SNSでも話題になった「IT介護」という言葉。
「ITを使って効率的に介護をする」というものではなく、ITに疎い高齢の社員(主に管理職や経営幹部)に対して、手取り足取りIT周りのサポートをしなければならない状態を「介護」になぞらえて表現しているものです。
「これ、設定してくれない?」
「どこのボタンを押せばいいの?」
「音が聞こえないんだけど」
「ちゃんと映ってる?」
若手にとっては当たり前で、簡単に出来てしまうようなことでも、高齢の社員にとっては面倒そうで複雑そうで分かりにくいものだったりします。
その割に、知ろうとも、勉強したりしようともせず、いつも誰かに頼りっきり。
「サポート業務だからいいのでは?」と思うかもしれませんが、IT介護が起きている会社は、IT人材の不足や生産性の低下を引き起こしかねず、DX(デジタルトランスフォーメーション)やIT化がなかなか進まない、といった深刻な問題につながりかねません。
この記事ではIT介護が起きると、会社にとって何が問題なのか?その理由や4つの対処法についてお伝えします。
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IT介護とは?
IT介護とはSNSで流行った造語です。
企業のIT担当者がITリテラシーの低い社員へのサポートや説明対応に追われる状態のことを指し、サポート・説明する相手が高齢な管理職・経営者であることが多いために、「介護」になぞらえられています。
例えば、
「Zoomの使い方がわからない」
「Excelどうやって使うの?」
といった、ちょっと調べればわかる程度の初歩的な操作方法を逐一聞いて来る、といったところから、新しいITシステムの導入を打診すると、理解できないため、
「わかるように説明しろ」
と開き直ったように説明を求めるといったところまで、様々です。
ITリテラシーが低い、または全く無い人が会社内で強い権限を持っており、そして聞いてくるときの態度が高圧的な場合もあるため、ITの担当者はもちろん、他の社員も振り回されることになり、社員のストレス増や業務に遅れが生じるといった影響が出ています。
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IT介護が企業を破壊する!?その理由は?
IT介護状態が生じていると、企業にどのような影響があるのでしょうか?
発生する問題とその原因について考えてみましょう。
①IT人材不足や生産性の低下に繋がる
IT担当者は、IT関連の業務を支えるサポートデスクとしての役割を担うこともあります。
しかし一方では、システムの提案や検討、管理といった会社全体の情報・ITに関する別の業務が常にあり、サポートばかり行っていると、より重要な業務を進める時間が無くなってしまいます。
その結果、IT担当者が過度に残業させられてしまってストレスを抱え、聞いてくる社員のIT能力不足から「この会社大丈夫か・・・」と危機感を感じてしまう、更には、将来に不安を感じて辞めてしまうこともあります。
もっと酷いケースでは、IT介護に時間を取られて重要な業務に遅れが生じていた場合に、IT介護をしていた相手(上司)から、
「今まで何やってたの?」
と詰められるといったことも発生します。
そんなことがあると、IT担当者のモチベーションは大きく下がります。
結果、会社全体の生産性低下に繋がり、人材不足に陥る可能性もあるでしょう。
②社員のITリテラシーが上がらずDXやIT化が進まない
IT介護に時間を割けば、その場は何とか解決します。
しかし、もちろん「介護」された社員や役員のITリテラシーが向上するわけではありません。
彼らに学ぶ姿勢が無ければ、同じようなことを逐一聞いてきて、問題は全く解決しないでしょう。
このような状態では社内のITリテラシーは上がらず、DXはもちろんのことIT化は進みません。
企業が進化できないとなると、事業の成長性や収益性など、あらゆる点で他社から遅れを取ります。
最悪の場合、事業の縮小や廃業・倒産に繋がるかもしれません。
ただの流行り言葉だと思って甘くとらえていると、大変な状況に陥りかねないリスクがあります。
IT介護に対処するには?
会社を破壊しかねない「IT介護」という問題ですが、まだ問題提起が始まったばかりで、企業レベルで対処できた具体的な事例は見つかりません。
ですが、「こうすれば良いかもしれない」といった解決策はいくつか提唱されています。
①IT関連のサポートデスクを外注・業務委託する
IT担当者とは別に、初歩的な疑問やトラブルを解決してくれるサポートデスクを外部から雇うと、IT介護問題の解消につながります。
コストはかかってしまいますが、IT担当者を含む従業員は細かいトラブルについていちいち質問されることがなくなるため、本来やるべき業務に集中できるようになるでしょう。
②人事・給与制度にITリテラシー関連の基準を設ける
人事・給与制度にITリテラシーの評価項目を設けて、ITリテラシーを身につけようとしない、学ぼうとしない社員の待遇を下げるのも一つの手です。
場合によっては社員からの反感を買うこともある施策でもあるので、事前にしっかりと通達しておくことが必要になります。
③勉強会の開催やマニュアル共有を徹底する
社内外で開催されているITに関する勉強会やセミナーに研修として参加させる、基本的なツールの操作方法やQ&Aを記載したマニュアルを共有するなど、積極的にリテラシーを身に付けてもらうような仕組みを導入しましょう。
「知らない、できない」と言うのであれば、「教えて、出来るようにする」のです。
この方法は、IT介護が減るだけでなく社内全体のITリテラシーも上がり、モチベーションや生産性の向上につながるかもしれません。
④「まずググる」習慣を根付かせる
「ググる」とは「Google検索をする」の略、つまり「自分で調べる」ということです。
分からないことがあったら、傍にいる人にすぐ聞くのではなく、まず自分でネットを使って調べる、考えるという習慣を社内に根付かせるのも有効です。
IT介護はITツールが使えない、理解できないことが問題ではなく、調べたり理解したりせずにすぐ人に聞くことが大きな原因なのです。
現代のITツールはそこまで複雑ではなく、苦手な人でも使いやすいような工夫が施されたツールも増えてきています。
ちょっとした操作方法やトラブルなら、ネットで調べれば大抵のことは解決するはず。
まず「ググる」習慣を社内に浸透させると良いでしょう。
IT介護を根本から解決するには
この記事では、 IT介護の問題や対処法について解説しました。
一部の社員だけでなく、全員のITリテラシーが向上すればIT介護は無くなります。しかしながら、高齢な社員・役員がITを学ぼうとしないことが、大きな障害になっているのが現実です。
今後も会社の規模を問わず、IT介護の問題は増えてくるでしょう。今から社内で問題提起を行い、対策を進めることをおススメします。