労使協定、就業規則、労働協約の違いをざっくり解説
- 2023/6/12
- 就転職・人事
組織の一員として働く際には、使用者とさまざまな取り決めを共有することになります。
労働条件についての取り決めはもちろん、他にも色々とあります。
特に、
- 労使協定
- 就業規則
- 労働協約
この3つはよく耳にすることになるでしょう。
会社に雇われる側として最低限知っておくべきこれら3つの取り決めの、主な内容や特徴、役割について詳しく見ていきましょう。
労使協定とは?
まず、「労使協定」について見ていきましょう。
これは、労働者が働く条件の最低基準を定める労働基準法において、通常認められない労働条件を労働者に課す場合に締結することになる協定です。
会社と会社の労働組合、もしくは社員の代表との間で、書面によって交わします。
これは、双方の合意の上成立させる必要があります。
協定の内容にその適用範囲が記載されていない場合、その会社に勤めるすべての従業員が対象となります。
労使協定の役割や目的
たとえば、
- 時間外労働や休日出勤などの指示や命令を課す場合
- フレックスタイム制やみなし残業制、裁量労働制などの特殊な賃金体系を導入する場合
- 年次有給休暇を従業員が取得した際の賃金体系や、時間単位の有給を認めるなど付与の仕方を変更する場合
に必要となります。
もちろん、労使協定を結べば、法外なことが全て許されるわけではありません。
特例として認められるのは、労働基準法における14項目の内容のみとなっています。
就業規則とは?
就業規則とは、雇用主と労働者の間の雇用に関する基本的なルールを定めたものです。
10人以上の労働者がいる会社に作成が義務付けられ、作成した後、所轄の労働基準監督署に届出をする必要があります。
これは、会社ごとではなく、事業所ごとに作成する必要があります。
主に
- 始業・終業時刻
- 休憩時間
- 休日
- 休暇の取得
- 賃金の決定
- 支払い関連
- 退職や解雇に関する内容
- 手当や補償
- 安全・衛生
等に関する内容を記載します。
就業規則に記載すべき内容について、従業員からヒアリング等を実施する場合があります。
しかし、基本的には、会社側の裁量で一方的に制定されることになるでしょう。
その会社で働く全ての従業員が適用となり、民事的な権利義務が発生するのが特徴的です。
役割や目的
作成義務が発生しない、小規模な事業所の場合でも、就業規則を作成する必要があります。
これによって、会社、従業員の双方に多くのメリットがあります。
たとえば、副業に関するルールを決めることで、会社は従業員の労働時間や労働実態について把握しやすくなります。
一方で、従業員側も自由な働き方の実現ができるでしょう。
また、深刻な社会問題の一つでもあるパワハラ、セクハラ問題に関して、どのような言動がそれらに該当するのか、あらかじめ明記すれば、社内問題の発生を抑止できます。
万が一、そのようなことが起きてしまった場合も、対処しやすくなるでしょう。
その他にも、大きなトラブルに発展しやすい、退職関連の問題。
- 具体的にどのような行為をしたら解雇されるのか
- 退職金はどれくらい支給されるのか
これらをあらかじめ明記しておくことで、トラブルの防止や規律の遵守につながるでしょう。
労働協約とは?
労働協約とは、会社と労働組合との間で、組合員の労働条件や活動内容についての合意を書面にまとめたものです。
労使協定が、労働組合に属していない従業員にも適用されるのに対し、労働協約はあくまで組合員のみを対象とします。
協約の中身は、
- 就業時間中の組合活動に関するルール
- 会社設備の利用、団体交渉のルール
- 昇給や賞与、人事の決定基準
などが含まれます。
役割や目的
労働協約は、組合員として活動を行うことで、会社に不当な待遇をされたり、妨害されたりすることを防ぐ狙いがあります。
団体交渉権をしっかり行使するために非常に重要な取り決めとなるのです。
【参考】労働組合とは?加入の前に知るべきメリット3つと注意点3つ
労使協定、就業規則、労働協約の違いを理解しよう
以上の内容をまとめると、労使協定と就業規則は、その会社で働くすべての社員に適用され、労働協約は労働組合員に適用される取り決めという位置付けになります。
労使協定はあくまで、労働基準法の例外を認めるための合意を取りまとめたもの。
そのため、協定自体に規律としての機能はありません。
しかし、就業規則、労働協約には規律としての機能があります。
そのため、会社も、労働者もその内容を遵守する義務が発生します。
会社、労働者、お互いが信頼関係をしっかり構築するためにも、それぞれの違いや特徴、目的や役割についてしっかり理解しましょう。