男性の育休をはじめ、長期休暇に対する考え方が少しずつ変わりつつある昨今。
「バカンス」という言葉を聞いたことがある人も多いかと思いますが、欧米の会社では1ヶ月以上の休暇をとって、リゾートに出かけたりすることも決して珍しいことではありません。
ここでは、多様な働き方の実現や社員の満足度獲得に向けた比較的新しい施策と言える「サバティカル休暇」について、そのメリットや導入にあたり押さえておくべき課題や心構えを紹介します。
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サバティカル休暇とは?
サバティカル休暇とは、長期勤続者に対する休暇制度の一つで、1ヶ月~1年未満の長期休暇を取ることができるようにする制度です。
一般的な有給とは異なり、休暇を取る際にその理由が問われず、対象者や期間、休暇中の給与に関する取り決め、その他内容は各企業によって異なります。
欧米諸国では既に浸透している制度であり、経済産業省の「人生100年時代の社会人基礎力」に則したリカレント教育の推進に伴い、日本でも少しずつではありますが注目を集めてきています。
IT大手のヤフー、電機メーカー大手のSONY、株式会社ぐるなびが実際にその休暇制度を導入しています。
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サバティカル休暇のメリット
働き方の多様化によって、選択肢の一つとして注目されるサバティカル休暇を導入することで、企業、従業員双方にメリットがあります。
まずは従業員のメリットについて見ていきましょう。
①心身のリフレッシュ、プライベートの充実につながる
まず、従業員にとっての一番のメリットは、心身のリフレッシュができるということです。
通常の週休だけでは解消できない日頃のストレスや、職場での人間関係のしがらみなどを長期休暇を取ることによって一新できます。
また、休暇取得の理由が問われないため、子育てや家族と過ごすための時間に充てたり、趣味や旅行に時間を費やしたりすることができるため、プライベートの充実にもつながるでしょう。
②新たな視点や気付きが得られる
心身のリフレッシュに加え、一度職場との距離を取ることで新たな視点からの発見や、新たな知識、経験が得られるという魅力もあります。
少し距離を置いてみると、これまでいた場所が違って見える、というのは、よく聞く話。
例えば、休暇中に参加したボランティアで環境問題に対する知識、見聞が深まった、旅行先の国でビジネスの新たな可能性が見つかった、など、普段できない貴重な経験が自分のスキルやキャリア形成につながることもあるかもしれません
それでは、企業側のメリットについても見ていきましょう。
①定着率のアップ、離職の防止につながる
サバティカル休暇は「ある程度の勤続年数」を有する社員に対して与えられる休暇となります。
長期休暇が欲しいと思う社員はその特典を取得しようとするため、長期間勤続するようになり、離職の防止につながると考えられます。
実際に休暇を取得した社員のフィードバックを社内で共有することにより、取得を希望する社員の仕事に対するモチベーションを上げることも可能です。
②企業イメージの向上
サバティカル休暇は、日本においてはまだ比較的新しい休暇制度であることから、この制度を導入することによって「進んだ仕組みを取り入れている企業」とのイメージを得られる可能性もあるでしょう。
そもそも長期休暇を取ることに対し抵抗を感じる風潮のある日本において、企業が自らそのような制度を設けておけば、これから入ってくる社員からも好い印象を得られるでしょう。
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国内におけるサバティカル休暇導入の課題と心構え
欧米諸国では制度導入によって成功を収めている例がたくさんあります。
しかし、日本ではまだ十分に浸透していないこともあり、課題が残されているのが現状です。
エース級社員の休暇取得後の業務について
例えば、その仕組みを使って、エース級社員や、業務上不可欠な社員が休暇を取った場合、通常業務に支障が出るリスクがあります。
そのため、勤続年数があり、ある程度のポジションについている社員がいなくなっても、いつも通りの生産性、業務体制を維持できるか、導入前にじっくりと検討する必要があるのです。
一方、これについては「考え方次第」といった側面もあり、「属人的な業務や、ブラックボックス化している業務をなくす」ために、あえて導入するということも考えられます。
誰かがいなくなった時に、すぐに誰かがピンチヒッターとしてカバーできるような仕組みを作っておくことは、会社の運営を安定させるうえで非常に価値のあることだと言えるでしょう。
サバティカル休暇の周知、理解を深める
そもそも制度について全く知らない人も少なくなく、たとえ知っていたとしても長期休暇取得に対する抵抗がまだまだ払拭されていないのが現状です。
そのため、まずはサバティカル休暇の周知や理解を社内全体で深めることも大切です。
会社のことだけでなく、従業員のプライベートについても考えていると言うことは、従業員の会社へのロイヤリティを高めることにもなるはずです。
休暇中の給与に関して
また、休暇中の給与や報酬の支払いに関しても、導入前にしっかりと決めておく必要があります。
サバティカル休暇は通常の有給休暇のように法整備がなされていないことから、無給、有給かの判断は企業の裁量に任せられます。
そのため、従業員の意向も考慮した上でお互い納得のいく形で導入を検討する必要があるのです。
職場復帰後の処遇に関して
サバティカル休暇に限ったことではありませんが、長期休暇を取得した後、元のポジションに戻れない、不当な人事異動をさせられるなどの問題が日本企業にはまだまだ根付いています。
本来、従業員の定着率や満足度のアップを見込んだ施策ですが、導入したことで逆に不満を買ってしまう、復帰後に辞職されるという事態も十分想定されます。
そのため、職場復帰後の処遇や受け入れ対策に関しても十分に考えておく必要があります。
【参考】有給休暇義務化でどうなる?違反時の罰則と取得率向上の施策
まとめ
社員のエンゲージメント、定着率のアップなど様々な効果が期待できる制度ですが、まだまだ周知されておらず、長期休暇取得に対する抵抗や休暇取得者に対する十分な対応がなされていないなど、日本独自の風潮がその実現の障壁となっている側面があります。
まずは制度について周知すること、社員の理解を深めることから始め、十分な体制を整えた上で導入を進めていきましょう。