最近、管理職になりたくない、という人が増えているそうです。
一方で、
- 給料が良い
- 自由度高く働ける
- 出世したように見える
と言ったポジティブな印象があるため、管理職を目指す人もまだまだ大勢います。
しかし、「肩書きだけ」の管理職にさせられてしまうと、苦労するだけかもしれません。
ここでは、知らずになると大変な、名ばかり管理職について、そのリスクや見極め方を紹介します。
労働力を搾取されるだけの「名ばかり管理職」
昨今、労働力だけをただ会社に搾取される「名ばかり管理職」が急増しているとされます。
名ばかり管理職とは、文字通り何の権限も自由度もない、給料も通常の従業員と変わらない、実質的に肩書きだけの管理職を指す言葉。
労働基準法41条「管理監督者には労働時間規制を適用しなくてもよい」等を会社側が悪用し、
- 法外な労働時間を押し付ける
- サービス残業をさせる
といったことをするのです。
名ばかり管理職になりやすいのは、
- 一般的な企業では、課長~部長クラスの役職
- 小売店や飲食店などでは、店長や支店長
が該当するでしょう。
名ばかり管理職の過去の判例
名ばかり管理職については、過去に裁判になった事例が複数確認できます。
日本マクドナルド
まずは、日本マクドナルド。
直営店の店長が会社側を訴えた、有名な事例かもしれません。
店長は、管理監督者との肩書ではあるものの、実質的には一従業員のような働き方でした。
これに対して、店長を「管理監督者」とみなし残業代を支払わなかったのは違法である、として提訴しました。
東京地裁は過去2年分の未払い残業代、約750万円を支払うよう命じています。
SHOP99
次は、かつて存在した、コンビニの「SHOP99」。
元店長が、十分な権限や裁量が与えられていないのに、管理職として残業代が払われなかったとして、未払残業代を請求した事例です。
東京地裁は、会社側に慰謝料を含めた未払い残業代約450万円の支払いを命じました。
コナミスポーツクラブ
次は、都内複数店舗がある、コナミスポーツクラブ。
これも同じく、元支店長が管理職と見なされ、残業代が支払われないのは不当だとして未払残業代を請求した事例です。
東京地裁は、付加金を含めた未払いの残業代約400万円の支払いを会社側に命じました。
こうしてみると、店舗の店長や管理職が未払残業代を請求するケースが多いようです。
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名ばかり管理職になると被るリスク
名ばかりの管理職になると、残業代が支払われないだけではありません。
具体的には、以下のようなリスクを被ることがあります。
長時間労働を強いられる
通常、労働者には「1日8時間、週40時間」の労働時間が労働基準法で定められています。
しかし、管理職(管理監督者)の場合にはこの規制を受けません。
その理由は、本来、管理職は経営者の代わりにいつでも柔軟に対応することが求められるためです。
しかし、名ばかり管理職の場合、これを抜け道として使われ、長時間労働を強いられるケースがあります。
鬱や過労死のリスクが高まる
日常的に長時間労働をしていると、当然、心身の健康に害が出る確率も上がるでしょう。
その結果、鬱や適応障害などの精神疾患、最悪の場合には過労死に至ることもあります。
たとえ「名ばかり」の管理職であっても、責任が大きいこともあります。
心理的プレッシャーも計り知れません。
立場上、辞めにくくなる
また、管理職という立場上、平社員のように気軽に辞めることも難しくなります。
もちろん、決して退職できないことはありません。
しかし、周囲に迷惑がかかってしまうのではないかという不安から、辞めたくても辞められないという状況に陥ってしまいます。
責任感の強い人ほど、利用されやすくなってしまうのです。
名ばかり管理職を見極めるためのポイント
もちろん、管理職になること自体が危ないのではありません。
問題は、知らず知らずのうちに「名ばかり管理職」にさせられてしまうこと。
リスクを回避するためにも、それを見極めるためのポイントを押さえておきましょう。
1、裏付けはあるか
名ばかり管理職にさせられないためには、まず「裏付け」の確認が必要です。
十分な経歴や実績はあるか、なるべく客観的に判断しましょう。
自分が本当に管理職に相応しいのか、その能力はあるのかを判断します。
特に目立った実績がなく、入社直後に管理職にされたという場合は要注意です。
2、部下はいるか
管理職には、必ず自分が管理、統括することになる部下やチームが付きます。
管理する人がいないのに管理職と言うのもおかしな話なのです。
- 部下がいるのか、いないのか曖昧になっている場合
- 部下がいたとしても十分な権限が会社から与えられていない場合
は、名ばかり管理職であることを疑いましょう。
3、賃金・報酬
管理職の人は、その立場上、賃金や報酬について他の従業員よりも優遇されていなければなりません。
基本給はもちろんのこと、管理監督者には必ず相応の手当が支給されることになります。
その有無も含め、金額が妥当なのかを比較しながら判断しましょう。
4、裁量はあるか
労働基準法による労働時間の規定が適用されないということは、自分の業務量や労働時間、出退勤時間を自由に決められるという意味もあります。
- これらの裁量がそもそも与えられていない
- 与えられていたとしても会社によって勤怠管理をされている
- 他の従業員と同じような仕事をしていたりする
このような場合も、名ばかり管理職にさせられている可能性が高いです。
名ばかり管理職にならないように注意しよう
もし自分が名ばかり管理職だと思ったら、どうすれば良いでしょうか。
まずは会社と話し合って、なるべく穏便に解決を図るのが最善ではあります。
それでダメなら、労働基準監督署に相談してみましょう。
更に、それでも解決できない場合には、弁護士に相談して判断を仰ぎましょう。