「ベンチャーキャピタル」の存在を、起業を考える方なら一度は耳にしたことがあるでしょう。
資金繰りが厳しい創業時に、助け舟を出してくれる。
将来性を見込んで、お金を出してくれる。
確かに頼もしい存在ではあります。
しかし、ベンチャーキャピタルと付き合う上で、知っておきたい注意点やリスクもあります。
この記事では、ベンチャーキャピタルから出資を受ける魅力と、その際に気をつけたいリスク、注意点について解説していきます。
【参考】ベンチャーキャピタルから出資を受けるまでの5つのプロセス
ベンチャーキャピタルとは?
ベンチャーキャピタルとは、ベンチャー企業やスタートアップ企業など、成長意欲はあるが、資金が不足している企業に出資する組織を指します。
そして、ベンチャーキャピタルは、その成り立ちによって、
- 事業会社系
- 独立系
- 金融機関系
- 政府機関系
- 大学系
の大きく5つの種類に大別することができます。
基本的には、巨額の資金を持った投資家から資金を預かり、ファンドとして運用しています。
そして、その多くが、JVCA(一般社団法人ベンチャーキャピタル協会)に加盟しています。
ベンチャーキャピタルの見つけ方
ベンチャーキャピタルには、上記のJVCAに加盟していない会社もたくさんあります。
多くの場合、資金提供を受けるためには、まずは自社に適したベンチャーキャピタルを選定した上でアプローチすることになります。
①知人に紹介してもらう
若手起業家同士の横の繋がりがあったり、知人や実際のベンチャーキャピタル利用者に紹介してもらう方法です。
ミーティングの機会を設けてもらえる可能性が高く、一番効率的です。
②イベント等へ参加して担当者と名刺交換する
ベンチャー企業やスタートアップ企業を対象としたピッチコンテストなどのイベントへ参加します。
そのようなイベントには、ベンチャーキャピタルの担当者も多数参加しており、ダイヤの原石となるスタートアップを探しています。
そういったイベントに参加することで、人脈作りもできるでしょう。
③Webページ等から直接コンタクトを取る
接点が無い場合には、企業のホームページから問い合わせる、DMを送るなど積極的な手段を取ることも重要です。
ベンチャーキャピタル協会のWebページに記載されている会社アプローチをするのも効率的です。
【参考】ベンチャーキャピタルへのアプローチ方法と主要な探し方3つ
ベンチャーキャピタルの魅力4つ
概要についてわかったところで、実際にベンチャーキャピタルを利用する魅力について4つ、見ていきましょう。
①返済義務が無い
金融機関から融資を受ける場合とは異なり、ベンチャーキャピタルから資金調達する場合には、原則として担保が不要で返済義務もありません。
一見リスクが高いように思われますが、それでもベンチャーキャピタルがお金を出すのは、出資先のベンチャー企業がビジネスに成功し、株式上場したり、大企業にM&Aされたりすると、何十倍、何百倍ものリターンも見込めるからです。
起業家側としては、融資と違い、返済に関する不安がないのは、有難いことです。
よって、毎月の返済に悩まされることなく、より事業に集中できるようになるというのは、大きな魅力の一つと言えます。
②財務状況が安定する
ベンチャーキャピタルから出資を受けると、当然ですが財務状況が安定します。
貸借対照表の、資本金(純資産)が厚く見えるようになると、会社として安定していると見られるようになります。
同じ入金でも、借入金が増えるのと、資本金が増えるのとでは、見え方が違うわけです。
そして逆説的ですが、財務状況が安定すると、金融機関からの融資や、他のベンチャーキャピタルからの追加出資が受けやすくなるという効果があったりもします。
また、財務状況が安定することで事業の評価が上がれば、資金繰りに取られる手間を削減できる好循環のサイクルに入ることもできます。そうすれば、今までよりも一層事業運営に集中しやすくなるでしょう。
③事業に箔がつく
ベンチャーキャピタルから出資を受ける際には、注意深い審査を経ることになります。
事業計画の内容や、場合によっては出資元の事業との相乗効果等に関する、厳しい審査を経ることになるのです。
その審査をクリアすることは、資金を得られると同時に、「ベンチャーキャピタルに認められた将来有望な事業である」という客観的な評価が得られたことも意味します。
