最近よく耳にする「ジョブ型雇用」。
そもそも「ジョブ」って、日本語で「仕事」じゃないの?
「ジョブ型」ってどういうこと?
と素朴な疑問を持たれている方もいるかもしれません。
ここでは、ジョブ型雇用とは何なのか、それに相対する概念であるメンバーシップ型との比較を含めながら紹介していきます。
ジョブ型雇用とは?
ジョブ型雇用とは、その名の通り、ジョブ(業務)に対して、最適な人材を見つけ採用する雇用手段の一つです。
日本では、一般職や総合職という大きな枠組みで新卒を一括採用する「メンバーシップ型」が一般的です。
しかし、欧米をはじめ海外の企業では「ジョブ型」が主流となっています。
日本でもジョブ型が広まりつつある背景
近年では、日本でも日立製作所や富士通、KDDIを始めとする大手企業がジョブ型雇用を採用しています。
中途採用をはじめ、幅広い分野で徐々に広まりつつあります。
その背景には主に以下の2点が大きく影響していると考えられます。
①働き方の多様化
まず、リモートワークやフレックスタイム制など、ワークスタイルの多様化にはじまり、年功序列など従来の賃金報酬体系への不満の高まりが挙げられるでしょう。
また、ジョブ型雇用によって転職の敷居が低くなることで、皆それぞれが最適な職を見つけられる、充実したライフスタイルの形成につながるなどのポイントもあるでしょう。
②人手不足の進行
日本社会全体の問題として、AIやIT、ロボット産業やビックデータなど第4次産業における専門職の人手不足も、ジョブ型雇用の広まりに大きく影響しています。
以前まではプログラマーやエンジニア、データサイエンティストなどの人材は特定の企業にのみ求められていましたが、近年では業種や業態問わず多くの企業でニーズの高まりを見せています。
高度な専門職は、メンバーシップ型だとなかなか育成が難しかったりします。
彼らのような専門職を確保する一つの手段としてジョブ型雇用は非常に効率的なのです。
ジョブ型、メンバーシップ型雇用の比較
「仕事」、「会社との関係」、「報酬」「採用」の4点に関して、ジョブ型とメンバーシップ型雇用を比較していきましょう。
ジョブ型の場合
仕事
ジョブ型は、仕事や業務に対し人材が割り当てられるイメージで、入社時点において従業員のタスクや役割はすでに決定しています。
そのため、従業員は基本的に契約に記載された業務のみを行うことになり、会社の一方的な都合による転勤や配置転換など人事異動は原則として起こらず、企業側も簡単に業務変更の指示はできません。
会社との関係
会社と社員の関係はフランクで薄くなり易くなります。
仕事やポジションの獲得、スキルアップ等、従業員は自主的に動くことになります。
報酬
ジョブ型の場合、報酬は基本的に「職務給」で受け取ることになります。
職務給とは、担当する業務の内容やスキル、専門性によって報酬額が決まる賃金制度です。
年齢や勤続年数問わず高いスキルと知識があれば高収入を見込めます。
採用
基本的に、特定の業務に従事することが期待され、特定領域のプロフェッショナルとして採用されます。
メンバーシップ型の場合
仕事
メンバーシップ型とは、その名の通り会社という組織の一員として働くイメージで、従業員のタスクや役割は企業側が決めていきます。
業務に関しては非常に幅広い分野での活躍が求められることから、スキルアップのために未経験の分野の業務も任されることもあります。
会社との関係
従業員は会社と密接な関係を築きながら企業に貢献することを主な目的として求められ、入社後、企業の都合により転勤や人事異動を言い渡されることも頻繁にあります。
報酬
メンバーシップ型の場合、報酬は基本的に勤続年数で変動する職「能」給となります。
スキルや知識、実績次第で収入に当然差はつきますが、ジョブ型と比べると大きな差がつきづらく、横並びになる傾向にあると言えます。
採用
総合職、一般職などざっくりとした括りで採用され、仕事に必要なスキルや知識は研修や実務を通して身につけます。
ジョブ型雇用の企業側、求職者側の注意点
ジョブ型雇用の導入には、注意点があります。
企業側、求職者側の注意点について見ていきましょう。
企業側
契約内容以外の業務を指示できない
ジョブ型雇用の場合、原則として、締結した契約内容に記載されていない業務を従業員に指示することはできません。
そういう意味では、他の部署から人を充ててカバーしたりすることができないため、柔軟性に欠けると言えるかもしれません。
雇用維持にコストと手間がかかる
人材が流動的であることが前提であるため、待遇や環境次第で別の企業に転職する、人材が引き抜かれてしまうということもしばしば起こり得ます。
自社でしか通用しない社内政治や社内調整ではなく、プロフェッショナルとして汎用的なスキルがあるのですから、ある意味当然とも言えます。
よって、企業は、従業員に継続的に働き続けてもらうために常に従業員の満足度を意識し、雇用環境や報酬に気を配り続けなければなりません。
雇用を維持するため企業は常に競合他社の動向を調査し、より良い待遇を従業員に提供する必要があるため、それだけコストと手間を要します。
求職者側
常にスキルアップを求められる
ジョブ型の場合、スキルや専門性に対して報酬が発生することから、求職者は常にスキルを磨き続けることが求められます。
特定の企業の社内でしか通用しない社内ルールや社内政治に強くなっても、意味がありません。
業務時間内における教育や研修制度もないことが多いため、プライベートな時間をスキルアップのための勉強に費やすこともあるでしょう。
社内では潰しがききにくい
とある領域でプロフェッショナルになったとしても、社内でその職種に対する需要がなくなったり、競争が激しくなったりすると、潰しがきかなくなったりします。
そうなると、次の職場を求めて、社外に出るしかなくなってしまうことがあります。
ですので、自分が専門領域としている職種は今後どうなっていくのか、常にアンテナを張り、必要に応じて自分を変化させ続ける気概と勉強が必要になると言えるでしょう。
まとめ
ジョブ型雇用は、良い点もたくさんありますが、企業側の在り方や、求職者側の価値観によって、向き不向きがあると言えます。
それらをしっかり見極めた上で導入を検討するなり、転職するなり、といった判断をしていく必要があるでしょう。