経理というと、かつてはそろばんや電卓をたたいて紙の帳票に手書きするのが主流でした。
しかし、時は21世紀。
世の中は、PCを使った会計ソフトを使用するのがスタンダードです。
ところで、会計ソフトには大きく分けて「クラウド型」と「オンプレミス型」の2種類があることを、ご存知でしょうか。
両者は、それぞれ特徴が大きく違います。
そこで今回は、会計ソフトのクラウド型とオンプレミス型とは何かついて紹介し、両者の違いや導入に向いている企業などについて解説していきます。
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会計ソフトのクラウド型、オンプレミス型とは
そもそも「クラウド」とは、インターネットを経由して利用可能なサービスソフトウェアのことを指します。
つまりクラウドを利用すれば、パソコンに購入したソフトをインストールせずに、ブラウザを通してソフトを使用することができるのです。
クラウド型会計ソフト
クラウド型会計ソフトとは、このクラウドシステムによって利用できるタイプの会計ソフトのことで、サービスを提供している会社に定額(基本は月額)の料金を支払うことで利用できます。
近年ではクラウド型会計ソフトのサービスを提供している企業が多く登場しており、「マネーフォワードクラウド」、「freee」などがその一例です。
ただし、インターネット環境がなければ、クラウド型を使うことはできません。
オンプレミス型会計ソフト
一方、オンプレミス型の会計ソフトとは、企業が所有するPCまたはサーバーに会計ソフトをインストールして使用するタイプの会計ソフトを指します。
自社PCのみで作業するので、経理業務を行う上ではインターネット環境は必ずしも必要ではありません。
有名どころとしては「会計王シリーズ」や「わくわく財務会計シリーズ」などがあります。
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クラウド型会計ソフトはオンプレミス型とどう違う?
会計ソフトのクラウド型とオンプレミス型の最大の違いは、インストールの必要性の有無です。
インストールの必要性の有無に起因して、主に以下のような点が異なっています。
①費用発生のタイミング
オンプレミス型の場合、専用の会計ソフトをインストールする必要があるため、ソフトの購入費用など初期費用がどうしても発生します。
一方、クラウド型は会計ソフトを自社PCにインストール必要がないので、導入時のコストを抑えることが可能です。
ただし、導入後は月額利用料が発生するため、ランニングコストがかかります。
②業務効率
また、クラウド型会計ソフトはオンプレミス型とは異なり、業務効率を大幅に向上できるというメリットもあります。
例えば経費精算をする場合、オンプレミス型だと従業員が経費精算をする場合、いちいち会社に戻って専用の紙に記入し、経理に提出しなければならない、というのが一般的です。
しかし、クラウド型であればインターネット環境さえあればどこでも経理ソフトにアクセスできるので、従業員が自分でスマホのカメラを使ってレシートを撮影し、出先ですぐに経費精算を行うこともできます。
③アップデート
ご存知の通り、税制をはじめ、会計制度はしばしば変更が発生します。
クラウド型であれば、サービス提供会社がアップデートをしてくれるので、特段気にすることなく使い続けることができます。
しかし、オンプレミス型の場合、ソフトのアップデートを自分でする必要があります。
そうでなければ、税率の処理や会計処理が古い制度のまま進んでしまうかもしれません。
④セキュリティ
クラウド型を導入する場合、サービス提供会社のソフトをクラウド上で利用するという形をとるため、情報漏洩などセキュリティにやや不安があります。
オンプレミス型は自社PCで業務が完結するので、情報が社外に漏れにくいという利点があります。
⑤税理士の対応状況
さらにクラウド型は最近登場したサービスであるため、企業の顧問税理士が対応していない場合があります。
クラウド型を利用する際はお世話になっている税理士に導入しても問題がないか、確認することが望ましいでしょう。
また、自社社員の中でもクラウド型を導入することで、「これまで長年愛用してきたオンプレミス型の会計ソフトの方が使いやすい」という古参社員が現れるかもしれません。
この場合、導入後は慣れるまで時間がかかることも考えられます。
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クラウド型、オンプレミス型に向いている企業
クラウド型、オンプレミス型の会計ソフトはそれぞれメリット、デメリットがあり、特徴を十分に活用できる利用法を模索するのが望ましいと言えます。
クラウド型の会計ソフトは経理業務を大幅に効率化でき、さらに初期費用が掛からないことから、
- 経理に人的資源や時間の多くを割けない企業や
- 起業間もないベンチャー企業
などに向いているサービスと言えます。
一方、オンプレミス型の会計ソフトは、
- 使い慣れた会計ソフトを継続して使用したい企業
- セキュリティ対策に不安を感じたくない企業
に向いていると言えるでしょう。
自社に合った会計ソフトを見極めよう
近年の傾向としては、業務効率を大幅に改善でき、ペーパーレスを実現できるクラウド型の会計ソフトが普及しつつあります。
しかし、クラウド型にはセキュリティ面への不安や月額利用料の発生、税理士の対応状況等のデメリットもあり、必ずしも万能とは言いきれません。
また、提供されているクラウドサービスに自社の経理システムを合わせなければならないこともあり、導入する場合は慣れるまで時間がかかる場合もあります。
クラウド型、オンプレミス型は一長一短あるので、どちらか一方を使用するのが良いとは一概に言い切れません。
一度導入してしまうと、簡単には切り替えられないので、自社の状況や、何を重視するかを踏まえて、慎重に選びたいものです。