抜擢人事とは?期待できるメリットと導入する際の課題

長く続いた年功序列が終焉を迎えようとしている昨今。

それに取って代わる画期的な人事制度として人材の能力やポテンシャルを重視する「抜擢人事」が多くの企業で注目を集めています。

能力の高い人に仕事を任せるのは、一見良いことのように思えます。

しかし、そこまで一筋縄にはいかないのも実情。

今回は抜擢人事について、期待できるメリットや導入時に考慮すべき課題を解説します。

【参考】ジュニアボード制度とは?若手の力を成長に繋げる仕組を解説

 

抜擢人事

 

抜擢人事とは

抜擢人事とは、社員のスキルや能力、成果、ポテンシャルなど、内面を重視して行う人事制度です。

能力が高ければ、経験が浅い若手社員でも重要なポストに就くことができるのが特徴。

勤続年数を考慮して人事配置が行われる年功序列とは対照的な制度になります。

 

抜擢人事が有効なケースは

これは、特に新規事業立ち上げの際に有効とされます。

あえて社外から優秀な人材を採って重要なポストに登用するケースも少なくありません。

以前よりも実力主義、成果主義の会社が求められるようになった時代。

大手を始め中小企業でもこの抜擢人事を採用する企業が徐々に広まりを見せつつあります。

 

抜擢人事の活用事例

それでは、活用事例について少し見てみましょう。

サイバーエージェント

国内トップシェアを誇るインターネット事業を手がける株式会社サイバーエイジェント

同社は、抜擢人事を採用しているとして有名な企業でもあります。

2009年に新卒で採用されたある社員は、営業マネージャー、支社営業局長を経て2018年に異例の若さで子会社の代表取締役に就任しました。

その他にも、8人の取締役を2年に1度、2人入れ替える制度など野心を持った意欲的な人材が働きやすい、活躍しやすい環境が整備されています。

ヤフー

日本のインターネット業界を牽引するヤフー株式会社

こちらも、サイバーエイジェントと同じく抜擢人事によって実績を収めた企業の一つです。

2012年に当時44歳だったある社員を新社長に抜擢したことから始まります。

また、格安スマホサービス「ワイモバイル」の新規事業立ち上げに伴い、経営陣の平均年齢を10歳以上も若い世代に刷新しました。

【参考】タレントプールとは?重要性や運用のコツを解説

 

抜擢人事の導入で期待できるメリット

それでは、抜擢人事の導入で期待できるメリットについていくつか見ていきましょう。

 

1. 社員のモチベーションや競争力の向上、組織の活性化

従来の年功序列制度では、たとえ高度なスキルやポテンシャルがあってもそれだけでは高いポストに就けません。

その結果、優秀な人材が外に流れていってしまうという問題がありました。

しかし、抜擢人事では、勤続年数や年齢に関係はありません。

その人の能力や実績、ポテンシャルによって人員配置が決定します。

そのため、社員の仕事に対するモチベーションや出世しようとする競争力が向上します。

結果的に組織全体の活性化にもつながるのです。

 

2. 若手社員の成長、次世代のリーダーの育成

抜擢人事の導入により、出世のチャンスが平等に与えられます。

これによって、誰もが伸び伸びと成長できる環境が整うでしょう。

特に窮屈な思いをしがちな若手社員も成長しやすくなります。

次世代を担うリーダーの育成、発掘も期待できるでしょう。

【参考】出向とは?左遷とは限らない!メリット・デメリットは

 

抜擢人事を導入する際の課題

抜擢人事は画期的ですが、いきなり導入しても、社内に混乱を招く可能性があります。

そこで、導入の際に考慮すべき課題について見ていきましょう。

 

1. 若手の下に就くベテラン社員の士気の低下や関係のもつれ

最も懸念すべきことは、勤続年数の長いベテラン社員の士気の低下や社員同士の関係のもつれです。

抜擢人事を導入すると、先輩社員と後輩社員の立場が逆転する現象が起きてます。

そうすると、ベテラン社員が若手社員の下につく可能性も十分に考えられるでしょう。

そうなると、ベテラン社員の中には若手の下につくことでモチベーションや士気が著しく低下するケースも出て来ます。

抜擢された人の足を引っ張ったり、退職したりするケースも出て来ます。

 

2. 人事担当者の教育や意識改革

抜擢人事は人員配置を行う人事担当者の手腕が問われる制度でもあります。

社員の能力やポテンシャルを正確に見極めなければなりません。

そのため、人材を見る目がある人事担当者がいなければそもそも成り立ちません。

まずは彼らの教育や意識改革が必須となるのです。

 

3. 抜擢された社員が能力不足だった時の対応

ポテンシャルが高いと見込んで抜擢した社員が、実際は使えなかったと言うケースもあるでしょう。

そのような事態に陥った時の対応についても事前に決めておく必要があります。

やっぱり駄目だった、ということで降格させると、本人は肩身が狭くなるでしょう。

最悪、それなりに能力は高かったのに、退職してしまう可能性もあります。

本人のメンツを維持しつつ、元に戻す方法についても考えておく必要があります。

【参考】降格人事とは?安易な降格は違法?合法的に行うには

 

抜擢人事を上手く活用しよう

抜擢人事の良さは、次世代を担う若手社員の育成だけではありません。

組織の活性化や社員のモチベーション、競争力のアップなど、企業と社員双方に多くのメリットが期待できます。

もっとも、あくまで社員のポテンシャルや能力に重きを置く人事制度。

若いからという理由だけで判断するものではありません。

いきなり導入しても混乱を招くだけなので、しっかりと仕組みを整えた上で導入を検討しましょう。

【参考】ホラクラシー型組織とは?多様化社会で期待される組織の特徴

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