社債なんて、聞いたことはあるけど、あれって大企業が発行するものじゃないの?
何だかよく分からないけど、何かメリットあるの?
そう思われている方も少なくないかと思います。
ここでは、社債の概要から、社債を発行して資金調達するメリットやデメリット、また注意点についても紹介していきます。
【参考】社債とは?融資との違いは?仕組みやメリットをざっくり解説
社債とは?
社債とは、企業が投資家らに向けて債券を発行し、資金調達をする手段の一つです。
債券とは、投資家からお金を借り入れるために発行される有価証券で、債券を発行する代わりにお金を借り入れ、利息を払い、返済期日までに全額を返済するものです。
社債は債券の一種で、借入金額、利息、返済期日を含めた「借金証明書」のようなものとも言えるかもしれません。
銀行からの融資ではなく、なぜ社債を発行するのか
資金調達と聞いてまず思いつくのが、銀行や信用金庫など金融機関からの融資によるものかと思います。
「社債なんて発行しなくても、銀行や信用金庫から借りれば良いのでは」と思う方も少なくないかもしれません。
ではなぜ、企業は社債を発行するのでしょうか。
その主な理由として「審査」「金利」「限度額」、この3つの要素における優位性が挙げられるでしょう。
社債の優位性
審査
銀行から融資を受ける場合、まず信用審査を受けることになり、金利条件も設定されます。
しかし、社債を発行する場合、情報の開示は必要になりますが、金融機関から審査を受けることはありません。
投資家が自分で判断して、社債を購入することになるからです。
金利
また、金利も自由に設定できます。
会社の状態、つまり投資家の考えるリスクに対して魅力的なリターン(金利)だと思えば投資家は購入してくれるでしょうし、そうでなければ、投資家は購入してくれないでしょう。
自由度があると言いつつ、買ってもらえなければ意味がないので、ある程度高い金利を設定しなければならないことには間違いありません。
しかし、金融機関から金利を提示されるのとは異なり、自分達に決定権がある分、納得感はあることでしょう。
借入額
また、借入額についても、金融機関の場合、金融機関が主導権を持つことになります。
しかし、社債であれば、自分達が主導権を持つことができます。(希望する額が集まるかどうかは投資家次第)
その他、融資の返済期限に相当する償還期限も、基本的には社債を発行する側が決定できるというのが利点と言えるでしょう。
社債の種類
企業が発行できる社債には、
- 普通社債
- 劣後債
- 永久債
- 転換社債
の4種類あります。
種類別の概要
それでは、種類別にみていきます。
普通社債
ストレートボンド、と呼ばれる普通社債とは、満期があらかじめ決まっており、それまでの期間は債権者に利息のみを支払います。
劣後債
劣後債とは、普通社債よりも元本・利息の支払いにおいて優先順位が低い社債を指し、高金利なのが特徴です。
永久債
永久債とは、償還期限や満期がない社債を指し、事業が存続する限り債権者に対し利息を支払い続けます。
転換社債
転換社債とは、基本的に普通社債と変わらないことが多いと言えます。
しかし、一定条件のもと株式へ転換することが可能で、株価が上がっている際に転換すれば利益を得ることができます。
返済できそうにない場合には、社債を株式に変えることができるので、企業にとっても、投資家にとっても、選択肢が増えることになります。
社債発行で資金調達するメリット
それでは、企業が社債を発行して資金調達するメリットについて見ていきましょう。
①経営干渉を受けるリスクがない
社債発行で資金調達する最大のメリットは、経営について干渉を受けるリスクがないことです。
ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家に対して株式を発行して資金調達をした場合、株主も経営権を持つことができるので、投資家から経営に対して口を出される可能性があります。
投資家が保有する株式割合によっては、社長をクビにすることだって出来てしまいます。
一方、社債による調達の場合は、投資家は経営に口を出すことができません。
社債を発行する側にとって、これは大きな安心材料と言えます。
しかし、転換社債が株式に転換された場合は、その限りではありません。
【参考】エンジェル投資家とは?彼らの出資の目的と認識すべきリスク
②資金の使い道を自由に決められる
また、社債発行で調達した資金には使途目的の制限がありません。
もちろん、投資家に対しての説明は必要です。
しかし、別の用途で使ったからといって、金融機関からの融資のようにペナルティが発生したり、一括返済を求められたりすることは通常ありません。
社債を発行する際のデメリットや注意点
それでは、社債を発行する際のデメリットや注意点も見ていきましょう。
①管理コストや作業負担が増える
社債の発行は、投資家の募集から発行、資金調達、そして返済のプロセスに至るまで、かなりの事務工数がかかります。
証券会社等に対して払うフィーも、決して安いものではありません。
明確な目的なしに漫然と資金調達した場合、有効活用できずに投資家からの信用を失うばかりか、再発行ができなくなるといった状況に陥ることだってあります。
それらを未然に防ぐために、十分なコストと手間をかけて経理や財務の担当者、専門家を交え入念なプランを練る必要があります。
②会社の信用力にマイナスの影響が出る
社債は、株式の発行とは異なり、負債扱いになります。
よって、その額が大きい場合には企業の信用に影響してきます。
例えば、金融機関から追加資金の融資を受ける際に審査で引っかかる、取引先からの財務上の評価が下がる、といったこともあるため注意しましょう。
③償還のための積み立てや返済プランを練る必要がある
社債は基本的に一括返済であることから、月々の金銭的な負担は小さいものの、満期償還時には大きな負担となってのしかかってきます。
よって、償還のための積み立てや返済プランを入念に練っておく必要があります。
万が一、企業が倒産した場合でも返済義務は残るため、期日に満額返済できるように弁済資金の確保や積み立てを行なっていきましょう。
社債を償還するための資金がたりなければ、その資金を再度社債で賄うということも、場合によっては可能です。
まとめ
ご覧頂いた通り、社債の発行には、手間暇はかかりますが、金融機関から融資を受けるのとは異なるメリットがあります。
自社の状況を見極めて、社債にすべきか、メリット、デメリット双方を考慮した上で計画的に発行手続きを進めていきましょう。