つまり、ベンチャーキャピタルから認められたということで企業に箔がつき、社会的な信頼に繋がるのです。
少なくとも、ベンチャーキャピタルから資金調達した会社であれば「怪しい会社だ」と思われるリスクは、まずないと言えるでしょう。
④経営ノウハウが学べる
ベンチャーキャピタルは、起業家にとっては基本的に資金調達するための組織ですが、場合によっては経営のノウハウやスキルを学べることもあります。
特に独立系のベンチャーキャピタルには、実績のある起業家や投資家が多数在籍していることもあります。
その結果、単なる資金提供にとどまらず、経営上の各種アドバイスや取引先の紹介、様々なサポートをしてもらえるケースがあります。
初めて経験する困難に数多く立ち向かっていかねばならない経営者にとって、経験豊富なキャピタリストからの助言は、非常に有難いものになるでしょう。
【参考】ベンチャーキャピタルに会う前に知っておくべき事前準備5つ
ベンチャーキャピタルの注意点3つ
ベンチャーキャピタルを利用することによって多くのメリットが得られる一方、リスクや注意点もあります。
①経営者の権限が弱まる
まず、ベンチャーキャピタルと付き合う上での注意点一つ目。
「出資」は、会社の株式の一定割合をベンチャーキャピタルに持たせるということで、これが要注意なのです。
これはつまり、会社の所有権(オーナーシップ)を一定割合ベンチャーキャピタルに持たせる、ということ。
誤解を恐れずもう少し踏み込んでいえば、「少しだけ会社を売る」とも言えます。
よって、会社として重要な意思決定をする際に、ベンチャーキャピタルの承諾を得なければならない状況が生じたりします。
また、場合によっては、役員を選任出来たり、場合によっては現在の社長をクビにして、新しい社長を据えたりすることも可能になります。
②Exitへの圧力を受ける
イグジットとは、英語で「Exit」、日本語で「出口」を意味します。
ベンチャーキャピタルにとっては、投下資金を回収する事を指します。
当然ですが、資金を出すファンドが期限付きである場合、ベンチャーキャピタル側は、期限までに投下した資金を回収しなければなりません。
上で「返済義務がない」と書きましたが、ベンチャーキャピタル側からすれば、投資したお金は「回収」しなければならないわけです。
では、「返済義務がない」なら、どうやって回収するのかと言うと、「第三者に売却する」のが基本です。
上場すれば株式市場で売却します。
M&Aであれば買い手企業に売却して資金を回収します。
大きなお金を無駄にするわけにはいかないですし、ベンチャーキャピタル側だって必死。
なるべく早くリターンを回収するために、株式の上場やM&Aによる会社売却を出資先に迫るケースがあります。
よって、出資を受けると、上場するよう様々な形で圧力をかけてくることがあります。
また、将来性が見込めなくなったと判断されてしまうと、早々に投下資本を回収しようとして動いてきますので、その点は理解しておくことが必要です。
③引き返すのが難しい
ベンチャーキャピタルからの資金調達が決定すると、契約を締結することになります。
そして、融資は返済すれば終わりですが、出資は、返済したら終わり、というわけにはいきません。
つまり、一度出資を受けてしまうと、原則として元の状態には戻せないわけです。(元に戻すのはかなりの労力とコストがかかります)
契約書には専門的で非常に難しい言葉がたくさん並んでいますが、きちんと理解しない状態で契約を締結してしまうと不利な条件で出資を受け、引き返すこともできなくなってしまうという状況に陥りかねません。
そのため、ある程度は専門的な知識やスキルを身につけた上で、付き合い方を検討しましょう。
自分で勉強するのはもちろん、経験豊富な人から助言をもらうのが安心です。
【参考】エンジェル投資家とは?彼らの出資の目的と認識すべきリスク
まとめ
金融機関からの融資とは異なり、ベンチャーキャピタルからの出資は一度受けると取り返しがつかない状況に陥るリスクを孕んでいます。
そのため、ベンチャーキャピタルと付き合う上では、細心の注意が必要となります。
付き合うことで得られるメリットは多数ありますが、利用を検討する際にはその仕組みについて理解を深め、専門家を巻き込んだ形で安心して進められるようにしましょう。