ベンチャー企業に投資する、ベンチャーキャピタル(以下、VC)。
資金調達ニーズのある中小企業であれば、恐らく多くの会社が選択肢として考えたことがあるだろうと思いますが、「出資」と言う返済義務のない資金である以上、どの企業にでも出資してくれるわけではなく、VCによる厳しい審査をクリアすることが必要となります。
審査をクリアできるのは、審査された10社の中で1社あるかないかという、銀行の比ではない狭き門とも言われます。
しかし出資を受けられれば、資金面で大きく助けになるのはもちろん、VCが将来性を認めた会社だと言うことで、信用力もグンと増します。
であれば、もしVCの門戸を叩くのであれば、事前にしっかり準備していきたいもの。
ここでは、VCから出資を受けるための事前準備や審査のポイントについてご紹介します。
必要な事前準備5つ
①事業計画書を作成する
事業計画書は、出資を受ける時だけでなく、銀行から融資を受ける際や、事業を進めていく際にも、様々な場面で役に立ちます。
会社についての理解を深めてもらうために、そして、しっかりした会社だと良い印象を持ってもらうためにも、会社概要や組織体制を始め、自社の企業理念、経営戦略、外部環境や内部環境、強みや弱み、そしてこれから何をするかについて、分かり易く記載しましょう。
聞くところによると「事業計画」と言いつつ、単なる会社概要に過ぎない資料も多いのだとか。
課題や細かな収支計画についても忘れずに盛り込んで、事業計画書を作成しましょう。
②資本政策を作成する
事業計画に加えて「資本政策」を作成する必要もあります。
「政策」とありますが、政治は関係ありません。
株式発行による資金調達の計画書、と言い換えると、理解が容易になるかもしれません。
資本政策で伝えることは、大きく以下の2つです。
- いつ、いくら(株式発行で)資金調達するのか
- 資金調達に伴って株式の持ち分はどう推移するのか
資本政策には、よく使われているテンプレートがありますので、基本的にはテンプレートを使って作成することになります。
③市場の魅力度や競合優位性を分析しておく
VCから投資を受けるには、事業に魅力がなければなりません。
事業の魅力というのは、大きく「市場の魅力度」と「競合優位性」に分けることができます。
「市場の魅力度」というのは、ざっくり言えば、「世の中全体で、その商品やサービスのためにどれくらいのお金が動きそうか」という話です。
どんなに素晴らしいサービスであったとしても、
「サービスは凄いけど、使ってくれる人はほとんどいなさそうだよね」と思われたり、
「使いたい人はたくさんいそうだけど、お金を払ってくれないんじゃない?」と思われたりすると、「市場規模が小さ過ぎて、市場が魅力的でない」とのことで、出資を見送られてしまうこともあるでしょう。
そして「競合優位性」については、「他社や類似のサービスに勝てるのか」が重要なポイントになります。
「それは確かに凄いけど、でも、皆、既存のサービスで間に合ってるんじゃない?」と思われたり、
「他の類似のサービスの方が人気出そうだな」と思われたりすると、「あまり強みがない」と言うことで、見送られてしまうことがあるでしょう。
VCから出資を受けようとしている企業は数えきれないほどあります。
当然ですが、VC側も無限に投資資金があるわけではありません。
自社の商品やサービスを競合他社と比較した際、
- 市場が十分にあるか
- 圧倒的な魅力や強みがあるか
- 他社との競争に勝てるのか
- 長期的な収益を見込めるのか
これらのポイントは出資を受ける審査の際、非常に重要なポイントとなるでしょう。
④経営陣の質
事業の内容に加え、代表や幹部など、経営陣の個々の評価も審査に大きく影響します。
- それぞれの経営陣がこれまでにどのようなキャリアを経て、どのような実績を積んできたのか
- それぞれが明確なビジョンを持って事業に従事しているか
- 明確な数値、目標に沿った戦略を立てることができるのか
を詳しく見られます。
そしてもちろん、
- 過去に悪さことをしたことはないか
- 反社会的勢力とのつながりはないか
- 取引先の評判はどうか
といったことを、場合によっては調査会社まで使って調べてくることもあります。
ベンチャーキャピタルによっては、「我々は事業に投資をするのではなく、人に投資をする。人が良ければ、事業が上手くいかなくても、方向転換して必ず成功する」という程、経営陣の質を重視することもあります。
事業がどれだけ良さそうでも、経営陣が頼りないと、それだけで見送られてしまうこともあるのです。
会社は、経営陣で決まると言っても過言ではありません。
「ビジネスの経験はないけど奥さんが役員です」なんて論外。
経営陣は良いメンバーを揃えることを意識しましょう。
⑤VCの方針
VCによるベンチャー企業、スタートアップ企業への出資には、一定の方針があります。
「こういう領域の企業に投資する」といった方針を多くのVCが持ち合わせています。
「成長しそうだったら、何でも投資する」というVCは稀です。
特に事業会社系のVCは、本体の事業とのシナジーを重視する傾向にあります。
審査を受けようとする前に、どのような方針を持ったVCなのかは事前に確認しておきましょう。
VCのWebサイトを見れば、大抵のことは書いてあります。
ベンチャーキャピタルには業界団体もありますので、このようなページを見ると、様々なタイプのVCを見ることができます。
まとめ
ベンチャーキャピタルから資金を得るために、何を準備しておく必要があるのか、何を見られるのかを知っておくのは、プロセスを円滑に進める上で欠かせません。
難関を突破するのに相応しい、万全の事前準備をしておきたいものです。