「ソーシャルビジネス」と聞いて、皆さん何を思い浮かべるでしょうか。
ソーシャルと言うと、真っ先に思い浮かぶのが、SNS?
それにビジネスという言葉が絡むと、何だか怪しい響きにも聞こえるかもしれません。
しかし、実際はその逆なんです。
ここでは、ソーシャルビジネスの基本的な考え方や事例について解説していきます。
【参考】ダイバーシティ&インクルージョンとは?先進的な企業の常識
ソーシャルビジネスとは?
ソーシャルビジネスとは、社会問題を、事業活動、すなわちビジネスによって解決しようという取り組みのことです。
社会問題とは、発展途上国の経済状況を好転させることから、貧困問題や環境問題、その他社会問題など、多岐に渡ります。
社会問題の解決と言うと、多くの人は、NPOやNGOが、税金や寄付を使ってやるもの、または、ボランティアがやるもの、とイメージするかもしれません。
しかし、税金や寄付、人の善意頼みだと、支援される側がそれに甘えてしまったり、支援する側の人やお金が止まってしまうとたちまち行き詰ってしまったりするので、本質的な解決にならない、との批判がありました。
そこで、ビジネスという、お金が流れる仕組みを作ることで、税金や寄付、人の善意に頼らない方法で、人や物、お金を動かし、社会問題の解決に結び付けようという動きが起こってきたのです。
ソーシャルビジネスの始まり
「ソーシャルビジネス」という言葉はバングラデシュの経済学者であり、実業家のムハマンド・ユヌス氏によって初めて提唱された概念です。
ユヌス氏は、貧困層を対象にした低利・無担保融資制度を実施するためにグラミン銀行を立ち上げ、その社会貢献活動が世界的に評価され、後にノーベル平和賞を受賞しました。
それをきっかけにソーシャルビジネスの概念が世界中に広まり、今日に至ります。
ボランティアとの違い
よくボランティアと混同して認識されがちですが、ソーシャルビジネスの場合、原則として活動資金や運営資金を外部の寄付等に頼らず、事業者自ら調達し、資金を回していることが大きな違いとなります。
また、利益が最終的な目的ではないとしても、ソーシャルビジネスの場合には結果的に利益が発生するため、その点においても異なるのが特徴です。
【参考】サーキュラーエコノミーとは?普及しつつある概念の基礎知識
ソーシャルビジネスの実例4選
概要についてわかったところで、日本も含め世界におけるソーシャルビジネスの実例について4つほど見ていきましょう。
実例1:4Ocean
4Oceanとは、アメリカのフロリダ州で発足した団体で、海洋プラスチックゴミの削減が主な活動目的です。
生態系の破壊や海洋水質汚染などの原因につながる海洋プラスチックゴミを年間100トン以上、世界中の海で回収し環境美化につなげています。
回収したプラスチックゴミをリサイクルしてブレスレットやジュエリー、その他製品を作り、その販売利益が団体の活動資金になる仕組みになっており、模範的なソーシャルビジネスの例として注目されています。
実例2:TOMS Shoes
世界中にチェーン店を構えるシューズブランド、TOMS Shoesでは、発展途上国において裸足での生活を余儀なくされている子どもたちに靴を届ける「One For One」という活動を行なっています。
TOMS Shoesの店舗で靴を一足購入すると、提携先の援助機関を通して新品の靴が子どもたちに贈られるという非常にシンプルな支援プロジェクトとなっています。
実例3:株式会社ボーダレスジャパン
株式会社ボーダレスジャパンは、数ある民間企業の中でも日本におけるソーシャルビジネスの先駆け的な存在です。
国内における難民の雇用促進活動や人や環境に配慮したアパレルブランドの運営、発展途上国における人材育成や雇用の確保など国、地域、分野を問わない幅広い活動を行なっています。
実例4:Grameen UNIQLO
大手アパレルブランドのUNIQLOも事業の一環として「Grameen UNIQLO」というソーシャルビジネスを手掛けています。
貧困者の多いバングラディシュにおいて生産、販売された製品から発生した利益全てを労働者の教育や医療、快適な生活な環境を提供するための設備投資に回すというプログラムです。
グラミン銀行の事業発足に便乗した形でこのプログラムが始まりました。
【参考】エコマーケティングとは?実践のメリットと4つの事例を紹介
これからのソーシャルビジネス
将来、事業に携わりたい、もしくは事業を立ち上げたいという方のために、これからのソーシャルビジネスにおける課題や可能性について考えていきましょう。
課題
社会問題の深刻化やグローバル化に伴い、以前よりもソーシャルビジネスに関する認識が高まりつつあるのは事実です。
しかし、実際に法人を立ち上げ、事業を始めるとなると経営スキルはもちろんのこと、ソーシャルビジネスに関する専門知識が必要となります。
しかし、国内においてはそれらの教育体制がまだ不十分であるため、スキルや知識の取得、勉強は情報収集をして自主的に行う必要があります。
可能性
事業立ち上げの支援や体制づくりに関してはまだまだ発展途上ですが、一部の公的機関では事業者をサポートするための制度がすでに発足しています。
例えば、日本政策金融公庫によるソーシャルビジネス専用の融資制度の開始や、政府における研究会の発足などです。
特に環境問題の分野に関しては各国の政府における共通の課題であるため、支援の幅がこれからますます広がり、事業としての可能性、将来性も十分に見込めるでしょう。
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まとめ
ソーシャルビジネスは社会、世界をより良い場所にしていくための新しいビジネスの形です。
これまで政府やNPO、NGO、ボランティアに頼っていた社会的任務を果たすことで、企業側、社会、双方にメリットが生じるという仕組みになっています。
事業立ち上げに興味のある方は以上の内容をぜひ参考にし、社会貢献活動を始めていきましょう。