企業が資金調達を行う場合、金融機関からの融資、投資家からの出資が有力な選択肢となるでしょう。
しかし、どちらも一長一短があるため、ためらってしまう経営者は多いようです。
そうした中、出資・融資が持つデメリットを極力抑えて資金調達を行える方法があります。
それが今回取り上げる「資本性ローン」。
今回は、資本性ローンとは何か、という点について掘り下げて解説します。
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資本性ローンとは
一般的に、企業が資金調達を行う場合、その方法は出資や融資のどちらかです。
出資は返済義務もなく、無担保無保証で資金調達できる点が利点。
しかし、お金を出資する投資家側にとっては、事業が成功すれば投資額が大きく還元されるものの、もし出資先の事業が失敗すれば投資した額は無駄になってしまいます。
その意味で、お金を出す側にとっては「ハイリスク・ハイリターン」。
一方、融資は金利も返済義務もあります。
よって、たとえ融資先の企業の事業が不調であったとしても、貸したお金プラス金利分の金額を取り戻せます。
ただし、お金を貸した企業がどれだけ成長しても、リターンとして得られるのは金利分だけ。
その意味でお金を出す側にとっては「ローリスク・ローリターン」と言えるでしょう。
そして今回注目する「資本性ローン」は、いわばこの中間に位置する「ミドルリスク・ミドルリターン」の性質を持ち、出資と融資の両方の特長を併せ持っていると言えます。
実施しているのは、政府系金融機関の日本政策金融公庫です。
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資本性ローンの特徴
では、出資と融資の両方の特徴を併せ持つとは、具体的にどのような特徴なのでしょうか。
まず「ローン」という名前の通り、企業は借りた金額を返済する必要があり、金利も支払う必要があります。
しかし、株式のように出資額に応じて議決権を取られることもありません。
この意味では融資に近い特徴を持つと言えるでしょう。
一方で「資本性」という名前の通り、調達した資金は負債ではなく「自己資本」という扱いが可能。
自社の財務バランスを悪化させることもないというのも魅力なのです。
さらに金融機関からの融資とは異なり、担保も保証人も不要なのです。
この意味では、株式発行による資金調達に近い特徴を持っています。
いわば、投資家からうける出資と金融機関から受ける融資の「メリットだけ」を抽出したのが資本性ローンであるわけです。
特に、資金調達に伴うデメリットを極力減らしたいベンチャー企業・中小企業にとっては、資本性ローンの特徴は魅力的に映るでしょう。
しかし、資本性ローンを実際に利用する場合、いくつか注意すべき点もあります。
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資本性ローンの注意点
資本性ローンは、出資・融資、いずれとも異なる特徴も持つのはお伝えした通り。
それゆえに、実際に利用する際はその点に注意する必要もあります。
利益と金利が連動する
資本性ローンならではの特徴の一つが、利益と金利の連動制です。
資本性ローンにより資金調達をした企業の事業が成功し、利益が出たら、それに合わせて金利がアップします。
一方、業績が苦しいとき、資金繰りが厳しいときは金利が安くなります。
それゆえ、事業が不調のときは負担が少なくて済むのです。
また、企業としては事業が成功して利益が多く出るようになったら、資本性ローンを早々に返却したいところ。
しかし、資本制ローンの契約上、それは認められていません。
どれだけ短期的に利益額が急増し、企業として急成長を遂げたとしても、あらかじめ定められた期間をかけてローンを返済していくのが原則です。
先述の通り、利益を上げるとそれだけ金利が高くなるという仕組み。
ゆえに、利益を上げるようになればそれだけ負担は増してしまいます。
つまり、資本性ローンとしてお金を出す日本政策金融公庫側からすると、
「事業が成功したら、すぐに返済させずに、高い金利を得続ける」
という形で利益を得られるわけです。
日本政策金融公庫は政府系機関であるため、経済的利得を得ることが活動の主目的ではありません。
しかし、税金の垂れ流しは困るので、一定の利益を上げることは求められます。
事業計画を含めマメな報告が必要
また、資本性ローンは申請の際に詳細な事業計画の提出が求められます。
事業が成功しなければ、日本政策金融公庫にとっては全く利益にならないからです。
そして受けた後も、定期的な事業状況の報告が義務付けられます。
特に人的資源の限られた中小企業・ベンチャー企業の場合、これらの作成作業はそれなりに大きな負担となるでしょう。
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まとめ
資本性ローンは企業が利益を上げるほど金利が高くなり、最終的な返済額も大きくなってきます。
儲かればそれだけ、大きく返す覚悟が必要になるわけです。
しかし、株式発行での調達も、銀行からの調達も難しく感じる場合、その中間的な選択肢として資本性ローンによる資金調達は便利と言えます。
経営者・起業家の方はいざというときのために、こうした資金調達の方法もあることを知っておくと良いかもしれません。