消費者ニーズの変化に応じて、企業も時代に合わせた経営をする必要があります。
場合によっては、今までにない新しい分野に挑戦する必要もあるでしょう。
そこで、近年注目を集めているのが、「社内起業家」という制度。
今回は、社内起業家について、その意味を踏まえた上で一般的な起業家との違いやメリット、選考基準、そしてよくある3つの失敗パターンについて紹介します。
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社内起業家とは?
社内起業家とは、社内において、あくまで正社員として所属しながら、新規事業の立ち上げや新商品の開発などを主体的に先導するポジションを指します。
消費者ニーズが多様化する現代。
企業は既存の路線を進むだけではなく、ますます新しいことへの挑戦が求められるようになっています。
社内起業家は、その際に求められる重要な役割の一つです。
独立して事業を立ち上げる「起業家」、いわゆる「アントレプレナー(Entrepreneur)」に対し、「イントレプレナー(Intrepreneur)」と呼ばれることもあります。
すでに社内起業家制を導入している企業として、サイバーエージェントやソフトバンクなどが挙げられます。
起業家との違い
一般的な起業家も社内起業家も、事業を先導して引っ張っていく役割がある、という点で共通しています。
しかし、当然のことながら、少なからぬ相違点があります。
財務的・人的リソース
まず、起業家は事業を進めていくために必要な人材、資金といった経営資源は、自ら集め、準備する必要があります。
しかし、社内起業家の場合、それらは(良くも悪くも)所属している会社から与えられます。
経営の自由度
そのため、仕事の自由度に関しては起業家の方が高い傾向にありますが、社内起業家の方が資金や人材をすぐに集められることから、スタートを切りやすいという特徴があります。
リスク
また、万が一事業が失敗した際に発生する損害に関して、起業家は自らそれを負う必要がありますが、社内起業家の場合には企業が負担することになるため、直接当人に不利益が生じることはありません。
企業が社内起業家を起用するメリット
それでは、企業が社内起業家を起用するメリットについて見ていきましょう。
①若手社員のやる気アップ、競争力の強化
まず、社内起業家という特別なポジションを設けることで若手社員のやる気アップや競争力の強化が期待できます。
新しいことにチャレンジする機会を与えられるというのは、誰もがワクワクするものです。
成功した際には、報酬もさることながら、社内での見方が大きく変わるであろうことも、社内起業家のモチベーションを高めることでしょう。
②新たな市場の開拓
社内起業家を起用し事業を進めることで、全く新しい市場の開拓につながります。
社内起業家を中心として小さな組織を作り、そこで社員らが積極的にアイディアを出せれば、新たな発見につながることもあるでしょう。
③優秀な人材、将来の幹部候補の育成
また、将来の幹部候補や、リーダーシップのある優秀な人材を育てられるというメリットもあります。
大手企業には、将来の幹部候補を、子会社の経営者や幹部として出向させ、経営者として育成するという仕組みを持っている会社が多数あります。
銀行や総合商社などが、その代表例と言えるでしょう。
社員を社内起業家として起用し、経営者視点からの経験を積ませれば、将来幹部や管理職など上の立場に立った際に求められるスキルや知識、感覚を身につけることができるようになるでしょう。
どんな人が社内起業家に向いているのか
社内起業家は、希望すれば誰でもなれるわけではありません。
社内で独自のコンテストや、プレゼンのイベントなどを開催して選ぶこともありますし、上が一方的に選考してしまうこともあるでしょう。
それでは、社内起業家に求められる主なスキルや、求められる資質の傾向について見ていきましょう。
①事業全体を見渡せる人
まず、目の前の問題だけでなく事業全体を見渡せるか、という点が重要になります。
社員をまとめるためのリーダーシップももちろん大切ですが、事業にかかるコストや予算を把握した上で、社員に対し的確な指示を出したり舵を切ったりできる人が相応しいでしょう。
②変化に敏感で、それに対応できる人
消費者ニーズは、社会動向や流行によって常に変化し続けています。
安定思考も時には大切ですが、変化に対して常に敏感であり、それにうまく対応し、リスクを取って挑戦できることも、社内起業家として求められるスキルの一つです。
社内起業家が失敗に終わるパターン3つ
社内起業家を起用し、効果的に利益を出すために、以下の3点について押さえておきましょう。
①裁量が小さ過ぎて身動きが取れない
社内起業と言えど、ビジネスを進めていく上でスピード感は欠かせません。
せっかく社内起業家を起用しても、社内のルールや規則が多かったり、逐一上の承認が必要になったりすると、事業を進めにくくなります。
社内起業家と言いつつ、一々お伺いを立てなければ何もできなければ、結局通常の社員と変わりません。
それでは、モチベーションも上がらず、成功もなかなかおぼつかないでしょう。
可能であれば子会社化する等して、物理的にも違うオフィスを使わせるなど、予算を与え、裁量を大きく持たせましょう。
②インセンティブが小さ過ぎる
事業を進めていくにあたり、さまざまな壁に直面することは当然です。
そして当然、それらを乗り越えていかなければなりません。
しかし、思い通りにいかない状況が続くと、途中でチーム全体の士気が下がってしまうこともあります。
動機付けやモチベーションを維持させるためにも、インセンティブを付与したり、子会社化して株を持たせたりするなどして、利益を還元させる仕組みを作ることも大切です。
大きすぎるのも、公平性の観点から問題ですが、成功した場合は、家が一軒買えるくらいのインセンティブは与えても良いかもしれません。
③「余剰人員」を充ててしまう
これが最もよくある失敗かもしれません。
それはズバリ、「スキルが低く、社内で他に仕事がない人」を社内起業家にしてしまうことです。
「あいつ、他に仕事もないし、社内起業家として新規事業でもやらせてみるか」というパターンです。
優秀な人は既存事業でエースとして活躍していることが多く、現場から引き剥がそうとすると、抵抗を受けることも少なくありません。
まとめ
これからますます多様化するであろう消費者ニーズに応えていくために、社内起業家を起用し事業を進めていくことは多くの企業に求められることです。
何よりもまず企業のミッションや理念を尊重し、期待に応えてくれるであろう適切な人材を選任しましょう。