企業で広がりつつある「IT介護」という問題。
これは、ITリテラシーが低くなりがちな年配の社員を、リテラシーの高い若い人が手取り足取りして支えなければならないという状況のことを指し、企業のIT化やDXを妨げ、生産性を低下させている要因とされます。
もちろん、会社で仕事をする以上、社員同士の助け合いは必要。
しかし、必要以上にサポートに時間を割いてしまえば、本来やるべき仕事がスムーズにできていない状況が生まれてしまいます。
- 社内の雰囲気の悪化
- 生産性の低下
- モチベーションの低下
- 優秀な人材の流出
- 会社全体のITスキルの低迷
このような問題につながっていくことでしょう。
これらIT介護の問題を解消するには、個人・社内でITリテラシーを高めることが必須。
ここでは、前編として、
- ITリテラシーとは何か?
- ITリテラシーを高めるとIT介護はどうなるのか?
についてご紹介しましょう。
【参考】IT介護とは?IT音痴が引き起こす問題と採り得る4つの対策
ITリテラシーとは?IT介護問題の解消になる?
ITリテラシーとは、情報技術を利用して、ビジネス・プライベート問わず、目的を達成する能力のことです。
本来、リテラシー(= literacy)とは読み書き能力・識字力のこと。
しかし、日本では「ある分野における基本的な知識やそれを理解して活用する能力」として使われることが多いようです。
これは、国や世界規模で、規格で明確な定義があるものではありません。
人によって、範囲や方向性が異なる場合もあります。
特に、現場の仕事においては、「どのような役割で働いているのか?」次第で、求められるITリテラシーが大きく変わってきます。
例えば、
- 一般的な企業の事務
- プロジェクトマネージャー
- システムエンジニア
- データサイエンティスト
が、それぞれの立場で必要とされるITスキルの程度は大きく異なるでしょう。
ITリテラシーの公的な定義を見てみよう
実は、定義について、厚生労働省と情報処理推進機構(IPA)が文章を出しています。
それぞれ、みていきましょう。
厚生労働省
現在入手・利用可能な IT を使いこなして、企業・業務の生産性向上やビジネスチャンスの創出・拡大に結び付ける のに必要な土台となる能力のこと。
いわゆる IT 企業で働く者だけでなく、 IT を活用する企業(IT のユーザー企業)で働く者を含め、全てのビジネスパーソンが今後標準的に装備することを期待されるもの。
具体的には、
- 世の中にどのような IT があり、それぞれどのような機能・仕組みを有しているか、どのような場面で活用されているかについての理解。
- 企業・業務の課題解決場面に有用な IT を選定し、その IT を操作して目的に適う情報を取得・分析・表現し、課題解決に繋げる能力。
- IT を安全に活用するための情報セキュリティやコンプライアンスの知識。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
社会におけるIT分野での事象や情報等を正しく理解し、関係者とコミュニケートして、業務等を効率的・効果的に利用・推進できるための知識、技能、活用力
引用:ITリテラシースタンダード IT Literacy Standard(ITLS) <初版> 「ITLSの概要」
要するに、ITリテラシーとは仕事上で問題なくITを使える基本的な能力。
「身に付けるのが当たり前」と言えるレベルの、基本的な能力なのです。
高齢なビジネスマンの多くは、若い頃はITに触れる機会が少なかったはず。
ビジネスシーンでITが急速に普及したのは、2000年代に入ってから。
そのため、ITリテラシー能力が低いのも仕方ないとも言えるかもしれません。
ですが、これからも現役で働き続けたいのであれば、必要不可欠なスキル。
また、ITリテラシーという意味では、「スマホは使えるけどPCは使えない」といった若者が増えている状況もあるとされ、若年層も無視できません。
よって、年代問わず社内でITリテラシーを高めるべきと言えるでしょう。
IT介護問題の多くは、ITリテラシーの低さから生じる
IT介護は、「現場レベル」と「経営レベル」の、2つのレベルで問題が起きます。
しかし、それぞれでITリテラシーが向上されれば、
現場レベル:いちいち教えなくてよくなり、社内全体の生産性が高まる
経営レベル:詳細な説明が無くても、経営者が正しい判断ができるようになる
ということになるため、IT介護に関連する多くの問題が解消されます。
高齢になっても身に付けることは可能?
しかし、「若いならともかく、高齢でも、ITリテラシーを身に付け、高めることはできる?」という疑問も出てくるかもしれません。
結論としては、本人の努力次第ではあるものの、ITリテラシーを身に付けることは可能です。
そもそも、高度なITスキルは必要ありません。
仕事が問題なくこなせる程度の知識・能力で充分です。
必ずしも、プログラミングをマスターしろということではありません。
また、ツールの使い方を完璧にマスターするという事でもありません。
IT介護を受けなくても良い水準は、実はそこまで高くありません。
また、高齢だからと言ってITスキルが伸ばせないということもありません。
例えば、58歳からITを学んでプログラマーになった人もいるのです。
もちろん、このレベルまで目指すのであれば、適性なども絡んでくるでしょう。
しかし、基本的なIT知識・スキルなら、ちょっとした努力で身に付けることができます。
【参考】社内失業とは?発生原因や効果的な対策・予防策について解説
ITリテラシーを高めてIT介護を解消
この記事では、ITリテラシーとは何か?について解説し、それがIT介護問題の解消につながることをお伝えしました。
後編では、具体的な方法として、
- ITリテラシーを高める習慣
- リテラシー向上に役立つサービスやコンテンツ
についてご紹介していきます。