毎年、3月頃になると目にするようになる、「青色申告」という言葉。
副業者、フリーランスであれば、確定申告する際に絶対知っておくべき言葉でもあります。
青色申告、白色申告とは?
青色申告とは、確定申告の手段の一つで、事業における日々の収支、取引や経費等の詳細な記録、帳簿を元に申告するものを指します。
青色申告を利用する際には、「正規の簿記の原則にしたがって作成された帳簿の備え付け」が義務付けられており、「複式簿記」、「簡易簿記」のいずれかを選択する必要があります。
個人事業主やフリーランスの方の大半は、多くの場合この青色申告を利用することになりますが、そのためには開業届と一緒に「青色申告申請承認書」を税務署に届けなければなりません。
【参考】個人事業主なら提出すべき開業届の基礎知識と2つのメリット
一方、白色申告とは、青色申告を利用しない場合に適用される申告手段です。
青色申告とは異なり、非常にシンプルな帳簿や書類だけで申告手続きが完了します。
青色申告のメリット、デメリット
それでは、青色申告のメリット、デメリットについて見ていきましょう。
メリット1:青色申告特別控除の適用
最高65万円の「青色申告特別控除」の適用があることは青色申告を選ぶべき最大の魅力と言えます。
特別控除の適用により所得税や住民税の税率、納税額が減り、大きな節税効果を見込めるでしょう。
控除額は3段階に設定されており、
簡易簿記の場合には10万円、
複式簿記の場合には55万円、もしくは、65万円の控除となります。
メリット2:純損失の繰越控除の適用
純損失の繰越控除とは、事業経営において赤字が発生した場合、その損失額の全てを翌年以降、最大3年まで繰り越すことが認められることを意味します。
損失を繰り越せるというのがどういう意味かと言うと、例えば、
去年は100万円の赤字だったが、
今年は200万円の黒字だったとします。
損失が繰り越せなければ、今年の200万円の利益に対して税金を払わなければなりませんが、
損失を繰り越せれば、去年と今年の損益を通算し、200万円-100万円で、今年、100万円の利益に対してだけ税金を払えば良い、ということになるのです。
実際は細々とした条件がありますが、赤字額を繰り越し、その年の所得額を減らせば所得税の課税率が下がり、同じく節税につながると、大まかにでも覚えておくと良いでしょう。
メリット3:青色専従者給与
特に個人事業において、事業主が自身の配偶者や親族を従業員として雇った場合、彼らに支払う給与や報酬の全額を経費として計上することができます。
この場合、配偶者控除や扶養控除との併用はできないため注意しましょう。
メリット4:少額減価償却
通常、事業に必要なものとして取得した10万円以上のものは、固定資産として数年に渡って減価償却、つまり経費に計上します。
しかし、青色申告の場合、最大で30万円未満のものならば一括でその年の経費として計上できます。
つまり、利益が出そうな年に、25万円でパソコンを新調し、一括で経費として計上するということが可能になるわけです。(※税金の節約につながります)
メリット5:家事按分の適用
家事按分とは、自宅の一室を事業所、事務所として使用する際に家賃や光熱費、通信費等をプライベートとビジネス用に仕分ける考え方です。
青色申告を利用することで家事按分が適用され、費用の一部を経費に落とせます。
生活費に近い位置づけではあるものの、事業で使っているということが言えれば、それを経費扱いにして、利益を少なく見せることができる。
つまり、税金を減らすことが出来る、ということになります。
デメリット1:事前申請が必要
節税の観点において青色申告は非常に魅力的ですが、冒頭でも述べたように青色申告を利用するには開業時の事前申請が必須となります。
提出期限は事業を開始してから原則1ヶ月以内で、期限に遅れた場合や提出し忘れてしまうと利用できません。
デメリット2:帳簿付け、書類の作成が面倒
事前申請に加え、青色申告を利用するためには非常に複雑な帳簿付けや書類の作成が必要であるため、手間と時間がかかります。
特に複式簿記で申告する際には、1つの出費に対し、その日付、借方、貸方、摘要の4項目を全て記入する必要があり、決算書の枚数は4ページに渡ります。
白色申告のメリット、デメリット
次に、白色申告のメリット、デメリットを見ていきましょう。
メリット1:事前申請が不要
白色申告は青色申告を利用しなかった場合に適用されるため事前に申請する必要はありません。
つまり、青色申告の事前申請をしないと自動的に白色申告が適用されます。
メリット2:帳簿付けがラク
白色申告の帳簿付けは青色申告に比べて圧倒的にラクです。
単式簿記と呼ばれる、簿記や経理に精通していない方でも容易にできる方式で帳簿付けをします。
領収書や収支記録は白色申告の場合でも必要となるため、大事に保管しておきましょう。
デメリット1:特別控除などの特典がない
白色申告の場合、青色申告で適用され節税効果が見込まれる各種特別控除などの特典がありません。
赤字の繰越に関しては、「変動所得の損失」、「被災事業用資産の損失」の金額のみ繰越が可能で、その他損失額は翌年以降に繰り越して計上することはできません。
デメリット2:節税効果があまりない
白色申告の場合でも専従者への給与を経費として計上し、確定申告の際に控除を受けられますが、全額ではなく最大86万円という上限が設けられています。
その他控除や特典に関しても青色申告ほど充実していないことから、節税効果をあまり期待できません。
まとめ
申告のしやすさ、手間の観点からは白色申告の方が圧倒的に魅力的ですが、節税など事業経営にプラスになる要素が多いため可能な限り青色申告を利用するのが良いでしょう。
会計ソフトやe-taxなど経理のオンラインサービスを利用すれば複雑な帳簿付けや申請も簡略化できます。
事業者として、賢く税金を納めるようにしたいものですね。