ドラッグストアに行くと詰め替え用製品がたくさん売られています。
詰め替え用の洗剤とボトル入りの洗剤を見比べて、「詰め替えのほうが安いだろう」と安易に考えてカゴに入れた経験はありませんか。
でも、ちょっと待ってください!
落ち着いて数字を見てみましょう。
よくよく見ると、グラム単位に換算した場合に、詰め替えのほうが割高になるケースもあります。
多くの人は、ボトルがない分、詰め替えのほうが安そうだと考えますが…
しかし、そうとは限らないのが現実。
なぜこんなことが起こるのでしょう?
実は詰め替え用がボトル入りより割高になる現象には、 マーケティングを考えるうえでの重要なヒントが隠されています。
この記事では企業がなぜ詰め替え用を売るのか、詰め替え商品販売に隠された戦略をビジネス視点で解説します。
起業をしたいと考えている方や自社のサービスや価格設定で悩まれている方にも、消費者として商品を選ぶときにも役立つ知識です。
ぜひこの記事を参考にしてみてください。
詰め替え用のほうが安い?
スーパーやドラッグストアにはありとあらゆる日用品の詰め替え用が売られています。
そもそも、詰め替え用はそれほど人気があるものなのでしょうか。
業界初の詰め替え用化粧品を開発した株式会社ちふれが行った意識調査では、98パーセントの人が何かしらの日用品の詰め替えを買ったことがあると回答しています。
内訳は以下の通りです。
1位 ヘアケア用品(95%)
2位 洗濯用洗剤(86%)
3位 食器用洗剤(84%)
4位 メイク用化粧品(51%)
5位 スキンケア化粧品(49%)
昨今のエコ思考の高まりもあってか、日常的に詰め替え用商品を選ぶ顧客は多くいることがわかります。
しかし、ボトル入りより割高な詰め替え用が売れるのはメーカーにとって都合が良い状態かもしれません。
顧客は安いものを選びそうなものですが、なぜ詰め替え用が売れるのか、その裏にある心理を考えてみましょう。
実はよくあるマーケティング手法
製造コストで見れば、当然ボトル代のかからない詰め替え用の方が安いはずです。
では、なぜボトル入りより詰め替え用のほうが割高で売られているのでしょうか。
実は詰め替え用が割高というわけではなく、「ボトル入り製品の価格が低く設定されている」ことがその一因と言われています。
「たとえ利益が出なくても、まずはボトル入りを買わせたい」という気持ちがメーカー側にあるのです。
なぜなら、ボトル入りを一度買ってしまった人には、次もまた同じブランドの詰め替え用を詰め替えたくなるという心理が働くからです。
一度ボトルが消費者の家に置かれてしまえば、長期的な顧客になってくれる可能性が高いとメーカーは考えています。
最初はボトル入りで利益が出なくても、次から詰め替え用を買ってもらえれば利益が出ます。
長期的に同じ商品をリピートしてもらうことで、詰め替え用が売れれば売れるほどメーカーに利益が出る仕組みです。
足元の数字よりも、LTVを高める戦略、ということにでもなりますでしょうか。
【参考】LTVとは?マーケティングの重要用語を計算式を交えて解説
このように、入口の販売価格を下げて手に取ってもらいやすくし、その後の消耗品販売で儲けるというのはよくあるマーケティング手法。
これと同じ手法を使った身近な例では、プリンターが挙げられます。
家庭用プリンターのインク交換の際、インク代が高いと感じることはありませんか?
これは、プリンター本体の価格を安く設定してまず本体を顧客に買ってもらい、その後インクを売ることでメーカーが利益を出しているからです。
詰め替え用と同じ戦略が見られます。
他には、エレベーターなども、初期費用を安く設定して、まず導入してもらい、その後の保守メンテナンスで利益を出す仕組みを使っています。
また、情報システム開発でも、開発・導入にかかる初期費用をあえて下げておき、その後の定期保守(月額など)で儲けるというのはよくあるパターンです。
詰め替えではありませんが、似たような手法がネットショップや昔ながらの通販でも使われています。
「入口商品」「フロントエンド商品」などと呼ばれる格安商品をつくり、その後に買ってもらう「バックエンド商品」をセットで設計し、利益を得るという方法です。
入口のハードルを下げよ
どの事例でも企業はとにかく入り口のハードルを下げることに注力しています。
個人の顧客であれば、高い商品をいきなり買うのはリスクが高すぎて及び腰になるのは当たり前。
また、企業であっても大きな金額が動く場合は、社内で承認を取るのが大変などの事情が背景にあったりもします。
最初にかかる費用を安く設定して購入のハードルをとにかく下げることは、マーケティング手法として有効と考えられています。
そのような戦略のもと、企業は詰め替え用よりボトルを安く売ろうとしているのです。
結果として、詰め替え用のほうが割高になるという逆転現象が起こっているのです。
サービスや価格設定の参考にしよう
今回は詰め替え用が割高になるのはなぜかについて解説しました。
その現象の裏には、最初は赤字覚悟でもとりあえず食い込んでおき、後でリピートさせたり、メンテナンスを利用させたりして、利益を回収していくビジネスモデルを見ることができます。
自社サービスの価格設計の際にも、賢い消費者としてお買い物をする際にも、ぜひこの手法を理解し、活用してみてください。