求人に応募する際に、その内容をしっかり吟味する必要があります。
上手い言葉に乗せられて就職してしまうと、労働力を搾取される危険性があります。
ここでは、求人詐欺の被害に遭わないために、よくある手口と心構えについて詳しく解説していきます。
【参考】みなし残業=ブラック?導入している企業に応募の際の注意点
求人詐欺とは?
求人詐欺とは、求人情報に記載していた内容とは異なる労働条件や待遇で働かせたり、求人情報にあえて曖昧な表現を使うことで、求職者を騙し、不当な扱いをしたりする行為を意味します。
実際には法の目の搔い潜っているパターンも少なくありません。
尚、求人側と求職側は、基本的に利益が相反する関係にあるため、これは昔からある問題。
2018年の職業安定法の改正により、求人詐欺は年々減少傾向にあると言われています。
しかし、それでも後を断たないのが実情です。
求人詐欺に引っかかり、そのまま入社してしまうと労働力を不当に搾取された挙句、離職を強いられたりするなど、労働者が多くの不利益を被ってしまいます。
被害に遭わないためには、その手口を熟知して、求人詐欺を見分ける他、有効な手段はないと言えるでしょう。
求人詐欺の主な手口
求人詐欺は、大抵、以下のようなパターンで行われます。
まずは、賃金関係から見ていきましょう。
1. 各種手当を残業代の代わりにして、残業代を支払わない
会社が、法定労働時間を超えて従業員を働かせたり、休日出勤させたりする際には、法律に基づいて、割増賃金を支払わなければなりません。
しかし、会社が独自に営業手当や休日手当を設定し、それを残業代の代わりにしていることがあります。
本来支払うべき残業代を支払わず、不当に長時間労働を課したりするのです。
2. 固定残業代で賃金を水増し表記する
次に、基本給を固定残業代で水増しして求人情報に表記するのも、求人詐欺の典型的な手口。
これは、数ある求人票の中で、求職者の注意を惹くために行われます。
固定残業制は、みなし残業制とも呼ばれます。
一定時間内の残業ならば同一の割増賃金を支払うという制度です。
制度自体は合法ですが、それを使って故意に誤解を与え、人を募集しようとする会社は、碌な会社ではありません。
次に、就業時間や残業関連について見ていきましょう。
3. 残業なしと記載しながら、残業をさせる
求人では「残業なし」を謳っていたのに、実際には残業をさせるケースがあります。
これは、「人手が足りないんだからしょうがないでしょ」と言ったり、
もしくは、人事担当者と現場の認識がズレているがゆえに起こったりもします。
4. 記載していた勤務時間とは異なる時間帯に労働を課す
勤務時間に関しても、気を付けねばなりません。
- 例えば午前10時から午後6時までと記載されていたのに、実際には夜勤をさせられる
- 完全週休2日とあったのに、休日出勤が常態化している
これらも求人詐欺の典型的な手口です。
5. 裁量労働制であることを伏せておき、入社後に通告する
また、裁量労働制を利用した詐欺行為もよくあるパターンの一つです。
裁量労働制は、一定の業種を対象とし、労働時間を実労働時間ではなく、あらかじめ一定の時間とみなす制度です。
業種や業態によっては、労働者から嫌がられる制度だったりします。
そして、裁量労働制を採用していることが、求人票や面接では伏せられていたりします。
それでいて、裁量労働制であることを入社後に通告することで、不当に長時間労働を課したり、残業代の支払いを拒んだりするための口実として利用するのです。
6. 採用した部署とは別の部署に勝手に配属する
更に、
- 採用した部署とは別の部署に配属する
- 入社後すぐに異動させたりする
といった行為が挙げられます。
例えば、
- 本来は専門職として採用した社員を、人手不足や研修の一環などの口実で店舗運営などまったく別の部署に配属する
- 最初は採用条件の通りに配属したが、数日や数週間で無理矢理異動させる
といったケースがあるようです。
7. 名ばかりの管理職として扱う
管理職として採用される場合も、注意が必要です。
管理職は、一般的な労働者よりも待遇が良いという特徴があります。
しかし、いわゆる「名ばかりの管理職」として扱われてしまうと、厄介です。
- 長時間労働を課される
- 残業代が支払われない
など、不当に労働力を搾取されるだけになってしまいます。
「名ばかり管理職」は、大手ハンバーガーチェーンで問題になった件でもあります。
しかし、「名ばかり管理職」の判断は線引きが難しいこともあり、今でもあちこちで横行しています。
被害に遭わないための心構え
求人詐欺のほとんどは、入社してからその実態が発覚するケースがほとんど。
遭わないよう未然に防止するのは、実際のところなかなか困難です。
しかし、求人に応募する前に、
- そこで働く社員の口コミをネット上でチェックする
- 会社の評判についてSNS等でリサーチしておく
といったことで、優良な会社なのか、それとも悪徳な会社なのか、ある程度判断することもできます。
少しでも不明な点や曖昧な点がある場合には、面談時など、採用担当者と直接、その内容について確認しておくことも重要です。
求人詐欺案件をなるべく回避しよう
実際のところ、見極めるのはなかなか難しいのですが、
- 数値化できない曖昧な表現を使っている
- 面接の場で求人情報とは異なる条件をいきなり提示してきたりする
このような会社は、求人詐欺を行っている可能性を疑ってかかるべきでしょう。
なるべく早めに見切りをつけ、関わらないのが一番です。
もしもの時のために、応募した求人広告のコピーは必ずとっておくようにします。
そして、被害に遭った思ったらすぐにホットラインや自治体の労働局等に相談し対処してもらうというのも手です。