単発の仕事や、日雇い労働。
これらの言葉には、これまで、あまりポジティブなイメージはありませんでした。
しかし、近年、それが変わりつつあります。
それに関連する言葉が、「ギグエコノミー」という言葉。
この記事では、ギグエコノミーという言葉の意味を踏まえた上で、企業や働き手にとってどんなメリットがあるのか、また、どのような課題があるのか、について解説します。
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ギグエコノミーとは?
最近、SNSを始めとする各メディアで「ギグエコノミー」という言葉を耳にするようになりました。
総務省による令和元年の情報通信白書では、ギグエコノミーについて、「組織に属さず、フリーランスの立場で、インターネットを利用し、その都度単発的、短期的な仕事を受注しながら生計を立てる働き方、もしくはそれによって成り立つ経済」と定義しています。
このようなワークスタイルで生計を立てている人を、「ギグワーカー」と呼びます。
近年、インターネット上のサービス拡大と共に、その数も年々増えているとされます。
ギグエコノミーの由来
ギグ(=gig)とは、ミュージシャンが1日限りの契約で仕事を請け合うことが語源。
そこから由来して、ギグエコノミー、ギグワーカーと言った言葉が使われるようになりました。
プラットフォームの例
国内で、ギグワーカーが利用するプラットフォームを見てみましょう。
自分の好きなこと、得意なことを一つの商品として売り出せる「ココナラ」が代表例。
他にも、「タイムチケット」や「ストーリーアカデミー」などが挙げられます。
世界規模で言うと、
- 配車サービスの「Uber」
- 遊休状態の部屋を宿泊場所として旅行者に貸し出す「Airbnb」
- 海外版便利屋の「Task Rabbit」
- コロナ禍で急増した「Uber Eats」
などが有名です。
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ギグエコノミーのメリットと課題
ギグワーカーの数も増え、サービスの幅も広まりつつあります。
そのため、企業も、彼らを積極的に登用するようになりました。
ギグエコノミーのメリット
それではまず、企業視点から見たギグエコノミーのメリットについて見ていきましょう。
人件費の削減、最適化ができる
企業にとっての一番のメリットは、人件費の大幅削減が見込めることです。
常時正社員を雇用するのは、何かと割高になってしまいます。
それよりも、人手が必要になった際に単発で仕事を依頼し、その都度報酬を支払った方が、かかる人件費を最適化できるのです。
即戦力がすぐに手に入る
即戦力が必要な時すぐに手に入るのもギグワーカーを登用するメリット。
専門性や独自性が強い職種でなければ、人材の育成は原則として不要です。
「ギグワーカー=誰でもできるような仕事をしている人」と認識している人もいるかもしれません。
しかし、プログラマーやエンジニア、その他専門職に従事している人も大勢いるとされます。
一般的に、優秀な人に仕事を依頼する際にはそれなりの費用が必要。
その点、社内で人材育成から始めるよりも圧倒的にコスパ面ではメリットがあります。
人手不足解消のための選択肢になる
ギグワーカーに仕事を依頼する際には、基本的に案件ごとの単発依頼となります。
しかし、特に規定はなく、契約内容次第では、継続的に働いてもらうことも可能です。
そのため、社内で人手不足が発生している時などその問題解決の一つの選択肢となり得ます。
人員調整、つまりコストの調整も、柔軟にできるようになるでしょう。
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ギグワーカーとして働く上での課題
それでは、課題についても見ていきましょう。
信頼と仕事の質の担保
ギグワーカーを登用する上での課題としては、信頼と仕事の質を確保することです。
仕事の内容によっては、会社の機密情報や顧客情報を取り扱うこともあり得ます。
依頼者の不手際によって、それらが漏洩したりするリスクも十分に考えられます。
ギグワーカーの悪意だって、ないとは限りません。
リスクをしっかりとリスクを見極めながらギグワーカーと付き合う必要があります。
また、仕事の質にバラツキがあったりするのも要注意。
依頼者によってスキルの差があり、満足できる成果を得られないこともあるかもしれません。
面談して、場合によっては過去の仕事についても見せてもらって、しっかりと見極めることが大切です。
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ギグワーカーとして働くメリット
それでは、ギグワーカー側の視点から、働くメリットについても見ていきましょう。
自分で仕事を開拓できる
一番のメリットは、既存の職に縛られることなく自分で新たな仕事を開拓できることです。
中には、撮影やシステム開発など、専門的な仕事もあります。
しかし、その他にも、
- フリーの家庭教師として学生に勉強を教える
- 依頼者の買い物に付き添う
など、自分のスキルや特技を活かせる仕事から、これまでなかった全く新しい仕事まで対応できます。
柔軟な働き方を実現できる
コロナ禍で需要が拡大したUberEatsの配達員など、社会動向に柔軟に対応していけるのもギグワーカーとして働く魅力の一つ。
ギグワーカーは基本的にどこの組織にも、就業規則にも縛られていません。
そのため、従事する仕事はもちろん、働く時間、働き方も、全て自分の都合に合わせて変えながら働けます。
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ギグワーカーとして働く上での課題
それでは、課題についても見ていきましょう。
もしもの時はすべて自己責任
ギグワーカーは、基本的にフリーランスと同じ扱いになります。
そのため、サラリーマンが加入する雇用保険や労災には加入できません。
万が一仕事上でトラブルや事故が発生し、依頼主に損害を負わせてしまった場合、自己責任になることがあります。
また、ケガや病気で働けなくなったりした際に収入が減る分についても、自己責任です。
競争の激化によって仕事の受注量に格差が生じる
本業としてではなく、副業のギグワーカーとして働き始める人も増えてきました。
そのため、各業界で競争が激化し、仕事の受注量にも格差が生じていると言われます。
当然ですが、たとえ企業が人手不足に陥っていたとしても、能力が高い人、優秀な人から仕事を得ていきます。
そうでない人は、競争に負けて十分な収入が得られないと言う事態に陥ることもあり得ます。
それゆえ不安定になりやすいのは、ギグエコノミーの課題であると言えるでしょう。
ギグエコノミーの波に上手く乗っていこう
働き方が多様化する今の時代。
ギグエコノミーは、非常に有用性の高いワークスタイルの一つになることは間違いありません。
一方で、ギグワーカーの力を借りる企業、ギグワーカーとして働く人、双方に解決すべき課題が残されているのも事実。
リスクやデメリットもしっかり考慮した上で、上手く活用していきましょう。