雑化することで、勤怠管理が難しくなることがABW最大の難点と言えるでしょう。
従業員それぞれの勤務時間や勤務場所が異なるため、企業側が完璧に把握できないと賃金の支払い時などにトラブルになることも起こり得ます。
ルール決め、ガイドラインの制定が大変
勤怠管理に加えて、導入にあたりルール決めやガイドラインの制定にも多くの手間を費やすことになります。
もちろん、完全に好き勝手に働かせるわけにはいかないため、ある程度「自由」に制限をかける必要があり、また、従業員の間で働き方に関する格差や不満がが生じないように配慮もしなければなりません。
社内コミュニケーション、情報共有に支障が出ることも
特にリモートワークの場合、社内コミュニケーション、情報共有が疎かになることもあります。
業務における指示、連絡、報告などにタイムラグが生じ、思わぬミスにもつながりかねません。
【参考】週休3日制とは?導入する上での注意点と成功させるポイント
ABW導入の心構えとポイント
実際にABWを導入するにあたり、必要な心構えとポイントについて見ていきましょう。
適性を見極める
導入にあたり、まずは会社の状況を踏まえた上で、適性を見極めることが重要です。
ABWは従業員数が多く、勤怠状況を時間ベースで管理しなければならない場合にはあまり向いているとは言えません。
また、顧客の個人情報、その他機密情報を扱う部署、業種には向いていないと言えるでしょう。
一方で、比較的小規模なベンチャーやスタートアップ企業、IT、クリエイティブ系等、活動(Activity)に対する成果が比較的見え易い場合には、効果を発揮し易いと言えるでしょう。
目的をはっきりさせる
ABWは従業員寄りの制度という側面が強いことから、企業にとってのメリットを期待しにくいケースがあります。
優秀な人材を惹きつける効果は期待できますが、業務やコストが増え、事業運営に支障が出てしまっては本末転倒になってしまうことも。
そのため、生産性やパフォーマンスの向上、業績アップなど予め導入の目的を見定め、結果で導入を検討しましょう。
下位互換の制度から試験的に始めていく
従業員の規模が大きい場合、もしくは新入社員がいる場合などは、いきなり導入してもトラブルに陥るだけかもしれません。
そのため、まずはフレックスタイムやフリーアドレスなど下位互換の制度から始め、慣れてきたら徐々に自由の幅を増やすなど、試験的に導入する方が上手くいくとの声もあります。
ビジネスチャットツールなどITツールを積極的に活用する
社内のコミュニケーションを活性化し、滞りなく情報共有をするためには、ビジネスチャットツールを始め、クラウドサービスなどITツールを積極的に活用するのがおススメです。
また、社外から働くことが増えるとセキュリティの問題も生じるため、その対策も並行して実施します。
まとめ
ABWを上手く導入できれば企業、社員双方に大きなメリットがあります。
しかし、多くの日本企業の実情を踏まえると、実現までの道のりは厳しい状況となっているようです。
企業と社員、上司と部下の信頼関係を構築すること、ルール決めや試験運用をすること、これらの要素を留意した上で進めていきましょう。