「三人寄れば文殊の知恵」という言葉があります。
昔から、集団で何かに取り組むことは善いこととされてきました。
しかし、実は必ずしもその通りではありません。
今回はどんな組織でも起こり得る「グループシンク」と呼ばれる現象について、その要因や弊害、対策について解説します。
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グループシンクとは?
グループシンクとは、集団で意思決定したり、何かの事業に取り組んだりすると、個人で動く場合よりも楽観的、短絡的になり、不合理な結果をもたらしてしまう現象を意味します。
集団浅慮、と言われることもあります。
これは、アメリカの心理学者、アーヴィング・ジャニス氏によって提唱された理論。
学校教育やビジネスシーンなど、幅広い分野でみられる現象です。
グループシンクに陥るメカニズム
しかし、一体なぜ、集団だと、
- 個人で動く場合よりもパフォーマンスが落ちる
- 不合理な結果が出たりする
といったことが起こるのでしょうか。
その最大の要因は、ズバリ「同調圧力」とされます。
同調圧力が強い組織やチームで何かの事業に取り組むと、個人の意見はあまり尊重されません。
集団全体にとっての利益の方が優先されてしまいます。
多くの人員とコストをかけて始めた大規模なプロジェクトで、何か欠陥が見つかったとしても、誰もそれを指摘しないということが起こり得ます。
その結果、手遅れになった、引き返せなくなった、ということはよく起こります。
これは、グループシンクによるものです。
グループシンクが職場で起こる主な要因
組織内の同調圧力に加えて、グループシンクが発生する要因はいくつかあります。
一般企業などの「職場」において、グループシンクを引き起こす主な要因について見ていきましょう。
1. 社員の結束力、仲間意識が高い
特に小規模な会社、昔ながらの会社など、社員同士の仲がよく、結束力が強い職場では、グループシンクが起きやすくなります。
もちろん、仲間意識が高いこと自体は決して悪いことではありません。
しかし、お互いに依存しすぎると、欠点が見えづらくなります。
また、チームが間違った方向に行ったとしても気付けなくなることもあります。
2. 強力なリーダーがいる
大きな権力を持っている人や、カリスマ性のあるリーダーが身近にいる場合にも、グループシンクに陥りやすくなります。
多くの人に慕われるリーダーの存在は、組織にとってプラスの側面が大きいのも事実。
しかし、彼らに魅了され過ぎてしまうと、正常な判断力が損なわれる可能性があります。
- 「ちょっとおかしいな、大丈夫かな」
- 「このままじゃマズイのでは」
と一部の人が気付くことはもちろんあります。
しかし、リーダーの支持者の方が大多数だと、そのパワーに飲み込まれてしまうでしょう。
3. 秘密性が高い
グループシンクは、比較的大きな組織単位で発生するケースが大半。
しかし、一部の部署など、比較的小規模な範囲で発生するケースもあります。
特に、秘密性が高く、外部の人間が簡単に干渉できない、いわゆるブラックボックス的な部署、チームなどはグループシンクに陥りやすいもの。
一度その状態ができてしまうと、改善のための働きかけも困難になります。
4. 大きなストレスがかかっている、引き返せない状況にいる
たとえ最初は健全な状態だったとしても、
- 残業や長時間労働が続き、心身に大きな負荷がかかっている
- すでに莫大なコストや手間をかけたプロジェクトの渦中に立たされていたりする
といった場合にも、正常な判断が困難になり、グループシンクに陥りやすくなります。
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グループシンクの主な弊害
グループシンクが発生すると、以下のような弊害が起こります。
1. 組織の風通しが悪くなる
グループシンクによる一番大きな弊害は、組織内の風通しが悪くなることです。
ただ言われたことをやるだけで、上には意見せずに従うといった風潮ができてしまうと、正常な判断ができなくなったりします。
不正も起きやすくなります。
2. 社員が強いストレスに晒される
グループシンクが発生している状態を放置しておくと、いつの間にか多くのストレスを抱え込んでしまいます。
その結果、ある日突然、心が折れてしまったり、働けなくなってしまったりする社員も出てきます。
3. リーダーが独裁的になる
グループシンクに陥っている組織では、リーダーが何か間違ったことをしていたり、不正を働いていたりしたりすることがあります。
しかし、誰もそれを指摘できないため、リーダーが独裁的になりがちです。
グループシンクを防ぐためには?
それでは、どうすればグループシンクを防ぐことができるのでしょうか。
第三者の目線を入れる
グループシンクの発生を未然に防ぐためには、意思決定において、他の部署、チーム外の社員など、第三者の意見を取り入れます。
「常識的に考えて、それはおかしくないか?」
という、多くの人が思っていることを、しがらみなく発信してくれる人です。
誰か、客観的にブレーキをかけてくれる人の存在を確保しておきましょう。
グループシンクに陥らないようにしよう
「右に倣えの精神」が深く根付いている日本社会。
グループシンクはどんな組織でも起こり得るもの。
他人事として捉えてはいけません。
一度グループシンクが起きやすい環境ができてしまうと、それを改善するのは現実的に困難かもしれません。
しかし、だからと言ってそのまま放置しておくと、社員が精神を病んでしまったり、離職してしまったりと、会社は多くの不利益を被ることになります。
日頃から意思決定において客観的な意見を取り入れたり、利害関係のない第三者を確保したりして対策しましょう。