先行き不透明な世の中。
いつ起こるか分からない不況に備えて、アウトソーシングを進めようとする企業が増えています。
一方、割高になることを嫌って、そして、社内のリソースを有効活用したいという思惑から、外注していた業務を内製化しようと検討する企業が多いというのも現状として存在します。
内製化で自前でやるか、外注先にアウトソーシングするか、多くの企業が悩んでいるところです。
ここでは、アウトソーシング、内製化、それぞれの特徴を踏まえた上で、メリット、デメリットを比較していきます。
アウトソーシングとは?内製化とは?
アウトソーシングとは
アウトソーシングとは、Out(外部)Sourcing(調達)、要するに、社内で行っていた業務の一部を、外部の企業や個人に委託することを指します。
オンライン上で、不特定多数の中から、特定の業務を請けてくれる人を募集するクラウドソーシングも、その一つとなります。
代表的なクラウドソーシングサイトとしては、クラウドワークス、ランサーズ、ココナラ、などがあります。
アウトソーシングには、例えば、経理の事務処理から、給与計算の労務管理、コンテンツ制作、Webサイトの管理、運営業務等々があり、その他にも、顧問弁護士や税理士などへの依頼も含まれ、世の中を見渡すと、かなり幅広い業務がアウトソーシングされています。
主に、自社社員を付加価値の高い業務に専念させるための社内施策として活用されています。
内製化とは
一方、内製化とは、アウトソーシングと対になる概念と言えます。
企業が実施する業務を外部に頼らず、自社内の設備、人員、経営資源などのリソースで全て賄い、実行することです。
「これまで社外に任せていたけど、自分達で出来るな」と判断したことを、社内の人達で賄うようにすることです。
アウトソーシングのメリット、デメリット
それではまず、近年増えつつあるアウトソーシングのメリットについてそれぞれ見ていきましょう。
①専門性が高いことが「すぐ」できる
外注の最大のメリットは、専門性の高い業務が「すぐ」できるようになる、ということです。
例えば、ソフトウェアの開発やプログラムの作成業務を新たに行う場合を想像してみましょう。
当然ですが、既に社内にシステムエンジニアやプログラマーがいれば、問題なく自社ではじめることができます。
しかし、社内にいない場合は、採用するか、もしくは人材の育成から始める必要があり、膨大な時間とコストがかかってしまいます。
「育成する」と言っても、社内に出来る人がいない中で育成するのには、大変な苦労を伴います。
そして、時間とコストをかけたところで、出来るかどうか、出来るようになるかどうかも分かりません。
しかし、外注することによって専門スキルを有している人材を活用することが出来れば、希望する業務にすぐに業務に取り掛かってもらえるため、それらの負担がなくなります。
(※当然、色々な取り決めをしたり、やりたいことを伝えたりしなければなりませんので、そのための時間はかかります)
②経営資源を効率よく分配、使用できる
それに加え、ヒト、モノ、カネといった経営資源を適材適所に分配することで、それらを効率よく活用できるようになります。
状況をみて、企業にとってまさに今必要と考えられる業務に経営資源を集中的に投下したり、また、状況が芳しくない場合には発注量を減らしたりするなどしてコストを柔軟に調節できるのも、外注の魅力です。
それでは、デメリットについても見ていきましょう。
①社内、社員にスキルやノウハウが蓄積されない
外部に頼りきりになることで、社内や社員に専門的なスキルやノウハウが蓄積されない、という難点もあります。
外注に頼れば時間とコストのコストパフォーマンスの向上にはつながります。
しかし、だからと言って、全てを丸投げするような状態になってしまうと、社内のスキルアップや人材の育成はいつまで経っても実現できません。
そして、外部に委託した業務が、必要不可欠な業務ということになると、委託をやめることができないということにもなりかねません。
そうなると、委託先の言いなりになってしまうようなことすら起こり得ます。
②中長期的に見るとコストが割高になることも
一時的ならば、コストパフォーマンス向上が見込めることも少なくありません。
しかし、中長期的に外注するとなると、結果としてそのコストが割高になることもあります。
稼働する人の採用から管理、人が抜けたら補充して、ツールを整備して、と考えると、外注先も、それなりの時間やコストを投じてサービス提供していることになります。
当然、そこに利益も乗せて来るので、自前でやるより割高になるのはやむを得ないといったところではあります。
内製化のメリット、デメリット
それでは、内製化のメリットについて見ていきましょう。
①社内、社員にスキルや経験、ノウハウが蓄積される
内製化の最大のメリットはやはり、社内、そして社員に、スキルや経験、ノウハウが蓄積されやすいことです。(※アウトソーシングのデメリットの裏返し)
機能させるまでの教育や研修のためにある程度のコストと手間を要しますが、将来への投資と考えれば決して無駄なものではありません。
仮に失敗してしまったとしても、なぜ失敗したのかを分析して、そこから学ぶことができます。
結局外注を使うということになった場合、機会損失は発生してしまうかもしれませんが。
社員に対して手厚い指導や教育等を提供することで、スキルアップなどの従業員にとってのメリットも然り、企業も優秀な人材を確保することにつながっていきます。
②中長期的に見ると割安になる
また、中長期的に見るとアウトソーシングよりも割安になる可能性もあります。
採用から教育、管理に至るまで自社でこなし、他社に出ていく利益もないので、ある意味当然ではあります。
それではデメリットについて見ていきましょう。
①時間がかかる
自社の体制ですぐにでもできるのであれば問題ありませんが、人を確保するところからはじめ、育成したり、体制を構築したり、マニュアルやツールを整えたり、といった諸々を考えると、時間がかかってしまうのが内製化の最大の難点となります。
②簡単にコスト調節ができない
また、外注のように容易にコスト調節ができないというデメリットもあります。
外注であれば、増やしたり減らしたりは比較的容易にできますが(契約で縛っていない限り)、設備投資や人件費は容易に削ることはできません。
銀行から借り入れをすれば、設備を使おうが使うまいが返済はしなければなりませんし、人も採用した以上、簡単にやめさせることはできません。
まとめ
十分な経営資源があり、業務を増やしたり減らしたりする必要性が少なければ、内製化に取り組むのも悪くないと言えるでしょう。
しかし、不景気に対する備えとしてコストをなるべく変動費化しておきたいというニーズが高まっていたり、人手不足がどの業界でも深刻化しつつあったりする世の中、多くの企業が、アウトソーシングに舵を切っています。
会社を強くしていくということを目指していくのであれば、最初は外注しつつ、徐々に内製化できるように社員の教育を進め、体制を強化して、外注した業務を巻き取っていくのが理想的です。
様々なデメリットもありますが、アウトソーシングを上手く活用していくことで無駄なコストを削減し、社内業務の効率化や業績アップ等につながるため、前向きに検討していきましょう。