有給休暇義務化でどうなる?違反時の罰則と取得率向上の施策

有給休暇の取得は労働者に与えられた権利の一つ。

しかし、周りの目を気にして積極的に利用しようとする人は少ないとも聞きます。

「周りに迷惑をかける」

「仕事に対する意欲を疑われる」

そのような心配から、ついつい取得せずに済ませてしまうのだとか。

しかし、その実、有給休暇の取得は、会社に義務付けられたものでもあるのです。

今回は、2019年に改正された有給休暇義務化に関して、その内容や違反した際の罰則、取得率向上のための施策について紹介します。

【参考】ホワイト企業とは?認定されるための7つの指標と取り組み

 

有給休暇義務化

 

有給休暇取得が義務化した

有給休暇とは、勤続年数が半年を超えた社員に、給料が支払われる休暇が与えられる制度です。

最初は年10日間、勤続年数が上がれば、最大20日間の休暇を取得できます。

冒頭にも書いた通り、有給休暇は労働者に与えられた権利の一つ。

それゆえ、本来であれば、進んで利用すべき、利用したい制度にも見えます。

しかし、

  • 「昇進査定に影響するかも」
  • 「周囲に迷惑がかかるかも」

という不安感から積極的に利用しようとする人が少ないのも現状です。

また、

  • 有休を取ってもやることがない
  • 趣味や楽しみがない

という理由から、そもそも休暇を必要としていない社員も一定数存在するのだとか。

何だかんだで、有給の消化率の低さが社会問題の一つにもなっています。

 

有給休暇義務化が実施された

そのような現状を打破するため、2019年4月に労働基準法第39条が改正されました。

対象となる労働者に年5日の有給休暇を取得させることが企業に義務付けられたのです。

 

違反した場合は罰則も

改正された労働基準法第39条には、違反した際、企業に課されるペナルティも明記されています。

具体的には、

  • 対象者に年5日の有給休暇を与えなかった場合
  • 従業員の請求通りに休暇を取得させなかった場合

労働基準監督署からの指導、是正勧告、または従業員1人あたり30万円以下の罰金が課されます。

ちなみに、罰則はあくまでも企業に対して課されるものです。

たとえ有給休暇義務化に違反したとしても、従業員に罰則が課されることはありません。

【参考】ワークシェアリングとは?導入するメリットや注意点を解説!

 

有給取得率をアップさせるための主な施策

改正案の年5日とは、あくまでも社員に取得させるべき有休の「最低日数」です。

積極的な取得を促すためには、そのための取り組みや施策を随時、講じていく必要があります。

 

1、社員のライフスタイルに合った企業独自の休暇制度をつくる

主な施策の一つは、社員のライフスタイルにあった企業独自の制度を設けることです。

少し例を見てみましょう。

株式会社リクルートキャリア

リクルートキャリア社では、結婚記念日や家族の誕生日、その他お祝い事の際にアニバサリー休暇を取得させる制度があるのだとか。

「お祝い事の日なんだから、休みなさい」

ということで、会社の強い後押しにより休ませ、有給取得を推進する仕組みです。

パスクリエイト株式会社

パスクリエイト社では、取得理由を正直に申告すれば、最短当日でも休める「ずる休み休暇」という独創的な制度があるようです。

その他にも、一定の勤続年数を満たした社員に比較的長期の休暇を与えるサバティカル休暇という制度も。

これらを導入することにより、取得を促すだけでなく社員の会社に対する満足度アップにもつながるでしょう。

 

2、休暇を取得した社員にインセンティブを付与する

また、取得した休暇の日数や回数などに応じてインセンティブを付与するケースもあるようです。

これは、非常に効果的な取り組みと言えるでしょう。

例えば、ビジネスのあらゆる分野で活用されているインセンティブ型のポイントサービスを利用し、貯まったポイントに応じて好きな賞品と交換できるような仕組みを作ったりもしているようです。

休んだら、休めたことに加えて、評価もしてもらえるなんて、凄いですね。

しかし、そうすることで、取得に抵抗を感じていた社員でも前向きに取得を検討するようになります。

 

3、部署やチームごとに交代制で取得させる

有給取得を推進するとはいえ、多くの社員が同時に有休を取得してしまうのは考え物。

業務が滞ったり、顧客や得意先との取引に支障が出たりすることがあります。

そのため、部署やチームごとに区切り、交代制で取得するような仕組みを作ることも検討した方がよいでしょう。

その結果、「他の社員も有休をとっているのだから、自分も取って当たり前」という雰囲気になり易くなります。

有休に対する抵抗を緩和させる効果が期待できるでしょう。

 

4、半日、1時間単位での取得を可能にする

有休は通常1日単位での取得が一般的ではあります。

しかし、半日、もしくは1時間単位で取得できるようにすることも、技術的に可能なのです。

その結果、

  • 午前中は有休を取って午後から出社する
  • 早めに退社して午後は有給にし、趣味や家族と過ごす時間に充てる

と言ったことも実現できます。

これにより、社員のワークライフ・バランスの向上も大いに期待できるでしょう。

 

旅行やレジャー、映画の優待制度などを福利厚生に盛り込む

上で述べたように、「休みを取っても特にやることがない」という理由から有休を利用しない人も一定数存在します。

そんな人のためには、旅行やレジャー、映画、その他アクティビティなどの優待制度を福利厚生に盛り込むのも一考。

有給取得のためのきっかけづくりになるでしょう。

【参考】サバティカル休暇とは?政府も勧める施策のメリットや課題

 

有給休暇義務化に上手に対応しよう

有休取得率をアップさせるためには、そのための施策作りが大切。

しかし、それだけでなく、

  • 有給取得しやすい環境をしっかりと整えてあげる
  • 有給休暇取得を理由に冷遇しない
  • 昇進査定のプレッシャーを与えない

など、有休を取りやすい風土、雰囲気を作ることも非常に重要です。

通常業務に支障が出ないように、また、休暇制度に関して社員間で偏りが生じないように気をつけながら、取得率アップのための対策を進めていきましょう。

【参考】ホワイト500や健康経営優良法人認定制度をざくっと理解!

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