会社で発生するハラスメント関連の問題に対しては、法整備が進んできています。
まだまだ十分とはいえないものの、対処はしやすいはず。
しかし、こと「クラッシャー」の問題は、そう簡単にはいきません。
ここでは、最近話題になることも多いクラッシャー上司について、その特徴や傾向をはじめ、企業が講じるべき対策について解説します。
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クラッシャー上司とは?
クラッシャー上司とは、プレイヤーとして仕事ができ、有能であるがゆえに、出来の悪い部下に圧力をかけて精神的に追い込み、部下を潰しながら出世していく、モンスター社員の一種です。
精神的攻撃を仕掛けてくるという点は、パワハラと共通しています。
しかし、単なる憂さ晴らしやストレス発散のために嫌がらせをするパワハラとは異なります。
クラッシャー上司は、悪気や自覚がないことも多く、また、目的はあくまで自分の出世です。
なぜクラッシャー上司が生まれるのか
クラッシャー上司が生まれる要因は、日本企業の独自の組織体系が影響しているとされます。
これは特に、メンバーシップ型雇用、新卒の一括採用を実施している昔ながらの企業で顕著。
仕事ができてスキルが高そうな人材より、部下として扱いやすい人材が採用されることが多く、その結果、上下関係が際立ち、社内における縦社会が形成されていくのです。
そのような組織では、上の言うことが絶対。
嫌がらせや理不尽な要求に対しても、はっきりNOと言うことができません。
そのような土壌だと、パワハラ上司やクラッシャー上司が生まれ易く、野放しにされてしまうのです。
【参考】モンスター社員とは?その種類や特徴、企業が取るべき対処法
クラッシャー上司の主な特徴や傾向
それでは、クラッシャー上司の主な特徴や行動パターンについて見ていきましょう。
1、学歴や地位が高く、仕事のスキルも高い
最も際立つ特徴として、
- ある程度高い学歴がある
- 職場で一定の地位がある
- 仕事のスキルも高い
ということが挙げられます。
直接的な被害を受ける部下にとっては大変厄介な存在に違いありません。
しかし、クラッシャー上司の大半は、ビジネスパーソンとして優秀なのです。
自分の能力が高いがゆえ、出来の悪い部下に嫌がられてしまうという側面もあるのです。
2、自分の言うことは絶対と思っており、共感性が皆無
ビジネスマンとしては優秀でも、人としての良心に若干欠けているのも大きな特徴です。
周囲の意見よりも、まず自分の意見や主張が第一。
それを他人に強要しようとしたり、時には心無い言葉を投げかけたりします。
たとえ相手が傷つこうと自分は正しいと信じているため、それを自覚することはありません。
また、共感性も欠如しています。
3、執拗に干渉して恐怖による支配を行うことも
自分の考えに叛く部下、思い通りに行動しない部下に対しては執拗に干渉します。
そして、時には、恐怖で支配しようとするケースもあります。
自分の出世のためなら、相手が傷つこうと構いません。
人格を否定するような言葉も容易に投げかけたりしてしまうのです。
【参考】ハラスメントとは?知っておきたいこんなものまで「●●ハラ」
クラッシャー上司の存在はなぜヤバいのか
なぜ、クラッシャー上司の存在は厄介なのでしょうか。
彼らの行為はパワハラに該当しないため、法で処罰することが難しいのが実情。
そして、部下にとっては害をもたらす存在ですが、仕事はできるため、会社への貢献度は高い。
会社としても、辞められたら困るため、強く出ることができません。
その結果、
- 部下が次々と辞めてしまう
- 精神を病んで休職に追い込まれてしまう
といった被害が出てしまうのです。
【参考】早期離職の防止、どうすればいい?考えられる原因と対策3つ
クラッシャー上司への対応
このような人材は、表面的には会社に貢献しているように見えても、長期間放置すると、大きな損害に繋がりかねません。
よって、会社の立場からは、以下のような対策を早期に講じる必要があります。
手法を改めるよう促す
まず、組織としてできる対策は、当人に手法や態度を改めるように促すことです。
たとえば、社長や、影響力のある立場の人間から話したり、ヒアリングしたりします。
尚、話す際も、否定したり、叱るように言ったりしないことが重要です。
その他にも、
- 考えや態度を変えるよう促すようなセミナーに参加させる
- 思考の変革を促すビジネス本を勧めたりする
など、間接的に、上司としての在り方を変えていくようなアプローチから始めましょう。
クラッシャーになれないような環境に持っていく
環境を変えるというのも一考です。
- クラッシャーになれないような環境
- 当人が持っている力を最大限に発揮できるような環境
にするのです。
つまり、「部下を管理するマネージャーではなく、プレイヤーとして活躍できる立場に据える」ことで、被害を食い止めつつ、その人材のスキルを最大限有意義に活用するのです。
では、部下の立場からはどうでしょうか。
転職する
残念ながら、実際に被害に遭っている社員にできることは、転職することぐらいです。
下手に刺激してしまうと状況が悪化する可能性もあります。
早期に見切りをつけて、自分の利益のために転職先を探すのが良いでしょう。
【参考】メンタルヘルス対策は十分?心の健康を守るためにすべきこと
まとめ
以上で挙げた対応以外にも、
- 360度評価を実施する
- 企業風土を見直し、改革に着手する
など、クラッシャー上司の暴走を抑止する方法は色々と考えられます。
いずれにせよ、まずは経営陣が率先して対策を講じる必要があるでしょう。
しかし、実際はこの手の問題は厄介であることも多く、穏便に済ますのは難しいもの。
どうしようもなければ、思い切った処置を取ることも考えておきましょう。