多様化し、複雑化を続ける社会。
このような社会には、一企業だけでは対応できない問題ニーズが存在します。
そして、様々な知識や技術、資産を組み合わせながら、課題を解決していく必要があります。
そのような課題に立ち向かうべく生み出された画期的な理論が、オープンイノベーション。
ここでは、オープンイノベーションの意味を踏まえた上で、主な事例や成功の秘訣、注意点について解説します。
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オープンイノベーションとは?
オープンイノベーションとは、企業秘密であったアイデアや知的財産、研究成果、市場、ノウハウ等を、社外の組織や団体と共有したり、逆に、他社の技術を自社に取り込んだりして、事業に革新をもたらすという理論です。
これは、2003年にアメリカの経営学者ヘンリー・チェスブロウにより提唱された理論。
国内でも大手企業を始めその考え方を取り入れている企業が増えてきています。
自社のやり方やリソース、独自性のみで革新を起こそうとする「クローズドイノベーション」と対になる概念です。
オープンイノベーションは、
- 他社の技術を自社に取り入れるインバウンド方式
- 逆に自社の技術や知識を外部に開放するアウトバウンド方式
- お互いに知見やリソースを共有する連携方式
の3種類に分けることができます。
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オープンイノベーションの主な事例
それでは、オープンイノベーションの国内事例をいくつか見ていきましょう。
1、東レ×ユニクロ
まず、国内におけるオープンイノベーションの代表的な例として、大手繊維メーカーの東レとユニクロを展開するファーストリテイリングが挙げられます。
両社は戦略的パートナーシップという形で提携関係を結んでいます。
そしてその結果生まれたのが、人気商品のヒートテックやウルトラライトダウン。
商品開発事業を通してオープンイノベーションを実現している好例です。
また、展覧会等で共同マーケティングを行うという取り組みも実施しています。
他にも、
- 商品や素材の価値を世界に発信する活動
- 使用済みの製品を回収してリサイクルし、新たな製品を作る、サステイナビリティに貢献する活動
等も行っています。
2、トヨタ自動車×ベンチャー5社
トヨタ自動車では、2016年ごろから「TOYOTA NEXT」と呼ばれるオープンイノベーションによる特別プロジェクトを始動しました。
これに、以下のベンチャー企業5社がパートナー企業として選定されています。
これらベンチャーとのオープンイノベーションを通じて、
- これからの時代に合ったサービスの開発
- 自動車利用の機会創出のための事業
を進めています。
3、ソフトバンクグループ×…
他には、IT、通信大手のソフトバンクでも「ONE SHIP」と題したビジネスパートナープログラムをスタートさせています。
現在、すでに100社以上の企業の参加が表明されているようです。
さまざまな知見やアイディアを持ったパートナーと考えを共有し、多様化社会に対応してくための商品やサービスの開発事業を行っています。
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オープンイノベーションの成功の秘訣と注意点
オープンイノベーションで他社とうまく協力し合うことで新たなビジネスチャンスの創出や事業拡大が見込めます。
しかし、良いことばかりとは限らず、リスクを伴うケースもあります。
成功の秘訣と注意点についてそれぞれ見ていきましょう。
まずは、成功の秘訣から見ていきます。
ビジョン、目的、戦略性を持つ
基礎的なことではありますが、オープンイノベーションによる共同事業を始める際に明確なビジョンや目的を持ち、それを戦略的に進めていくことが何よりも重要です。
目的やビジョンは連携する企業と共通のものを持つ必要があります。
そして、お互いに認識を確認し合いながら知見やリソースを活用していき、社会動向やニーズに対応できるブロジェクトを進めていきます。
企業のトップ同士がコミットする
また、企業のトップ同士がコミットすることも必要不可欠です。
事業を全てを現場にいる社員に任せしてしまうと、
- 途中から認識がずれて目標や目的が達成できなくなる
- ブロジェクトそのものが曖昧になる
というリスクがあります。
また、企業秘密を取り扱うため、トップが関与していなければ意思決定が非常に遅くなり、ダラダラしている内に双方の現場担当者のモチベーションが下がってしまうということもあるでしょう。
経営者、もしくは、強い決定権限を持った者同士が定期的に面会を重ね、コミュニケーションを取りながら、経営における最重要課題として取り組まなければ、なかなか円滑には進まないものなのです。
それでは、注意点についても見ていきましょう。
情報漏洩リスクに備える
オープンイノベーションを利用して、他社の技術や知見を不正に入手しようとする悪質な企業も存在します。
大企業が、その強い立場を利用してベンチャー企業の技術を自分達のものにしようとして、ネットで炎上した事例もありました。
そのような状況に陥らないためにも、
- 情報管理やセキュリティを高めるための教育を実施する
- 事前に公開すべき、すべきでない情報の選定をしたりする
といったことも必要になってくるでしょう。
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まとめ
オープンイノベーションは顧客のニーズが多様化する現代。
そのニーズに対応していくためのまさに画期的な施策の一つと言えます。
- 具体的にどんな経営課題を解決したいのか
- どんな目的を達成したいのか
これらをあらかじめ明確にした上で、パートナーとなる企業とお互いに協力しながら事業を進めていきましょう。