企業を分析するフレームワークは多数あります。
その中でも、「自社の強み」に力点を置いているのが、VRIO分析というフレームワーク。
ここでは、VRIO分析とはどのようなものなのか、概要を押さえて、その活用方法や事例について紹介します。
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VRIO分析とは?
VRIO分析とは、企業の経営資源を客観的に分析し、市場における自社の強みや弱みなど優位性を判断するために用いられるフレームワークです。
VRIOとは、
- Value(経済的な価値)
- Rareness(希少性)
- Imitability(模倣可能性)
- Organisation(組織)
これら4つの要素を指しており、それぞれの頭文字を取ったもの。
米国、オハイオ大学経営学教授のジェイ・B・バーニー氏によって1991年に提唱されました。
分析の実践手順は、至ってシンプル。
V→R→I→Oの順番で、それぞれの項目の問いに対し、YES or NOで答えていきます。
VRIO分析と「3C分析」
VRIO分析を実施する上で、是非とも押さえておきたいものとして、「3C分析」があります。
3C分析とは、
- Company(自社)
- Cometitor(競合企業)
- Customer(顧客)
の3つの要素から成るフレームワークで、企業の事業環境を包括的に分析するために用いられます。
顧客や競合企業との三角関係にある「自社」の独自性や強みなど、市場機会の発見をする上で、VRIO分析が重要になるのです。
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VRIO分析の進め方
それでは、VRIO分析の実施にあたり知っておくべき各要素の詳細や進め方について見ていきましょう。
Value(経済的な価値)
ここで言う「価値」とは、従業員をはじめ、商品やサービス、資金、会社が持っている知的財産やノウハウなどを指します。
- ヒト
- モノ
- カネ
- 情報
の主に4つが含まれます。
これらの価値は、市場において競合他社との競争で生き残る上で真っ先に必要になる「武器」となります。
Rareness(希少性)
すでに同じビジネスモデルが市場に存在していないか、企業や提供している物やサービスのオリジナリティを判断します。
特に破壊的イノベーションの実現を目指すベンチャーやスタートアップ等の企業にとっては決して欠かせない要素です。
この問いにYESであれば、ブルーオーシャンの開拓にもつながるかもしれません。
Imitability(模倣可能性)
他社が自社のビジネスを模倣しようとしてくる場合を想定し、それが実現可能か客観的に判断するための項目です。
また、その可能性が高い場合、どれくらいコストやリソースを必要とするのかについても具体的に考えます。
たとえ自社の事業に希少性があったとしても、小規模なリソースやコストで誰でも簡単に始められるのであれば、すぐに他社に模倣されてしまうことから、競争優位の状態を維持することは難しいでしょう。
Organisation(組織)
現在あるコスト、リソース、人材をフル活用するための最適な組織環境や体制が整っているか判断する項目です。
必要なスキルを持った人材が十分に確保できているか、ということも、考慮しなければなりません。
たとえ、前の3つの問いがYESだったとしても、それを活かせる組織力がない場合、全てがムダになってしまいます。
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VRIO分析の活用事例:Apple
VRIO分析の活用事例として、通信大手の「Apple」を挙げ、分析してみましょう。
経済的な価値→YES
Appleは周知のように「MacBook」シーリズや「iMac」、「iPod」、「iPhone」、「iPad」、「AppleWatch」と言ったPC、スマホ、タブレット、時計など革新的な製品を日々、世界中に送り出しています。
特にiPhoneは業界標準や人々の生活様式を変えるほどの大きなインパクトを孕んでいると言えます。
各製品は決して安価な価格設定はされていませんが、製品の性能や利便性を考慮すれば高い経済的な価値を提供していると言えます。
希少性→ YES
特徴的なリンゴのロゴ、統一感があり洗練されたデザインや配色など、とにかく「シンプルさ」を追求し、かつ、様々なサービスがシームレスに繋がっており、使い勝手が良いというのは、特筆すべき点として挙げられるでしょう。
また、Appleのブランドは、他の追随を許さないほどに非常にシンプルで洗練されたデザインとなっています。
PCやスマホ、タブレットなど全てをApple製品で統一しようとするファンが多いのも、このサービスやブランドの力によるところが大きいと言えます。
希少性は、非常に高いと言えるでしょう。
模倣困難性→Yes
Apple製品は、様々なサービスがシームレスに繋がり、快適に使うことができる他、各デバイスがBluetoothでコネクトし、それぞれの機能が連携する形になっていることから、模倣可能性は極めて低いと言って間違いありません。
また、アプリも独自のプラットフォームである「AppStore」で管理、提供しているため、他社はGoogle Playや、Galaxy Storeなど他のプラットフォームを利用せざるを得ません。
模倣困難性も、非常に高いと言えるでしょう。
組織→ YES
製品の開発は本社のあるアメリカ国内において、トップクラスのクリエイティブかつ優秀な人を集めています。
そして製造は、台湾をメインにリーズナブルで高品質なものを生産しています。
そこから世界各国に点在する支社やAppleStoreを通して消費者に提供する、という洗練された組織体制が確立されています。
このような組織を構築するのも、並大抵のことではありません。
組織についても、Yesと評価することができるでしょう。
まとめ
VRIO分析は、それ自体はシンプルでありながら、詳細に行おうとすると案外時間がかかってしまうもの。
また、一度実施して納得できる結果が出たとしても、事業環境は刻々と変わっていくものでもあります。
VRIO分析を定期的に実施して課題を見つけ、自社の競争力の維持に役立てていきましょう。